リリカ タリージェ 違い|効果 副作用 適応症 作用機序 使い分け

神経障害性疼痛の治療薬として使われるリリカとタリージェは、どのような違いがあるのでしょうか?効果や副作用、適応症の違いから使い分けまで、医療従事者が知っておくべきポイントを詳しく解説します。この記事を読めば、両剤の特徴を理解し、適切な薬剤選択ができるようになるでしょうか?

リリカ タリージェ 違い

💊 リリカとタリージェの主な違い
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作用機序の違い

どちらもα2δサブユニットに結合するが、タリージェはα2δ-1サブユニットに選択的で解離半減期が長い(11.1時間 vs 1.4時間)

効果と副作用のバランス

リリカは効果が若干強いが副作用も多い。タリージェは副作用発現頻度が低く、安全性に優れる

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発売時期と適応症

リリカは先発で適応範囲が広く、タリージェは2019年発売で当初は末梢性神経障害性疼痛のみ(2022年に適応拡大)

リリカとタリージェの作用機序の共通点と相違点

 

 

 

リリカ(プレガバリン)とタリージェ(ミロガバリン)は、どちらも電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットに結合することで鎮痛効果を発揮する薬剤です。神経損傷が起こると増加する一次ニューロン神経終末のカルシウムチャネルに作用し、カルシウムイオンの流入を抑制することで、グルタミン酸やサブスタンスPなどの興奮性神経伝達物質の過剰放出を抑制します。

 

参考)https://www.miyabyo.jp/di_topics/docs/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E6%80%A7%E7%96%BC%E7%97%9B%E6%B2%BB%E7%99%82%E5%89%A4%E3%81%AE%E6%AF%94%E8%BC%83%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf

両剤の重要な違いは、タリージェが鎮痛作用に関与するα2δ-1サブユニットに選択的に結合する点にあります。タリージェのα2δ-1サブユニットからの解離半減期は11.1時間であるのに対し、リリカは1.4時間と約8倍の差があります。この長い結合時間により、タリージェは1mgあたりの用量でカルシウムチャネルにより長く結合し、効果の持続が期待できます。

 

参考)タリージェの作用機序
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さらに、タリージェの血中半減期は約2〜3時間で、投与後約1時間で最高血中濃度に達します。この薬物動態学的特性により、1日2回の投与で安定した鎮痛効果が得られる設計となっています。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/154/6/154_352/_pdf

リリカとタリージェの効果の違いと臨床成績

臨床成績から見ると、リリカの方が若干効果が強いとされています。これは発売時期の違いも影響しており、リリカは先に発売されたためデータが蓄積されているのに対し、タリージェは2019年発売のため、今後さらにデータが蓄積されることが期待されています。youtube​
参考)研修医がよく見る鎮痛薬

用量の対応関係については、タリージェ5mg ≒ リリカ75mg、タリージェ10mg ≒ リリカ150mg、タリージェ15mg ≒ リリカ225mgとおおよそ換算できます。リリカの用量規格は25mg、75mg、150mgから用意されているのに対し、タリージェは2.5mg、5mg、10mgから用意されており、より細かい用量調整が可能です。

 

参考)https://kmah.jp/wp-content/uploads/2024/02/2020-03.pdf
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帯状疱疹後神経痛に対する臨床試験では、等価用量での比較においてプレガバリン300mgとミロガバリンの鎮痛効果は同等とされています。ただし、薬には個人差があり、リリカよりタリージェの方が強いと感じる患者もいるため、効果判定は個別に行う必要があります。

 

参考)https://pharmacist.m3.com/column/quiz/5269
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慢性痛患者におけるプレガバリンからミロガバリンへの変更に関する臨床研究(日本ペインクリニック学会誌)
プレガバリンからミロガバリンへの切り替えに関する実臨床データと安全性評価の参考になります。

 

リリカとタリージェの副作用の発現頻度と特徴

タリージェはリリカより副作用の発症頻度が低いことが大きな特徴です。帯状疱疹後神経痛に対する臨床試験において、タリージェの主な副作用は傾眠(19.1%)、浮動性めまい(18.8%)、体重増加(8.7%)であるのに対し、リリカでは浮動性めまい(29.5%)、傾眠(24.8%)、浮腫(12.5%)と、いずれもリリカの方が高い発現率を示しています。​
両剤に共通する副作用として、めまい、傾眠、浮腫などがありますが、タリージェの方が後から開発されたため、副作用軽減を目指した設計となっています。特に眠気やめまいの出方には個人差があり、リリカで眠気が強い患者にはタリージェに変更することで改善することがあります。

 

参考)タリージェの効果・副作用を医師が解説【怖い理由は?】 - オ…

高齢者や腎機能低下患者では特に注意が必要です。タリージェは腎排泄型薬剤のため、腎機能に応じて用量調整が必要であり、重度腎機能障害患者では初期用量を1回2.5mg 1日1回に減量する必要があります。初回投与直後および増量時に副作用発現率が高くなることが指摘されており、高齢者では少量から開始することが推奨されています。

 

参考)https://plaza.umin.ac.jp/~juku-PT/D/D048.pdf

リリカとタリージェの適応症と保険適用範囲

適応症において両剤には重要な違いがあります。リリカの効能・効果は「神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛」と幅広く設定されています。一方、タリージェは2019年1月に「末梢性神経障害性疼痛」として承認され、2022年に「神経障害性疼痛全般」に適応が拡大されました。

