パンクレリパーゼ代替薬を膵外分泌不全で選ぶ実践ガイド

パンクレリパーゼ(リパクレオン)の供給不足や販売中止が相次ぐ中、医療従事者はどの代替薬を選ぶべきか?ベリチームやマックターゼとの力価差・薬価・適応の違いを徹底解説。あなたの患者に今すぐ最適な選択ができますか?

パンクレリパーゼ代替薬の選択と膵外分泌不全への対応

パンクレリパーゼ(リパクレオン)に頼り切っていると、供給不足が起きた瞬間に患者さんの栄養状態が一気に崩れます。


パンクレリパーゼ代替薬:3つのポイント
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代替薬は現在3種類のみ

タフマックE・エクセラーゼ等が2024年3月末に販売中止となり、現在使用可能な消化酵素製剤はリパクレオン・ベリチーム・マックターゼの3種類のみです。

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適応症の違いが処方判断を左右する

リパクレオンは「膵外分泌機能不全における膵消化酵素の補充」のみが適応。ベリチームとマックターゼは「消化異常症状の改善」と適応が広く、代替の幅が異なります。

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薬価差は約10倍

リパクレオン顆粒は56.4円/包に対し、マックターゼは5.7円/錠と薬価に大きな差があります。軽症例では医療経済性も考慮した選択が求められます。

パンクレリパーゼ(リパクレオン)の供給不足が起きた背景

2024年11月、ヴィアトリス製薬からリパクレオン(カプセル150mg・顆粒300mg分包)の限定出荷が発表されました。 この供給不足の直接的な引き金は、タフマックE配合カプセル・タフマックE配合顆粒・エクセラーゼ配合錠が2024年3月31日をもって製造販売中止・薬価削除となり、これらを使用していた患者が一斉にリパクレオンへ流れたことです。mamayaku-blog+1
これは氷山の一角です。


もともと消化酵素製剤は先発品・後発品あわせて14品目以上が流通していましたが、2024年4月現在ではベリチーム・マックターゼ・リパクレオンの3種類しか残っていません。 需要が3種類に集中した結果、平常時を超える発注が続き在庫の偏在が起き、関係卸への限定出荷という状況に至っています。chigasaki-localtkt+1

製品名 一般名 現状
タフマックE配合カプセル・顆粒 パンクレアチン等配合 2024年3月31日 販売中止 ❌
エクセラーゼ配合錠 パンクレアチン等配合 2024年3月31日 販売中止 ❌
ベリチーム顆粒 パンクレアチン等配合 販売継続 ✅
マックターゼ配合錠 パンクレアチン等配合 販売継続 ✅
リパクレオン顆粒・カプセル パンクレリパーゼ 限定出荷中 ⚠️

医療機関では必要最小限の数量での購入対応が求められており、限定出荷解除の時期は未定のままです。



参考)リパクレオン代替薬選択肢と供給不足対策


パンクレリパーゼ代替薬の力価・適応・薬価の違い

代替薬を選ぶ前に、まず3剤の「何が違うか」を整理しておくことが基本です。



参考)タフマックE、エクセラーゼが製造販売中止!代替品は?リパクレ…


最も重要なのは適応症の違いです。リパクレオンの適応は「膵外分泌機能不全における膵消化酵素の補充」に限定されており、非代償期の慢性膵炎・膵切除・膵嚢胞線維症を原疾患とする患者が対象です。 一方、ベリチームとマックターゼの適応は「消化異常症状の改善」と広く、処方の自由度が高い点が特徴です。jsge+1
力価の差も見逃せません。


パンクレリパーゼを主成分とするリパクレオンは、リパーゼ・プロテアーゼアミラーゼの消化酵素力が他の製剤と比較して著しく高い高力価製剤です。 胃酸による失活を防ぐため腸溶性コーティングが施されており、十二指腸に排出されるのに最適な粒径に設計されています。 一方、代替製剤は胃溶性・腸溶性の2種の顆粒を配合した複合処方であり、胃のpH(pH3〜5)でも活性を持つ酸性リパーゼ・酸性プロテアーゼを含む点が特徴です。eisai+1

製品名 適応症 用法用量 薬価
リパクレオン顆粒300mg分包 膵外分泌機能不全における膵消化酵素の補充 1回600mg 1日3回 食直後 56.4円/包
リパクレオンカプセル150mg 同上 1回4カプセル 1日3回 食直後 30.1円/カプセル
ベリチーム顆粒 消化異常症状の改善 1回0.4〜1g 1日3回 食後 21円/g
マックターゼ配合錠 消化異常症状の改善 1回2錠 1日3回 食直後 5.7円/錠

薬価で見ると、リパクレオン顆粒は1食分56.4円に対してマックターゼは11.4円(2錠分)と約5倍の差があります。 1日3食分で計算すると1ヶ月の薬剤費は、リパクレオン顆粒で約5,000円、マックターゼで約1,000円ほどの差になります。医療経済性も処方選択の判断材料になりますね。



