妊娠後期には、子宮が散発的に収縮する「ブラクストン・ヒックス収縮」と呼ばれる生理的現象が起こります。この収縮は妊娠初期から始まることもありますが、一般的には妊娠20週以降、特に妊娠28週から30週頃から頻繁に感じられるようになります。安静時や就寝時にお腹の張りを感じやすいのは、日中の活動による疲労が夜間になって現れ、子宮が収縮しやすくなるためです。mamanoko+4
ブラクストン・ヒックス収縮は子宮全体ではなく一部のみが収縮し、子宮頸管の開大を引き起こさない特徴があります。収縮は通常30秒程度続き、1日に数回発生しますが、時間の経過とともに痛みが強くなったり、頻度が増加したりすることはありません。この収縮は、出産に向けて子宮が準備を行っている正常な過程であり、前駆陣痛とも呼ばれています。sapporo-mirai+1
医療従事者として重要なのは、ブラクストン・ヒックス収縮が間隔不規則で、姿勢を変えたり水分補給をすることで治まる点です。また、痛みは通常腹部の前部にのみ感じられ、我慢できる程度のものです。これらの特徴を理解することで、患者への適切な説明と安心の提供が可能になります。pampers+1
妊娠後期の夜間にお腹の張りが増加する主な要因として、まず日中の疲労の蓄積が挙げられます。長時間の同じ姿勢での作業や立ち仕事、座りっぱなしのデスクワークなどにより血流が悪くなり、子宮の収縮が増えやすくなります。働く妊婦では特に、こまめな休憩が取れない場合に夜間の張りが顕著になる傾向があります。stemcell+1
第二の要因は、就寝時の体位による影響です。仰向けで寝るとお腹の皮膚が引っ張られるように伸びることから、お腹の張りとして感じやすくなります。また、仰向け寝は大きなお腹が臓器や血管を圧迫し、寝ている間に息苦しさや吐き気を感じることもあります。特に下大静脈が圧迫されると「仰臥位低血圧症候群」のリスクが高まり、心臓に戻る血液量が減少します。stemcell+2
第三の要因として、安静時には意識が張りに向きやすくなることが挙げられます。日中は活動しているためお腹の張りに気が付きにくかったものが、夜に横になると気になりやすくなるのです。また、妊娠後期の赤ちゃんは昼夜の区別なく胎動が活発であり、赤ちゃんが蹴ったり回転したりすることも張りの原因となります。hiro-clinic+2
妊娠後期の切迫早産治療において、日本と海外では大きなアプローチの違いがあります。海外では一般的に48時間以内の短期的子宮収縮抑制(short term tocolysis)が行われ、早産を数日遅らせることで胎児の肺などの臓器を成熟させるための副腎皮質ステロイド療法や高次医療機関への母体搬送を行います。一方、日本では従来から長期的な子宮収縮抑制(long term tocolysis)が行われてきましたが、早産予防効果や新生児予後改善に有効であるというエビデンスは確立されていません。keiju+1
日本で最も使用される子宮収縮抑制薬はリトドリン塩酸塩(商品名:ウテメリン®、ルテオニン®、リトドール®など)です。β作動薬であるリトドリンは、最長48時間の投与により早産を遅らせることができる可能性がありますが、重篤な副作用のため慎重な管理が必要です。産婦人科診療ガイドライン産科編2020においても、short term tocolysisを支持すると記載され、日本でもこの方針への変更が進んでいます。josanshi-navi+2
妊娠34週以降であれば、あえて子宮収縮抑制薬を投与せず、感染に注意しながら慎重に様子を見ることも多くなっています。重要なのは、規則的な子宮収縮や子宮頸管の短縮・開大が認められる場合に治療適応となる点です。また、ガイドライン上では「流産予防効果が確立された薬剤は存在しない」と明記されており、施設ごとに取り決めが異なる現状があることを理解する必要があります。1103-jp+2
妊娠後期のお腹の張りを和らげるための最も効果的な体位が「シムス位(左側臥位)」です。シムス位とは体の左側を下にして横向きに寝る姿勢で、成長した子宮による下大静脈への圧迫を防ぎ、心臓や子宮への血流をスムーズにする効果があります。この姿勢は子宮への血流を改善し、張りを和らげる効果があることから、妊婦さんに広く推奨されています。benesse+3
