フェブリク錠を服用中の患者は、痛風発作が起きても薬を中止すると症状が18倍悪化する可能性があります。
フェブリク錠(一般名:フェブキソスタット)は2011年に国内で承認された非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤で、痛風・高尿酸血症に広く処方されています。アロプリノールと比べ腎機能障害患者にも使いやすい点が特徴とされてきましたが、重大な副作用として肝機能障害と過敏症(いずれも頻度不明)が添付文書に明記されています。
肝機能障害については、PMDAへの製造販売後の報告(2021年1月20日時点)において、因果関係が否定できない有害事象として「肝機能異常」26例、「薬物性肝障害」16例、「肝障害」16例、「肝機能検査異常」8例、「AST増加」6例、「ALT増加」が複数例報告されています。これは決して無視できない数字です。
添付文書の8.1項では「本剤投与中は定期的に検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること」と記載されており、肝機能の定期モニタリングは必須です。過敏症については全身性皮疹や発疹が報告されており、発現した場合は速やかに投与を中止する必要があります。
そのほかにも、1〜5%未満の頻度で肝機能検査値異常(AST増加・ALT増加・γ-GTP増加等)が認められており、定期的な血液検査を怠らないことが肝機能障害の早期発見につながります。つまり、処方後も継続的なフォローアップが原則です。
| 副作用の種類 | 頻度 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 肝機能障害 | 頻度不明(重大な副作用) | AST・ALT・γ-GTP上昇、黄疸 |
| 過敏症 | 頻度不明(重大な副作用) | 全身性皮疹、発疹 |
| 肝機能検査値異常 | 1〜5%未満 | AST・ALT・γ-GTP増加 |
| 発疹・そう痒症・紅斑 | 1%未満 | 皮膚症状 |
| 蕁麻疹・脱毛 | 頻度不明 | 皮膚症状 |
参考:フェブリク錠の添付文書(重大な副作用・その他の副作用)に関する詳細情報は以下をご確認ください。
医療用医薬品:フェブリク(KEGG MEDICUS)- 添付文書全文・副作用一覧
フェブリク錠が「腎臓に優しく安全な薬」というイメージを持つ医療従事者は少なくありません。しかし、心血管疾患リスクについては、見過ごせない海外データが存在します。
CARES試験(心血管安全性試験)は、心血管疾患を有する成人の痛風患者を対象に実施された二重盲検非劣性試験です。主要評価項目(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・不安定狭心症に対する緊急血行再建術の複合エンドポイント)ではアロプリノールに対して非劣性が示されましたが、副次評価項目の心血管死の発現割合はフェブキソスタット群4.3%(134/3,098例)に対しアロプリノール群は3.2%(100/3,092例)と、フェブキソスタット群で有意に高い結果が示されました(ハザード比 1.34、95%信頼区間:1.03〜1.73)。
これを踏まえた米国FDA(食品医薬品局)は2019年2月にフェブリクの添付文書を改訂し、使用をアロプリノールで効果不十分または副作用が重篤な患者に限定しました。日本国内では同年の安全対策調査会で「適用患者を限定する措置は必要ない」と判断され、添付文書への注意喚起追記にとどまっています。
さらに注目すべきデータがあります。鎌谷直之氏(公益財団法人痛風・尿酸財団理事長)の研究班がCARES試験データを再評価した結果、フェブリク(およびアロプリノール)を服用中止後1ヵ月以内の死亡率が服用継続群の約18倍に上昇することが明らかになっています。2〜3ヵ月後でも6〜9倍、4〜6ヵ月後でも3〜5倍と、長期間にわたり高い状態が続くとされています。
心血管疾患リスクが高い患者へのフェブリク処方時には、この数値を念頭に置いたうえで、患者への十分なインフォームドコンセントと継続的なモニタリングが必要です。また、自己判断で中止する患者への指導も非常に重要な実務になります。心血管既往歴のある患者が対象なら、特に要注意です。
参考:フェブリクの心血管リスクに関する詳しい経緯と専門家の見解は以下を参照してください。