パンクレリパーゼ代替薬の使い分け:患者病態別の選択基準

代替薬の選択は「患者の病態の重症度」で決まります。


非代償期の慢性膵炎、膵頭部癌術後など膵外分泌機能が著しく低下している患者では、リパクレオンによるPERT(膵酵素補充療法)が第一選択です。 従来製剤(パンクレアチン換算で平均8,600mg/日)からリパクレオン1,800mg/日に変更した症例で体重が8kg増加し消化吸収障害のgradeが2→0に改善したデータがあり、高力価製剤の有効性は臨床データで裏付けられています。shinryo-to-shinyaku+1
一方、軽度〜中等度の消化不良症状が主体の患者や、膵機能がある程度残存している慢性膵炎代償期の患者には、ベリチームやマックターゼで十分な効果が期待できます。 リパクレオンの保険適用は厳格で、「非代償期の慢性膵炎、膵切除、膵嚢胞線維症等を原疾患とする膵外分泌機能不全により脂肪便等の症状を呈する患者」に限られます。 この条件を満たさない患者に対してリパクレオンを選ぼうとすると、保険審査で返戻が生じるリスクがあります。hirahata-clinic+1
つまり「リパクレオン=最強だからまず処方」という考え方は違います。


選択のポイントをまとめると以下の通りです。


  • 🔴 重症(脂肪便・体重減少・栄養不良あり):リパクレオンの供給再開を待機、または現行在庫の優先配分を依頼
  • 🟡 中等症(消化不良・腹部膨満が主体):ベリチーム顆粒を第一選択として試みる
  • 🟢 軽症(食後不快感程度):マックターゼ配合錠が薬価・服薬コンプライアンスの面で有利
  • 👴 高齢・認知症患者錠剤形態のマックターゼが顆粒より服薬しやすい場合が多い
  • 😮 嚥下機能低下患者:顆粒のベリチームが適している(水分と一緒に服用可)

患者の病態と薬価・服薬アドヒアランスを組み合わせて判断することが原則です。



参考:消化酵素製剤の使い分けに関する論文(日本膵臓学会誌)


パンクレリパーゼ代替薬への切り替え時の注意点と副作用管理

切り替えで最初に確認すべきは「服薬タイミングの違い」です。


リパクレオンは食直後が推奨されていますが、ベリチームは食後(食直後ではなく食事から少し時間をおいた後)での服用が設定されています。 この微妙なタイミングの違いを患者に正確に伝えないと、せっかく切り替えても効果が十分に得られない場合があります。



アレルギーリスクも確認が必須です。


リパクレオンは豚膵臓由来のパンクレリパーゼが主成分であるため、豚蛋白質に対する過敏症歴がある患者には禁忌です。 ベリチーム・マックターゼも動物性蛋白質由来の消化酵素を含むため、過敏症の既往がある患者では切り替え後も慎重なモニタリングが必要です。mamayaku-blog+1
副作用として報告されているのは、腹痛・下痢・便秘・吐き気が主で、頻度は1〜5%未満です。 また、消化吸収が改善されることで食欲が増進するケースがあり、これは病態改善の反映ですが、体重管理の観点から患者への事前説明が重要です。



もう一点、現場でよく見落とされるポイントがあります。


リパクレオンは吸湿性が高く一包化が不適とされています。 代替薬への切り替えと同時に調剤方法も変わるため、薬剤師への事前共有と連携が不可欠です。調剤上のトラブルを防ぐために、切り替え前に薬局との情報共有を確認する一手間を忘れずに。



パンクレリパーゼ代替薬導入と多職種連携による患者管理の実践

代替薬に切り替えた後の「効果判定をどのタイミングでするか」が、臨床上の最大の課題です。


リパクレオンと代替薬では薬物動態が異なるため、同じ期間・同じ指標で効果を判定することは正確ではありません。 脂肪便の性状変化、体重の推移、便中エラスターゼ値(基準値以下なら膵外分泌機能不全を示唆)などを複合的に追うことが推奨されます。naishikyo.or+1
栄養管理の見直しも同時に必要です。


リパクレオンから力価の低い代替薬に切り替えた場合、一時的に脂肪吸収能力が低下するリスクがあります。この期間は1日の脂肪摂取量を20〜30gに制限する食事療法と組み合わせ、MCTオイル(中鎖脂肪酸)のような胆汁やリパーゼをほぼ必要とせず吸収されやすい脂質源を活用することで、栄養不良の悪化を防ぎやすくなります。



参考)脂肪便と下痢が続くときの検査と治療方針


脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の欠乏にも注意が必要で、補充が必要なケースでは栄養士・管理栄養士との連携が治療の質を大きく左右します。



多職種でのモニタリング体制がです。


医師・薬剤師・栄養士・看護師が情報を共有し、代替薬の導入による治療効果と副作用を総合的に評価する体制を構築することで、供給不足による治療の質の低下を最小限に抑えられます。 リパクレオンの供給が再開された際の切り戻し戦略も、あらかじめ治療計画に盛り込んでおくことが患者の安心感につながります。



参考:膵外分泌機能不全の診断と栄養指導の詳細はこちら
「脂肪便と下痢が続くときの検査と治療方針」(消化器内科専門クリニック)
参考:リパクレオンの限定出荷に関する日本消化器内視鏡学会からの情報
「リパクレオン®カプセル150mg・顆粒300mg分包 限定出荷のお知らせ」(日本消化器内視鏡学会)