痛みを「がまんできる」と言う患者に、あなたはNRSを正確に聞けていますか。

疼痛マネジメントにおける看護師の役割は、単なる「痛み止めの投与」にとどまりません。患者の痛みを正確に評価し、医師・薬剤師・理学療法士などと連携しながら包括的なケアを組み立てることが求められます。
厚生労働省の資料によると、医療従事者(担当医・担当看護師)は患者の苦痛を過小評価しがちであるという研究結果が報告されています。 つまり「大丈夫そうに見える」という主観的判断だけでは、患者の本当の苦痛を見逃してしまうリスクがあります。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000851355.pdf)
アセスメントの視点は多角的に持つことが基本です。 具体的には次の要素を確認します。 smile-nurse(https://www.smile-nurse.jp/column/nursing-knowledge/pain-rating-scale-2/)
- 疼痛の部位・範囲・性状(鋭い・鈍い・灼熱感など)
- 疼痛のパターン:安静時痛か体動時痛か、持続痛か突出痛か
- NRSによる強度(0〜10):一番強い時・弱い時・1日の平均
- バイタルサインの変化(頻脈・発汗・血圧上昇)
- 日常生活への影響:離床・食事・睡眠の妨げになっているか
看護師は患者と最も長く接する職種です。だからこそ、疼痛の変化を最初に気づける立場にあります。
疼痛管理の基本(NRS・CPOT・鎮痛薬の種類まで)|看護roo!
疼痛スケールにはNRS・VAS・VRS・フェイススケール・CPOTなど複数あり、患者の状態や認知機能に応じて使い分けることが重要です。スケールの選択を誤ると、痛みを正確に追跡できません。
| スケール | 主な対象 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| NRS(0-10) | 成人・意識清明 | 手軽・応答性が高い | アンカーと測定条件を毎回統一する rehabilikunblog(https://rehabilikunblog.com/pain_hyouka/) |
| VAS(10cm線) | 成人・比較的元気 | 微細な変化を捉えやすい | 書字困難患者には不向き |
| フェイススケール | 小児・高齢者 | 言語不要で直感的 | 感情表現と混同する患者あり |
| CPOT | 意思表示困難・ICU | 客観的行動観察 | 評価者間で基準を統一する kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/8420/) |
NRSを使う際に特に注意が必要なのが「アンカー(10の定義)の統一」です。「今まで経験した最大の痛み」と「想像できる最大の痛み」では、患者の回答が大きくずれることがあります。 同じ患者に同じ方法で聞き続けることが、正確な経過評価の条件です。 neurotech(https://neurotech.jp/medical-information/role-and-use-of-pain-scales/)
また、横浜市立大学の研究では、がん疼痛マネジメントに関する看護師の正答率が40%を超えた設問が8項目のみだったという調査結果があります。 これは意外ですね。知識のアップデートが疼痛管理の質に直結します。 ycu.repo.nii.ac(https://ycu.repo.nii.ac.jp/records/522)
NRS・VAS・BPIの使い分けと運用のコツ(図解あり)|リハビリクン
薬物療法の中心はWHO三段階除痛ラダーに基づく段階的な鎮痛薬の使用です。非オピオイド鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン)から始まり、痛みの強さに応じて弱オピオイド・強オピオイドへと移行します。
オピオイド(モルヒネ・オキシコドン・フェンタニルなど)を使用している患者では、看護師は次の副作用を定期的に確認することが不可欠です。 oici(https://oici.jp/file/202302/kanwacare-manual-230213.pdf)
- 🤢 嘔気・嘔吐:投与開始初期に多い。制吐薬の準備と使用状況を確認
- 🚽 便秘:オピオイドを使う全患者に対して、緩下剤の予防投与が原則
- 😴 過鎮静・呼吸抑制:眠気スケール(RASS・RASSなど)と呼吸数を継続観察
- 💧 口渇・尿閉:特に高齢者で注意
術後疼痛管理では「NRS安静時3以上で疼痛管理が必要」が目安です。 リハビリテーションを考慮する場合は、NRS1〜3程度のコントロールが理想とされています。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/8420/)
術後疼痛管理の実際・症例解説(PCAポンプ・硬膜外鎮痛)|ナース専科
非薬物療法は薬物療法の補完として組み合わせることで、鎮痛薬の使用量を減らしながら患者のQOLを高める効果が期待できます。これは使えそうです。
代表的な非薬物療法には以下のものがあります。
- 🌡️ 温罨法・冷罨法:慢性の鈍い痛みには温罨法、急性・炎症性の痛みには冷罨法が有効
- 🛏️ ポジショニング:体位調整によって筋緊張を緩和し、体動時痛を軽減
- 🧠 認知行動療法(CBT):Pain Management Nursing誌2026年2月の研究では、看護師の51〜84%が疼痛セルフマネジメント戦略にある程度以上精通しているという調査結果が報告されました academia.carenet(https://academia.carenet.com/share/news/83e06f0f-9b3c-4be1-b617-c577c90db4be)
- 🎵 気分転換・音楽療法:不安の緩和を介した疼痛閾値の上昇が期待できる
療養環境の整備も疼痛管理の一部です。室温・照明・騒音を調整し、患者が安静を保てる環境を作ることで痛みの主観的体験が変わります。
疼痛管理の看護計画では、疼痛評価・薬物管理・セルフケア指導が中心になりがちです。しかし、看護師が見逃しやすいのが患者が「痛み」に与えている意味づけへの介入です。
「痛みがあることは病気が進んでいる証拠だ」「鎮痛薬を使うと中毒になる」という思い込みを持っている患者は、実際の臨床現場に少なくありません。こうした疼痛に関する誤信念(Pain Catastrophizing)が、適切なセルフマネジメントを妨げることが研究で示されています。
看護師には次のような介入が有効です。
1. 信念の確認:「痛み止めについてどう思いますか?」と開かれた質問で誤信念を把握する
2. 正確な情報提供:オピオイドの依存性に関する誤解を丁寧に修正する
3. 成功体験の共有:レスキュー使用後に「活動できた」経験を言語化し記録に残す
4. 目標設定:「痛みをゼロにする」ではなく「痛みがあっても〇〇できる」という機能目標を共有する
医療者が疼痛を過小評価しやすいのと同様に、患者自身も「がまんすることが美徳」と考えて疼痛を訴えない傾向があります。 この双方向の「過小評価の連鎖」を断ち切ることが、質の高い疼痛マネジメントの出発点です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000851355.pdf)