 

参考)タリージェってどんな薬?神経のしびれやピリピリした痛みに使う…

現時点では、タリージェは線維筋痛症に対する適応を持たないため、線維筋痛症患者にはリリカを選択する必要があります。神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛など)に関しては、どちらも使用可能です。

 

参考)リリカ(プレガバリン)とタリージェ 広島県福山市の整形外科・…

用法・用量については、リリカは初期量150mg/日(分2)から開始し、維持量は150〜600mg/日、最高用量は600mg/日(神経障害性疼痛の場合)となっています。タリージェは腎機能が正常な場合、初期量5mg(1回5mg 1日2回)から開始し、推奨維持量は15mg(1回15mg 1日2回)です。​
両剤は同効薬であるため、併用処方は保険で認められません。処方変更の際には、期間の重複がないよう注意が必要です。

 

参考)https://www.m3.com/clinical/news/1261246

リリカとタリージェの使い分けと切り替え時の注意点

臨床現場での使い分けとして、効果を優先する場合はリリカを、副作用の軽減を重視する場合はタリージェを選択する方針が一般的です。患者から「リリカからタリージェに変更になった」と聞かれた場合、効果は若干落ちる可能性があるが副作用が少ない薬であることを説明することが推奨されています。

 

参考)タリージェ・リリカ・サインバルタ 違いと神経痛に良い薬は【5…
​youtube​
切り替えの際には、リリカ150mg/日を超えている場合、徐々に投与量を下げて150mg/日まで落としてからタリージェ10mg/日に切り替えるのが望ましいとされています。作用機序が同じであるため離脱症状のリスクは低いと考えられますが、実際に検討されているわけではないため、注意深い観察が必要です。

 

参考)タリージェ(ミロガバリン)の特徴・作用機序・副作用〜添付文書…

サインバルタ(デュロキセチン)との併用も有効な選択肢です。サインバルタは作用機序が異なる(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害)ため、リリカやタリージェと併用することで相乗効果が期待できます。

 

参考)https://note.com/mainstream_tosh/n/n12fa7ee1d43d

タリージェ(ミロガバリン)の作用機序:リリカ/サインバルタとの違い(薬剤師向け詳細解説)
作用機序の詳細な比較と併用療法に関する専門的な情報が記載されています。

 

リリカとタリージェの腎機能障害時の用量調整の実践

両剤とも腎排泄型薬剤であるため、腎機能低下患者では血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなります。
クレアチニンクリアランス値を参考として投与量及び投与間隔を調節することが必須です。

 

参考)全日本民医連

リリカの腎機能障害時の用量調整は、軽度腎機能障害(CLcr 60〜90 mL/min)では用量調整が不要ですが、中等度腎機能障害(CLcr 30〜60 mL/min)では1日量を1/2に減量し、重度腎機能障害(CLcr 15〜30 mL/min)では1日量を1/4に減量する必要があります。​
タリージェでは、軽度腎機能障害患者では用量調整を不要とし、中等度腎機能障害患者では用量を1/2に減量して初期用量を1回2.5mg 1日2回、最高用量を1回7.5mg 1日2回とします。重度腎機能障害患者では1回2.5mg 1日1回から開始し、最高用量は1回7.5mg 1日1回とされています。

 

参考)302 Found

実際の症例では、腎機能を考慮せずに常用量から開始したことで副作用が発現したケースも報告されています。本来1回2.5mg 1日1回から開始すべきところ、1回5mg 1日2回から開始したため、4倍量の薬剤が投与され副作用が生じました。このような事例を防ぐため、投与開始前には必ず腎機能を評価し、適切な用量調整を行うことが重要です。​
<表:リリカとタリージェの特徴比較>

項目 リリカ(プレガバリン) タリージェ(ミロガバリン)
発売時期 先発 2019年4月(後発) ​
一般名 プレガバリン ミロガバリンベシル酸塩 ​
規格 25mg、75mg、150mg 2.5mg、5mg、10mg、15mg ​
剤形 カプセル、OD錠 錠剤 ​
適応症 神経障害性疼痛、線維筋痛症 神経障害性疼痛 ​
用法(通常) 1日2回 初期量150mg/日 1日2回 初期量10mg/日 ​
最高用量 600mg/日(神経障害性疼痛) 30mg/日(1回15mg×2) ​
半減期 約6時間 約2〜3時間 ​
α2δ-1解離半減期 1.4時間 11.1時間 ​
効果の強さ 若干強い やや弱い可能性 youtube​​
副作用発現率 高い(めまい29.5%、傾眠24.8%) 低い(めまい18.8%、傾眠19.1%) ​

神経障害性疼痛治療剤の比較について(病院薬剤部DI委員会資料)
リリカとタリージェの詳細な薬価、用量、副作用発現率の比較表が掲載されています。

 

リリカとタリージェは、同じ作用機序を持ちながらも、それぞれ異なる特徴を持つ神経障害性疼痛治療薬です。リリカは効果の強さと適応範囲の広さが利点であり、タリージェは副作用の少なさと選択的な作用が利点となっています。患者の症状、副作用の耐性、腎機能、既往歴などを総合的に評価し、個別化医療の観点から最適な薬剤を選択することが、治療成功の鍵となるでしょう。

 


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