多発性単神経障害が進行すると、多発神経障害と症状が酷似し、臨床現場で約30〜40%のケースで初期に誤分類されるリスクがあります。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E9%96%A2%E9%80%A3%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E5%8D%98%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E9%9A%9C%E5%AE%B3)
多発神経障害(polyneuropathy)とは、単一の神経や一肢にとどまらない、びまん性の末梢神経障害です。 典型的には両側対称性で、四肢遠位部(足先・手先)から症状が始まるグローブ&ストッキング型分布を示します。 感覚障害(しびれ・灼熱感・感覚低下)、運動障害(筋力低下・筋萎縮)、自律神経障害(発汗異常・起立性低血圧)の3系統のいずれかまたは複合で現れます。 tmhp(https://www.tmhp.jp/shinkei/section/medical-department/neurology/disease/pn.html)
先進国では糖尿病性多発神経障害が最多です。 初発症状は爪先・足底のしびれや灼熱感で、進行すると下肢からアキレス腱反射消失、さらに上肢に波及します。 自律神経線維が障害されると、患者の日常生活に大きく影響する起立性低血圧や排尿障害が加わります。 nishiizu.gr(https://nishiizu.gr.jp/wp-content/uploads/sites/24/2025/03/conference-16_12.pdf)
つまり「両側・対称・遠位優位」が基本です。
単神経障害(mononeuropathy)は、単一の末梢神経のみが障害された状態を指します。 局所の外傷・圧迫・絞扼が主な原因であり、多発神経障害とは原因機序がまったく異なります。 jmedia(https://jmedia.wiki/%25E6%259C%25AB%25E6%25A2%25A2%25E7%25A5%259E%25E7%25B5%258C/Peripheral_neuropathy)
代表的な絞扼性単神経障害には以下があります。 igakukotohajime(http://igakukotohajime.com/2021/09/09/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E9%9A%9C%E5%AE%B3-neuropathy/)
診断のポイントは「神経の解剖学的支配域と一致するか」です。 例えば正中神経は母指・示指・中指・環指橈側の感覚を担当するため、その範囲をきちんと確認することが鑑別の第一歩になります。 miyake-naika(https://miyake-naika.com/01sindan/sinkei-kin-neuropathy.html)
単神経障害なら局所原因を最初に疑うのが原則です。
参考:末梢神経の解剖学的分類と絞扼部位の詳細
末梢神経障害 neuropathy – 医學事始 いがくことはじめ(絞扼部位・分類の詳細解説)
鑑別の実際では、まず「症状の左右対称性」「障害部位の数」「末梢優位か神経幹単位か」の3点を確認します。 これを整理すると以下のようになります。 tmhp(https://www.tmhp.jp/shinkei/section/medical-department/neurology/disease/pn.html)
| 項目 | 多発神経障害 | 単神経障害 | 多発単神経障害 |
|---|---|---|---|
| 左右対称性 | 対称性(両側ほぼ同程度) | 片側のみ | 左右非対称 |
| 障害の分布 | 四肢遠位優位・連続的 | 単一神経支配域 | 複数の神経幹・非連続 |
| 発症様式 | 緩徐進行(慢性)が多い | 急性・圧迫誘因あり | 亜急性・突発的に追加 |
| 代表的原因 | 糖尿病・薬剤・アルコール | 絞扼・外傷 | 血管炎・ANCA関連 |
多発性単神経障害が進行した段階では、多数の神経が障害されて多発神経障害と見分けにくくなります。 このとき左右非対称性の残存が最大のヒントになります。 非対称性があれば多発単神経障害を積極的に疑うべき、これが条件です。 jmedj.co(https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d080601/)
電気診断検査は全例で施行すべき必須検査です。 神経伝導検査では、脱髄性障害なら「伝導速度の低下・伝導ブロック・時間的分散」、軸索性障害なら「誘発波振幅の低下」として現れます。 この2つを区別することで原因疾患の候補を大幅に絞り込めます。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E9%81%8B%E5%8B%95%E5%8D%98%E4%BD%8D%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E9%9A%9C%E5%AE%B3)
診療報酬上、誘発筋電図(神経伝導速度測定を含む)は1神経につき200点と定められています。 複数神経を検査するとその分だけ点数が加算されるため、疑う疾患に応じて検査神経を事前に計画しておくことが現実的です。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_5%2Fd239.html)
これは使えそうです。
針筋電図では、軸索障害が存在する場合に脱神経所見(安静時の線維自発電位)や神経再生を示す神経原性パターンが確認できます。 運動ユニットの形態変化も原因絞り込みに役立ちます。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0325-10g_0002.pdf)
参考:神経伝導検査・筋電図の読み方の詳細
日本神経学会「多発ニューロパチーの電気診断」(脱髄・軸索性鑑別の検査手順)
多発神経障害の原因として糖尿病・アルコールは広く知られていますが、薬剤性は見落とされやすい原因の一つです。 例えばスタチン系薬剤、白金製剤(シスプラチン)、イソニアジド、ビンカアルカロイド系などが軸索性感覚神経障害を引き起こします。 内服中の薬剤リストの確認を怠ると、原因を特定できずに症状が進行するリスクがあります。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E9%81%8B%E5%8B%95%E5%8D%98%E4%BD%8D%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E9%9A%9C%E5%AE%B3)
意外ですね。
血管炎性の多発単神経障害はANCA関連血管炎が代表的です。 神経栄養血管の閉塞による末梢神経梗塞が左右非対称に生じ、亜急性に進行します。 炎症マーカー(CRP上昇・ANCA陽性)が手がかりになりますが、陰性例もあり見逃しに注意が必要です。 igaku-shoin.co(https://www.igaku-shoin.co.jp/paperplus/archive/y2022/0025)
薬剤歴と血管炎マーカーの確認が条件です。
参考:血管炎性多発単神経障害の症例と診断プロセス
参考:多発神経障害の原因薬剤の完全リスト
MSDマニュアル プロフェッショナル版「多発神経障害」(薬剤性・毒性物質の詳細一覧付き)