イメンドインタビューフォーム活用における制吐剤選択と併用管理

抗がん剤治療における悪心・嘔吐予防にイメンドが注目されていますが、インタビューフォームには効果的な使用法や注意すべき相互作用の重要な情報が記載されています。医療従事者が適切に服薬指導を行うために必要な情報とは何でしょうか?

イメンドインタビューフォーム

イメンドの基本情報と制吐療法における位置づけ
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選択的NK1受容体拮抗薬

脳内の嘔吐反応を抑制する世界初の作用機序を持つ制吐剤です

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遅発性悪心・嘔吐への効果

抗がん剤投与後2日目以降に現れる症状を効果的に予防できます

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他の制吐剤との併用

5-HT3受容体拮抗薬やデキサメタゾンと組み合わせて使用します

イメンドインタビューフォームの構成と記載内容

 

 

イメンドカプセルのインタビューフォームは、医薬品の適正使用を支援するために製薬企業が作成する詳細な情報文書です。1988年に日本病院薬剤師会が策定した記載要領に基づき、添付文書の内容を補完する目的で作成されています。インタビューフォームには、開発の経緯、薬理作用、臨床試験成績、安全性情報など、医療従事者が実際の医療現場で必要とする網羅的な情報が記載されています。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00007102.pdf

イメンドは抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐(CINV)に対する新規作用機序の予防薬として、Merck Sharp & Dohme Corp.が開発した世界初の選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗型制吐剤です。抗悪性腫瘍剤の投与を受けるがん患者にとって、CINVは最も苦痛を感じる副作用の一つであり、患者のQOL維持と化学療法継続において極めて重要な管理対象となっています。

 

参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2391008M1030

インタビューフォームは電子媒体(PDF)での提供を基本としており、必要に応じて薬剤師が印刷して使用できる形式になっています。医療従事者は、このインタビューフォームを活用することで、製薬企業のMRへの追加質問を行う前に、体系的に情報を入手できます。

 

参考)https://med.sawai.co.jp/file/pr22_4674.pdf

イメンドの用法用量と保険適用における注意点

イメンドの用法・用量は、他の制吐剤との併用において、通常、成人及び12歳以上の小児にはアプレピタントとして抗悪性腫瘍剤投与1日目は125mgを、2日目以降は80mgを1日1回、経口投与することとされています。1日目は抗がん剤投与開始の1時間~1時間30分前に、2日目と3日目は午前中に服用し、食前と食後のどちらでも構いません。

 

参考)医療用医薬品 : イメンド (イメンドカプセル125mg 他…

がん化学療法の各コースにおいて、本剤の投与期間は3日間を目安とし、成人では5日間を超えないこととされています。患者の吐き気や嘔吐の状態、治療内容によっては4日目以降も服用する場合がありますが、適切な投与期間の管理が必要です。​
保険適用上の取扱いにおいては、イメンドカプセルセットとして3日分を1包装とした製剤が用意されており、請求時の記載方法に注意が必要です。1日目にイメンドカプセル125mgを1カプセル、2日目以降にイメンドカプセル80mgを2日分として処方する形式が標準的です。

 

参考)https://archive.okinawa.med.or.jp/old201402/doctors/iryo/iryo-doc/h220107-3i.pdf

イメンドの作用機序とNK1受容体拮抗作用

イメンドの有効成分であるアプレピタントは、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬として、中枢性(脳内)の嘔吐反応に関与するNK1受容体に選択的に結合することで、嘔吐反応を抑制します。サブスタンスP(SP)という神経ペプチドがNK1受容体に結合すると嘔吐反応が引き起こされますが、アプレピタントはこの結合を競合的に阻害し、かつNK1受容体からの解離速度が遅いという特徴を持っています。

 

参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se23/se2391008.html

非臨床薬理試験において、アプレピタントはシスプラチン誘発による急性ならびに遅発性嘔吐を抑制することが確認されており、さらにアポモルヒネやモルヒネ誘発による中枢性嘔吐も抑制することが実証されています。この作用機序により、従来の5-HT3受容体拮抗薬では十分にコントロールできなかった遅発性の悪心・嘔吐に対して優れた有効性を発揮します。

 