シムス位の具体的な取り方は、まず体の左側を下にして横になり、下側の左足を楽な位置に伸ばします。次に上側の右足は太ももの付け根から曲げ、左足より前に出します。上側の右手は肘で曲げて前に出し、下側の左手は体の後ろで自然に伸ばすと安定した姿勢になります。さらに枕にのせる頭の位置をいつもよりやや高めにすると、胸やけの軽減にもつながります。tomonite+2
マタニティ用の抱き枕やクッションを活用することで、より快適な姿勢を保つことができます。右足の下や背中にクッションを挟むことで、腰やお腹への負担を和らげることができます。シムス位は腰痛対策にも効果的で、お腹の重みを感じにくくなるというメリットがあり、母体と胎児への負担を軽減できる重要な体位です。stemcell+2
妊娠後期の張りが生理的なものか病的なものかを鑑別することは、医療従事者にとって極めて重要です。前駆陣痛(ブラクストン・ヒックス収縮)は、子宮の収縮によって起こる間隔が不規則なお腹の張りや痛みで、出産には至らない弱い陣痛を指します。前駆陣痛は通常、妊娠後期に始まり、出産予定日が近づくにつれて頻度が増しますが、痛みが強くなることはありません。pampers+2
本陣痛との主な違いは、収縮の規則性と持続時間にあります。前駆陣痛は10分毎、6分毎、2分毎、8分毎というように不規則にやってきますが、本陣痛は規則的で次の陣痛の時期が予測できます。また、前駆陣痛は動きや姿勢を変えることで治まりますが、本陣痛は姿勢を変えても治まらず、徐々に間隔が短くなり痛みが強まっていきます。前駆陣痛の痛みは体の前部で感じられるのに対し、本陣痛は体の後ろから始まり前部や足の付け根へと広がります。pampers
危険な張りの判断基準として、妊娠37週未満で「強い」「長い」「規則的」な張りがある場合は特に注意が必要です。30分程度安静にしても治まらず、周期的な張りや痛みが続く場合は、直ちに医療機関への連絡が必要です。また、15分おきなど定期的に収縮を繰り返し1時間経っても変わらない場合や、出血を伴う場合、破水が疑われる場合は、切迫早産や常位胎盤早期剥離などの可能性があり、緊急受診が必要となります。mcfh+1
医療従事者として患者に指導する際、まず重要なのは休息の取り方です。お腹の張りを感じたら、横になるか座って休息を取ることが基本です。デスクワークをしている妊婦には、定期的に立ち上がって軽くストレッチをすることで血行が促進され、張りの軽減につながることを伝えます。長時間の同じ姿勢が続くと血流が悪くなり子宮の収縮が増えるため、こまめな休憩の重要性を説明する必要があります。mamanoko+1
水分補給とリラックスも重要な対処法です。脱水状態になるとブラクストン・ヒックス収縮を感じやすくなるため、十分な水分摂取を促します。また、ストレスや緊張は張りの原因となるため、リラックスできる環境づくりやストレス解消法を持つことの大切さを指導します。カウンセリングの活用も選択肢として提案できます。ena-clinic+2
生活習慣の改善として、便秘対策も欠かせません。妊娠後期は大きくなったお腹が腸を圧迫し、運動不足やストレスなどから便秘になりやすくなります。便秘でもお腹の張りを感じることがあるため、何日も便秘が解消されない場合は、躊躇せず産婦人科で薬を処方してもらうよう促します。性交渉や乳首のマッサージも張りの原因となることがあるため、妊娠後期には控えるよう指導することも重要です。hiro-clinic+2
<参考リンク>
日本産科婦人科学会の切迫早産・早産に関する公式見解
早産・切迫早産 - 日本産科婦人科学会
ブラクストン・ヒックス収縮の医学的解説
Change in T2* measurements of placenta and fetal organs during Braxton Hicks contractions - PMC
妊娠中の子宮収縮に関する歴史的研究論文
Contractions of the Uterus Throughout Pregnancy - PMC
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