「プレガバリン寝る前 何錠」という質問に、医療者として最初に整理したいのは、患者さんが“錠数”で薬効や安全性を判断しようとしている点です。プレガバリンは錠剤の規格が複数あり(例:25mg、75mg、150mgなど)、同じ「1錠」でも有効成分量が全く違います。したがって、指導の主語は「何錠」ではなく「何mgを、1日何回に分けて」になります。
添付文書ベースでは、神経障害性疼痛に対して「初期用量:1日150mgを1日2回に分けて投与し、その後1週間以上かけて1日300mgまで漸増」「1日最高用量は600mgを超えない(いずれも1日2回に分ける)」が基本線です。線維筋痛症に伴う疼痛では「初期は同様に150mg/日から開始し、300mg/日まで漸増した後、300~450mgで維持」「最高用量は450mg/日」が一般的な枠組みです。これらは“寝る前だけにまとめて飲む”という設計ではなく、原則は分割投与です。つまり「寝る前に何錠?」は、処方が「1日2回(朝・夕)」なのか、「夕のみ(就寝前に寄せた変則)」なのかで答えが変わります。
また、OD錠(口腔内崩壊錠)では水なし服用が可能である旨が明記されていますが、患者が「水なし=いつでも増量してよい」と誤解することがあります。水なし服用可と、用量自己調整可は別の話です。処方意図を言語化して伝え、「処方せんに書かれた“1回量”が安全域の設計そのもの」であると再確認させることが、医療安全上のポイントになります。
参考:用法用量・腎機能別調整・重要な基本的注意(運転禁止、離脱症状、相互作用など)
JAPICの添付文書PDF:用法・用量、腎機能別の投与量表、重要な基本的注意、相互作用がまとまっています
プレガバリンの指導で臨床的に一番多い相談が、眠気(傾眠)とめまいです。添付文書には「めまい(20%以上)、傾眠(20%以上)」が重大な副作用として記載され、転倒・骨折などにつながった報告があること、そして「自動車の運転等危険を伴う機械操作に従事させないよう注意」が明確に書かれています。患者さんの質問「寝る前に何錠?」の背景に、「昼に飲むと眠いから夜に寄せたい」というニーズが潜んでいることは珍しくありません。
ここで重要なのは、眠気があるからといって患者が自己判断で「朝分を夜に足して2錠にする」などの行動に出るリスクです。医療者側の実務としては、まず処方意図を確認した上で、①増量直後か、②食事との関係、③併用薬、④アルコール、⑤腎機能、⑥高齢・転倒リスク、の順に原因を潰していくと安全に整理できます。添付文書には、アルコールや中枢神経抑制剤(例:ロラゼパム、オキシコドン等)で認知機能障害・粗大運動障害が相加的に増える可能性があることも書かれており、「夜に飲むなら晩酌もセットになっていないか」を必ず確認したいところです。
意外に見落とされがちなのが「食事の影響」です。添付文書の薬物動態では、食後投与でCmaxが低下しTmaxが延長し、AUCは大きくは変わらないことが示され、さらに「浮動性めまいの発現率は食後投与より絶食時投与で高かった」というデータが載っています。つまり、眠気やめまいを訴える患者で「寝る前に空腹で服用」している場合、医師の指示範囲内で“食後に寄せる”だけでも体感が改善する可能性があります(ただし、最終判断は処方医の設計による)。
「寝る前に何錠」という問いが危険になりやすい典型が、腎機能低下例です。プレガバリンは主として未変化体が尿中に排泄されるため、腎機能が落ちると血中濃度が上がり、副作用が出やすくなります。添付文書でも、クレアチニンクリアランス(CLcr)を参考に投与量・投与間隔を調節すること、複数用量が設定されている場合は低用量から開始し忍容性を確認して増量することが明記されています。
腎機能別の投与設計は、患者の“錠数感覚”を簡単に破壊します。例えばCLcrが十分な患者では「1回75mgを1日2回」から入る設計が一般的でも、CLcr低下例では「1回25mgを1日1回」や「1回25mgを1日2回」など、同じ疾患でも全く違う見た目の処方になります。高齢者は腎機能が低下していることが多いので、年齢だけでなくeGFR/CLcr相当を確認し、「眠気が強い→寝る前に増やす」という患者の自己調整が最も事故につながりやすい層だと共有しておく必要があります。
さらに、透析患者では透析で除去されうること、透析後の補充投与が設定されることなど、一般外来の患者説明より複雑になります。ここまで来ると「何錠?」という問いへの答えは、ほぼ「処方内容(mg、回数、透析日)を見ないと決められない」に収束します。患者教育としては、“錠数”という単位を患者の頭の中から一度外し、「用量(mg)と腎機能で決まる」ことを繰り返し伝えるのが安全です。
プレガバリンは「やめ方」も重要です。添付文書には、急激な投与中止で“不眠、悪心、頭痛、下痢、不安、多汗症などの離脱症状”があらわれることがあり、中止する場合は「少なくとも1週間以上かけて徐々に減量」と明記されています。臨床では「眠気がつらいから昨夜から勝手にやめた」「今夜は会食で飲むから抜いた」など、患者都合のON/OFFが発生しがちです。
「寝る前に何錠?」と同じくらい現場で多いのが、「寝る前だけやめてもいい?」という質問です。ここで医療者が強調すべきは、①自己判断の中止・減量は離脱症状だけでなく疼痛増悪を招く、②眠気対策が必要なら“中止”ではなく“用量設計の再構築(減量、増量速度の調整、配分変更、食事タイミング、併用薬調整)”が原則、という順番です。
また、重要な基本的注意には運転禁止が明確に書かれていますが、これは患者説明で「眠気がなければ運転可」という条件付き許可に変換してはいけません。少なくとも導入期や増量期は、患者が自覚していない注意力低下があり得るため、医療者側から安全側に倒して説明し、職業ドライバーや夜勤などの生活背景に合わせて服薬タイミングを調整する必要があります。
検索上位は「何錠が普通?」「寝る前に飲んでいい?」という直接疑問の解消に寄りがちですが、医療従事者向けに一段深掘りするなら、「錠数で聞いてくる患者は、自己調整リスクが高い」という視点を持つと実務が安定します。錠数質問は、(1)服薬理解の単位が“錠”で固定、(2)規格差の理解が浅い、(3)副作用回避のために自己配分を変えたい、(4)残薬を使った増減をしている、のどれか(複数)を示唆します。ここを拾えると、事故を未然に防げます。
具体的な問い返し(面接の型)を作っておくと有用です。
この枠組みで聴取すると、「寝る前に何錠?」という質問が、単なる一般的な用量相談ではなく、医療安全・アドヒアランス・副作用管理の入口であることが見えてきます。最後に患者へ渡す一文の例としては、「自己判断で錠数を増減せず、眠気がつらい場合は“何錠か”ではなく“何mgをいつ飲む設計にするか”を一緒に調整する」が、現場感のある落としどころになります。