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2009/P200900041/18018800_22100AMX02251_H100_1.pdf

アプレピタントの代謝物についても薬理作用が検討されており、一部の代謝物はNK1受容体結合阻害活性を示しますが、いずれも親化合物であるアプレピタントよりも阻害活性が低いことが示されています。ヒトNK1受容体に対する結合実験では、アプレピタントの受容体占有半減期は約154分であり、可逆的ながら解離速度が遅いという特性が確認されています。​

イメンドと併用薬の相互作用と服薬指導のポイント

イメンドはCYP3A4に対する用量依存的阻害作用を有するため、抗悪性腫瘍剤を含めて併用薬剤と相互作用を起こす可能性があり、十分な注意が必要です。飲み合わせに注意が必要な主な薬剤として、イトラコナゾールエリスロマイシンクラリスロマイシン、リトナビル、デキサメタゾンワルファリンカルバマゼピン、エチニルエストラジオールミダゾラムフェニトインリファンピシン、メチルプレドニゾロンジルチアゼム、トルブタミドなどが挙げられます。

 

参考)イメンドを服用する際の注意点

特にCYP3A4を阻害する薬剤との併用では、本剤の血中濃度が上昇する場合があり、強力なCYP3A4阻害剤(例:ケトコナゾール)との併用は慎重に行う必要があります。一方、イメンドはCYP3A4で代謝される薬剤の血中濃度を上昇させる可能性もあり、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンなどの併用薬の効果や副作用に影響を及ぼすことがあります。

 

参考)https://med.sawai.co.jp/file/pr1_4673.pdf

服薬指導においては、患者が現在服用している薬剤(市販薬や健康食品なども含む)について必ず確認し、担当医師や薬剤師に伝えるよう指導することが重要です。薬によっては、服用タイミングや服用方法が異なる場合があるため、丁寧な説明が求められます。飲み忘れてしまったときの対処法や、薬が変更になった場合の注意点についても、事前に説明しておく必要があります。
参考)服薬指導とは?意味や流れ、薬剤師が押さえておくべきポイントや…

イメンドの副作用と患者モニタリング

イメンドカプセルの比較的よく現れる副作用として、しゃっくり、便秘、下痢、食欲不振、頭痛などが報告されています。しゃっくりは特徴的な副作用であり、患者への事前説明が重要です。その他の副作用として、皮膚そう痒、発疹、眠気、不眠症、めまい、不整脈、動悸、悪心、嘔吐、消化不良、腹痛などが5%未満の頻度で認められています。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/37/12/37_713/_pdf

重大な副作用としては、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)の報告があり、発熱、紅斑、眼の充血などの症状が現れた場合には、すぐに病院を受診し担当医師に相談するよう患者に指導する必要があります。また、穿孔性十二指腸潰瘍のリスクも報告されており、みぞおちからお腹の上部にかけての激しい痛みや吐血などの症状が見られた場合も、直ちに医療機関への連絡が必要です。

 

参考)イメンドの副作用の種類と症状

全身に発疹が見られる、顔や首、唇、舌、喉などが腫れる、息苦しくなるなどの過敏症状が出現した場合も、アナフィラキシー反応の可能性があるため、速やかな対応が求められます。副作用によっては服用を中止することもありますが、患者自身の判断で服用を止めたり、服用方法を変えたりしないよう、明確に指導することが重要です。

 

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

イメンド投与における遅発性悪心嘔吐の予防効果と臨床成績

イメンドの最も重要な特徴は、既存の薬剤でコントロールが困難であった遅発性の悪心・嘔吐に対して優れた有効性を持つことです。5-HT3受容体拮抗薬は急性期の悪心・嘔吐に対して著明な制吐効果を発揮しますが、遅発期の悪心・嘔吐に対する有効性は十分に確立していませんでした。

 

参考)https://www.ono-pharma.com/sites/default/files/ja/ir/library/financial_results/presen/10051802.pdf

日本で実施された多施設共同第II相試験では、高用量シスプラチン(≥70mg/m²)を投与される日本人がん患者を対象に、標準治療群、アプレピタント40/25mg群、アプレピタント125/80mg群の有効性と安全性が評価されました。その結果、アプレピタント125/80mg群の有効性は40/25mg群と同程度であり、標準治療群に比べて優れていることが示されました。

