ビタミンK2製剤の有効成分であるメナテトレノンは、分子式C31H40O2、分子量444.65の脂溶性ビタミンです。化学名は2-Methyl-3-[(2E,6E,10E)-3,7,11,15-tetramethylhexadeca-2,6,10,14-tetraen-1-yl]-1,4-naphthoquinoneとして知られています。
メナテトレノンは黄色の結晶性粉末で、融点は約37℃です。水にはほとんど溶けませんが、ヘキサンには極めて溶けやすく、エタノールにやや溶けやすい性質を持ちます。光によって分解し着色が強くなるため、適切な保存条件が重要です。
🔍 生体内での働き
薬効分類としては「止血機構賦活ビタミン」(薬効分類番号3160)に分類され、骨粗鬆症治療薬としても位置づけられています。
現在日本で販売されているビタミンK2製剤には、先発品と後発品(ジェネリック医薬品)が存在し、薬価に大きな差があります。
📊 主要製品の薬価比較(2025年5月現在)
先発品
後発品(ジェネリック)
後発品は先発品と比較して約25-30%の薬価削減となっており、医療経済の観点から後発品の使用が推奨されています。特に15mgカプセルでは、先発品のグラケーが14.4円に対し、後発品は10.7円と約26%の削減効果があります。
💡 製造販売会社の多様性
ビタミンK2製剤は、患者の状態や治療目的に応じて異なる剤形が選択されます。各剤形には固有の特徴と適応があります。
カプセル製剤の特徴
15mgカプセルは骨粗鬆症治療の標準的な剤形で、1日45mgを3回に分けて服用します。カプセル内には有効成分のメナテトレノンに加え、モノオレイン酸グリセリン、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの添加剤が含まれています。
5mgカプセルは主に止血目的で使用され、処方医の指示に従って服用します。軟カプセル剤として製造されており、有効成分の安定性と吸収性が考慮された製剤設計となっています。
シロップ製剤の特徴
ケイツーシロップ0.2%は、1mL中にメナテトレノン2mgを含有する黄色澄明の液体です。オレンジ様の香りを有し、pH3.0-5.0に調整されています。
🥤 シロップ製剤の用法
添加剤として安息香酸ナトリウム、クエン酸水和物、ゴマ油、D-ソルビトール液などが含まれており、室温保存で有効期間は3年です。
注射製剤の特徴
ケイツーN静注10mgは、経口摂取が困難な患者や緊急時の止血目的で使用されます。静脈内投与により迅速な効果発現が期待できますが、処方箋医薬品として厳格な管理が必要です。
ビタミンK2製剤は比較的安全性の高い薬剤ですが、いくつかの重要な副作用と相互作用があります。
主な副作用
過敏症として発疹が0.5~1%未満の頻度で報告されています。ビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン)については、天然型ビタミンKとして副作用の報告は限定的です。
⚠️ 重要な相互作用
ワルファリンとの拮抗作用
最も重要な相互作用はワルファリンカリウムとの拮抗です。ワルファリンは肝細胞内のビタミンK代謝サイクルを阻害して抗凝固作用を示しますが、ビタミンK2製剤はこの作用を減弱させるため併用は禁忌です。
ワルファリン投与中の患者にビタミンK2製剤を投与すると、血液凝固能が正常化してしまい、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症のリスクが高まります。このため、ワルファリン服用患者は絶対にビタミンK2製剤を使用してはいけません。
TPN用ビタミン製剤との関係
現在国内で販売されているTPN用ビタミン製剤(オーツカMV注、ビタジェクト注キット、ダイメジン・マルチ注)には、いずれもメナテトレノンが含有されています。これらの製剤を使用している患者では、追加のビタミンK2製剤投与は慎重に検討する必要があります。
ビタミンK2製剤の適正使用には、患者背景の十分な把握と継続的なモニタリングが不可欠です。
投与前の確認事項
📋 必須チェックポイント
長期投与時の管理
メナテトレノンは1972年に国際的に使用が開始され、1995年に日本で医療用医薬品として販売開始、2009年には再審査が終了し有効性と安全性が確立されています。長期使用実績はありますが、定期的な効果判定と安全性評価が重要です。
特殊患者群での使用
高齢者では嚥下機能の低下によりカプセル剤の服用が困難な場合があります。この際はシロップ製剤への変更を検討し、必要に応じて経管投与も可能です。
🔬 血中濃度モニタリング
保存・取り扱い上の注意
メナテトレノンは光により分解し着色が強くなるため、室温保存かつ遮光が必要です。有効期間は3年ですが、開封後は適切な保存条件を維持することが重要です。
患者教育のポイント
患者への服薬指導では、以下の点を重点的に説明する必要があります。
健康診断における骨密度測定の普及により、一般国民の骨粗鬆症に対する認識は高まっています。しかし、予防目的でのサプリメント摂取が本来治療を必要とする患者の受診を遅らせる懸念もあり、適切な医学的判断に基づく治療選択が重要です。
健康長寿ネット - ビタミンKの働きと1日の摂取量に関する詳細情報
国立健康・栄養研究所 - ビタミンKの安全性・有効性情報