フェブリク錠は「腎機能障害患者でも減量不要」として広く処方されています。これはアロプリノールとの大きな差別化ポイントです。しかし実は、フェブリク投与中の腎機能障害リスクは添付文書上では軽視されがちなものの、現場からの副作用報告データでは無視できない頻度で報告されています。これは意外ですね。
全日本民医連の副作用モニター情報(2024年10月掲載)によると、2013〜2017年の5年間のフェブキソスタット副作用報告27症例34件のうち、乏尿・腎不全など薬剤性腎機能障害が4件(うち急性腎不全がグレード3に分類される重篤症例1件)が報告されています。さらに、PMDAの2014年度副作用報告でも、フェブリクに関する70件のうち腎機能関連の報告が11件と全体の約16%を占めていました。
特に注意が必要なのが、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)、利尿剤、または非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用している高齢患者です。モニター報告では急性腎不全・乏尿・尿流出不良の症例いずれも、ARBや利尿剤を併用していた60〜80代の患者でした。腎機能に負荷がかかる薬剤との併用は、フェブリクの腎障害リスクを顕著に高める可能性があります。
添付文書には「尿量減少」が頻度不明の副作用として記載されているものの、目立たない位置づけになっています。しかし実臨床では、高齢者や降圧薬を複数使用している患者において、定期的な腎機能(血清クレアチニン・GFR・尿中β₂ミクログロブリン等)のモニタリングが重要です。
腎機能障害リスクへの具体的な対策として、処方開始後は少なくとも3〜6ヵ月ごとの血液・尿検査を実施し、尿量の著明な減少や浮腫、倦怠感が出現した場合は速やかに腎機能を評価することが求められます。また、NSAIDsとの短期的な併用であっても、腎機能が低下傾向の患者では慎重に経過をみることが条件です。
参考:フェブキソスタットを含む高尿酸血症治療薬の腎機能障害を含む副作用モニター情報の詳細は以下をご参照ください。
全日本民医連「27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用」- 腎機能障害・TSH上昇・肝障害の実症例付き解説
フェブリク錠の副作用として「甲状腺機能への影響」を意識して処方している医師・薬剤師はまだ少ないのが現状です。しかし、添付文書の8.2項には「本剤投与中は甲状腺関連の所見の有無を確認し、異常が認められた場合には甲状腺機能関連の検査を実施すること」と明記されており、甲状腺関連所見は医薬品リスク管理計画書(RMP)の重要な潜在的リスクとして登録されています。
具体的なデータとして、海外の観察研究ではフェブキソスタット服用中の痛風患者の約5.5%でTSHが5.5μIU/mL以上に上昇したことが報告されています(参考:基準値は約0.5〜5.0μIU/mL)。全日本民医連の副作用モニター情報には、アロプリノール100mgからフェブキソスタット20mgへ変更後、4年8ヵ月後にTSHが79.08μIU/mLという極めて高い値まで上昇した60代男性の症例が記録されています。フェブキソスタット中止から9週後に改善したとのことです。
この症例が示す重要な点は、TSH上昇が長期間をかけてゆっくりと進行するため、定期検査を実施していなければ見逃されやすいという点です。処方から数年が経過した患者であっても、定期的な甲状腺機能検査の実施が必要です。国内市販後調査でも「TSH異常」「FT3異常」の重篤症例が各1例報告されています。
なお、アロプリノール服用者でも同様のTSH上昇が約5.8%で確認されており、メカニズムはフェブキソスタット特有かXO(キサンチンオキシダーゼ)阻害薬共通の作用かはまだ解明されていません。ただしTSH上昇がFT4値に直接影響しないケースも多く、臨床的な重大性については個別評価が必要になります。TSHの変動は見逃しやすい副作用の一つです。
実務的な対策として、フェブリク投与開始前にベースラインのTSH値を測定しておくことが推奨されます。処方後は少なくとも年1回以上、特に長期処方例では6ヵ月ごとのTSH測定を検討してみてください。甲状腺機能低下症を疑う症状(倦怠感・むくみ・体重増加など)が出た場合は、速やかに検査を追加することが大切です。