 

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2009/P200900041/18018800_22100AMX02251_G100_1.pdf

世界の主要な制吐療法ガイドラインにおいても、イメンドは推奨される制吐剤として位置づけられています。米国臨床腫瘍学会(ASCO)ガイドライン、国際癌支持療法学会(MASCC)ガイドライン、米国国立包括癌ネットワーク(NCCN)ガイドラインなどで、高度および中等度の催吐リスクを伴うがん化学療法において、5-HT3受容体拮抗薬やデキサメタゾンと併用することが推奨されています。

 

参考)診療ガイドライン

特にAC療法(アントラサイクリン+シクロホスファミド)などの中等度催吐リスクのレジメンや、シスプラチンを含む高度催吐リスクのレジメンにおいて、イメンドを含む3剤併用療法(NK1受容体拮抗薬+5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン)が標準的な制吐療法として確立されています。​

イメンドインタビューフォームを活用した適正使用の推進

医療従事者がイメンドを適正に使用するためには、インタビューフォームに記載された詳細な情報を活用することが不可欠です。インタビューフォームには、添付文書だけでは十分に把握できない薬物動態の詳細、臨床試験における具体的な投与方法や評価基準、海外での使用実績、製剤の特性などが網羅的に記載されています。

 

参考)https://okayama-taiho.co.jp/medical/products/items/palo_i_IF.pdf

日本病院薬剤師会では、2009年より新医薬品のインタビューフォームの情報を検討する組織として「インタビューフォーム検討会」を設置し、個々のインタビューフォームが添付文書を補完する適正使用情報として適切かを審査しています。この体制により、医療従事者が信頼できる情報源として活用できる品質が担保されています。​
イメンドのような専門性の高い制吐剤を使用する際には、がん化学療法の催吐リスク分類、患者の個別因子(腎機能、肝機能、併用薬など)、制吐療法のガイドラインなど、多角的な視点から情報を統合する必要があります。インタビューフォームは、こうした臨床判断を支援する重要な情報源として位置づけられています。

 

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/986f3656095f4ebd222096f8b59ee29156b61913

薬剤師は服薬指導において、インタビューフォームの情報を基に、患者の病状や既往歴、生活習慣などを聴取し、処方医の処方が適切かどうか客観的に判断することが求められます。また、患者に対しては、薬の効能や効果、起こり得る副作用、服用方法や服用回数、保管方法などを丁寧に説明し、安全で効果的な薬物療法を支援する役割を担っています。​

イメンドの製剤特性とデキサメタゾン併用時の用量調整

イメンドカプセルは、125mgと80mgの2規格があり、さらに1日目用の125mgカプセル1カプセルと2日目以降用の80mgカプセル2カプセルを1セットにしたイメンドカプセルセットも販売されています。この製剤設計により、3日間の標準的な投与スケジュールに対応しやすくなっています。

 

参考)医療用医薬品 : イメンド (商品詳細情報)

カプセルの識別コードは、125mgカプセルが332、80mgカプセルが331であり、125mgは淡赤色不透明と白色不透明の組み合わせ、80mgは白色不透明のカプセルとなっています。有効成分のアプレピタントに加えて、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、精製白糖、結晶セルロースなどの添加剤が含まれており、室温保存で4年間の有効期間が設定されています。​
デキサメタゾンとの併用時には、イメンドのCYP3A4阻害作用によってデキサメタゾンの血中濃度が上昇するため、デキサメタゾンの用量を通常より減量する必要があります。アレルギー予防目的と制吐目的では、デキサメタゾンの減量方法が異なる場合があるため、各ガイドラインや添付文書を参照して適切な用量調整を行うことが重要です。

 

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/22b1afe124084944097335bca633adc53e40f59f

イメンドは食後でも空腹時でも投与することができ、高齢者における用量調整は必要ないとされています。ただし、腎機能障害や肝機能障害のある患者では、個別の評価が必要な場合があります。このような製剤特性や投与上の注意点についても、インタビューフォームに詳細な情報が記載されており、医療従事者の適正使用を支援しています。

 

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2009/P200900041/18018800_22100AMX02251_B100_1.pdf