ゲンタマイシンは代表的なアミノグリコシド系抗生物質として、細菌のタンパク質合成を阻害することで殺菌的な作用を示します 。この薬剤は、細菌のリボソーム30Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害することで細菌の生存に必要な機能を停止させます 。
参考)https://data.medience.co.jp/guide/guide-02060001.html
抗菌スペクトルは非常に広く、グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い細菌に対して効果を発揮します 。特に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して高い活性を示すことが知られており、重篤なグラム陰性桿菌感染症の治療において重要な選択肢となっています 。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/13-%E6%84%9F%E6%9F%93%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%8A%97%E8%8F%8C%E8%96%AC/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%82%B7%E3%83%89%E7%B3%BB
ゲンタマイシンは濃度依存的な殺菌作用を示し、高い血中濃度を短時間維持することで最大の治療効果を発揮します 。この特性により、1日1回投与による治療戦略も可能となり、患者の利便性向上と副作用リスクの軽減が期待されています。
参考)https://www.hosp.kagoshima-u.ac.jp/ict/koukinyaku/TDM%20others.pdf
注射用ゲンタマイシンの主な適応症には、敗血症、肺炎、腎盂腎炎、膀胱炎、外傷・熱傷・手術創等の二次感染が含まれます 。これらの重篤な感染症に対して、迅速で強力な殺菌効果を発揮することが期待されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060703
成人における標準的な投与量は、ゲンタマイシン硫酸塩として1日3mg(力価)/kgを3回に分割して筋肉内注射または点滴静注で投与します 。増量が必要な場合は、1日5mg(力価)/kgを限度として、3〜4回に分割投与することができます。小児では、1回2.0〜2.5mg(力価)/kgを1日2〜3回投与します 。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051220
点滴静注時は30分〜2時間かけてゆっくりと注入することが重要です 。急速な静脈内投与は副作用のリスクを高める可能性があるため、適切な投与速度を維持する必要があります。
参考)http://taiyopackage.jp/pdf/_rireki/GENTAMICIN_inj_L.pdf
外用薬としてのゲンタマイシン軟膏は、表在性皮膚感染症、慢性膿皮症、びらん・潰瘍の二次感染に対して使用されます 。皮膚の常在菌であるブドウ球菌属をはじめとする様々な細菌に対して効果を示します 。
参考)https://www.iwakiseiyaku.co.jp/dcms_media/other/gmoif20210601.pdf
使用方法として、患部を石鹸と水で清潔に洗浄し、しっかりと水分を拭き取って乾燥させた後、1日1〜数回適量を塗布します 。広範囲に使用する場合は、ガーゼに薄く伸ばして患部に貼付する方法も有効です。
参考)https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/gentacin.html
外用薬の大きな利点は、全身への吸収が限定的であることから、注射剤と比較して副作用のリスクが大幅に軽減されることです 。そのため、高濃度での局所的な治療が可能となり、感染部位に対して効果的な抗菌作用を発揮できます。
参考)https://oogaki.or.jp/hifuka/medicines/gentacin/
ゲンタマイシンは腎機能に依存して排泄される薬剤であり、血中濃度の測定が治療成功の鍵となります 。TDMの実施により、治療効果を最大化しながら副作用リスクを最小限に抑えることが可能になります。
推奨される採血時期は投与開始2〜4日目とされており、トラフ値(次回投与直前の血中濃度)とピーク値(投与後の最高血中濃度)の両方を測定します 。ゲンタマイシンのトラフ値は2mg/L以下に維持することが重要で、これを上回ると腎毒性のリスクが著明に増加します 。
参考)http://www.theidaten.jp/wp_new/20130725-42-3/
1日1回投与法では、5mg/kg(重篤な場合は7mg/kg)を24時間ごとに投与し、ピーク値80-120mg/L、トラフ値を可能な限り低値に維持することを目標とします 。この投与法により、従来の1日3回分割投与と比較して、副作用リスクの軽減と治療効果の向上が期待されています。
参考)https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansen/data/06_tdm.pdf
ゲンタマイシンの最も重要な副作用は腎毒性と聴覚毒性です 。腎毒性は高いトラフ値が持続することで発生リスクが高まり、血清クレアチニン値の上昇や尿沈渣での円柱出現として現れます 。聴覚毒性については、第Ⅷ脳神経障害による難聴や前庭機能障害が報告されています。
外用薬での副作用は比較的軽微で、主に塗布部位での発疹、かゆみ、赤みなどの接触皮膚炎が報告されています 。これらの症状が現れた場合は、薬剤に対するアレルギー反応の可能性があるため、使用を中止して医師に相談することが重要です。
参考)https://uchikara-clinic.com/prescription/gentamicin/
安全な使用のためには、アミノグリコシド系抗生物質やバシトラシンに対する過敏症の既往がある患者では禁忌となります 。また、長期間の漫然とした使用は耐性菌の発生リスクを高めるため、必要最小限の期間での使用が推奨されます 。