フェブリク錠に関して「尿酸値を下げる薬だから、痛風発作は起きにくくなるはず」と考えがちな患者さんは非常に多いです。しかし現実は逆で、フェブリク投与開始直後こそが痛風発作が最も起きやすい時期であることを、患者への事前説明で必ず伝える必要があります。
尿酸降下薬の開始時には血中尿酸値が急激に低下し、関節や組織に蓄積していた尿酸結晶が剥がれ落ちることで炎症が誘発されます。これが「尿酸降下療法初期の痛風発作(フレア)」と呼ばれる現象です。添付文書の用法用量欄には、この誘発を防ぐため「投与開始から2週間以降に20mg、6週間以降に40mgへと徐々に増量すること」と明記されています。
また、痛風発作が起きた際の重要ポイントとして、添付文書8.4項には「本剤投与中に痛風関節炎(痛風発作)が発現した場合には、本剤の用量を変更することなく投与を継続し、症状によりコルヒチン・NSAIDs・副腎皮質ステロイド等を併用すること」と記載されています。つまり発作が出たからといって自己中断してはいけないということです。自己中断は絶対に避けるべき行動です。
実際の臨床では、以下のような場面での服薬指導が特に重要になります。
なお、服薬アドヒアランスの向上という観点でも、事前に「発作が起きても薬は続ける」という理解を患者に持ってもらうことが非常に重要です。特に痛風発作を繰り返し経験してきた患者は「薬を飲んでも発作が出るなら意味がない」と判断して自己中断するケースが少なくありません。医療従事者が処方時と指導時にこの点を丁寧に説明することで、不必要な服薬中断を防ぐことができます。これは患者教育の核心です。
参考:フェブリク(フェブキソスタット)の痛風発作時の服薬継続に関する薬剤師向け解説は以下もご参照ください。
m3.com「痛風急性期のフェブキソスタット(フェブリク)の服用について」- 発作中の服薬継続の根拠と指導ポイント
フェブリク錠はキサンチンオキシダーゼ(XO)を選択的に阻害する薬剤であることから、XOを代謝経路に持つ薬剤との相互作用に注意が必要です。フェブリク処方時の薬物相互作用の確認は、重篤な副作用を防ぐうえで非常に重要な業務です。
〈併用禁忌〉として規定されているのは以下の2種類です。メルカプトプリン水和物(ロイケリン)とアザチオプリン(イムラン・アザニン)については、フェブリクがXOを阻害することでこれらの代謝を妨げ、骨髄抑制などの副作用を増強する可能性があるとされています。これは見逃すと重大事故につながる禁忌です。
〈併用注意〉に指定されている主な薬剤は次の3つです。ビダラビン(幻覚・振戦・神経障害リスク増強)、ジダノシン(血中濃度上昇・投与量の調整が必要)、そしてロスバスタチン(AUCが約1.9倍・Cmaxが約2.1倍に上昇する可能性)が挙げられます。高脂血症でロスバスタチンを服用しながら、痛風でフェブリクが新規処方されるケースは実臨床で珍しくありません。このような多剤処方の患者では、ロスバスタチン関連の筋肉痛やCK上昇に注意することが求められます。
薬剤師による処方監査・服薬指導の場面では、「フェブリク新規処方=XO阻害薬が追加」という視点で、既存薬との相互作用チェックを習慣化することが実践的な対策です。特に血液腫瘍や関節リウマチ治療でアザチオプリンが使われている患者の場合、フェブリクとの併用禁忌は絶対に守るべき条件です。
| 相互作用区分 | 薬剤名(代表的な商品名) | リスク内容 |
|---|---|---|
| ⛔ 併用禁忌 | メルカプトプリン水和物(ロイケリン)、アザチオプリン(イムラン・アザニン) | 骨髄抑制等の副作用増強 |
| ⚠️ 併用注意 | ビダラビン | 幻覚・振戦・神経障害の増強 |
| ⚠️ 併用注意 | ジダノシン | 血中濃度上昇(投与量の調整が必要) |
| ⚠️ 併用注意 | ロスバスタチン | AUC約1.9倍・Cmax約2.1倍に上昇 |
フェブリクを含む高尿酸血症薬全般の副作用・相互作用に関する詳細情報は、PMDAが公開しているフェブリク錠の医薬品リスク管理計画書(RMP)で確認することができます。
参考:フェブリク錠の相互作用・禁忌情報を含む最新の添付文書情報はこちら
PMDA「フェブリク錠10mg/20mg/40mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)」- 重要な特定リスク・潜在的リスクの全項目