痛みを「がまんさせる」と術後の回復が最大30%遅れることがデータで示されています。

日本ペインクリニック学会から2025年3月に発行された「術後痛ガイドライン」は、周術期に関わるすべての医療者を対象とした最新の指針です。 本ガイドラインは術中から予防的に開始する術後鎮痛法、術式に応じた鎮痛法、そして慢性術後痛(CPSP)の予防まで幅広く網羅しています。 小児やオピオイド慢性服用患者など特別な配慮を要する患者への対応方針も明確化されており、現場での実践的活用を想定した構成になっています。 bunkodo.co(https://www.bunkodo.co.jp/book/CTFVNO1N4K.html)
ガイドラインが特に強調するのは「適切な術後鎮痛管理が患者の早期離床と臓器合併症予防に直結する」という点です。 痛みの放置は交感神経亢進を引き起こし、心肺系への負担や回復の遅延につながります。 つまり鎮痛は「患者の快適性」だけでなく「合併症予防」という医学的必然性を持つ介入です。 nakayamashoten(https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-74327-1.pdf)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行元 | 日本ペインクリニック学会 |
| 最新版発行日 | 2025年3月4日 |
| 主な対象読者 | 周術期に関わる全医療者 |
| 主なトピック | 術後鎮痛法・慢性術後痛・特殊患者への対応 |
マルチモーダル鎮痛(多モード鎮痛)とは、異なる作用機序を持つ複数の鎮痛薬・手技を組み合わせる戦略です。 オピオイドのみに頼る単剤管理はガイドラインの推奨から外れています。 これが基本です。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/227727/)
フェンタニルやモルヒネなどのオピオイドは高い鎮痛効果を持ちますが、悪心・嘔吐・便秘といった副作用が患者の苦痛を増す要因になります。 そこでNSAIDsやアセトアミノフェンをATC(時間固定投与)で組み合わせることで、オピオイド使用量を減らしながら鎮痛効果を維持します。 米国麻酔科学会もNSAIDs・アセトアミノフェンのATC投与を強く推奨しています。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/227727/)
区域麻酔(硬膜外麻酔・末梢神経ブロック)もマルチモーダル鎮痛の重要な柱です。 神経ブロックを組み合わせることで、術後慢性痛への移行を予防できる可能性が示されています。 これは使えそうです。 術式に応じた鎮痛法の選択がガイドライン上でも詳述されており、「すべての手術に同じプロトコルを適用する」運用は見直しが必要です。 jkpum(https://jkpum.com/wp-content/themes/kpu-journal/assets/pdf/128-10-739.pdf)
消化性潰瘍リスクがある患者にNSAIDsを使う場合は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)や高用量H2受容体拮抗薬との併用が強く推奨されています。 潰瘍・出血傾向のある患者はアセトアミノフェンを選択するのが原則です。 jspm.ne(https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2014/03_01.pdf)
2022年度診療報酬改定で新設された「術後疼痛管理チーム加算(A242-2)」は、1日につき100点(1,000円)が算定できます。 全身麻酔(マスクまたは気管内挿管による閉鎖循環式)を伴う手術後の患者が対象で、手術翌日から最大3日間算定できます。 yakuyomi(https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_164/)
チームの構成要件は「麻酔科医師・看護師・薬剤師の3名以上」が必須です。 加えて施設基準として麻酔科を標榜する保険医療機関であること、十分な疼痛管理体制の整備が求められます。 チームに専任となる看護師・薬剤師は所定の研修修了が必要です。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/500400)
チームが担う業務は多岐にわたります。 okmc(https://www.okmc.jp/doc/patient/ps/aps/info-protocol.pdf)
yakuyomi(https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_164/)
硬膜外麻酔などの局所麻酔剤の持続的注入が3日未満で終了した場合でも、疼痛管理要件を満たしていれば最大3日の算定が可能です。 厳しいところですね。 局所麻酔剤の使用日数と加算算定日数を混同しないよう注意が必要です。 yakuyomi(https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_164/)
術後疼痛管理チーム加算の算定要件・疑義解釈・薬剤師の役割を詳しく解説(薬読)
慢性術後痛(CPSP:Chronic Post-Surgical Pain)は術後3か月以上持続する痛みと定義されます。 手術の種類によってはCPSP発生率が20〜50%に達する術式もあるとされており、患者のQOL低下と医療費増大につながる重大な問題です。 急性期の疼痛管理が不十分だった患者ほどCPSP移行リスクが高くなることが明らかになっています。 jkpum(https://jkpum.com/wp-content/themes/kpu-journal/assets/pdf/128-10-739.pdf)
ガイドラインは術中からの予防的鎮痛開始を推奨しています。 マルチモーダル鎮痛や区域麻酔の活用が、CPSPの予防に有効である可能性が示されています。 痛みが遷延した場合には速やかにペインクリニックへの紹介も視野に入れるべきと、ガイドラインは明記しています。 bunkodo.co(https://www.bunkodo.co.jp/book/CTFVNO1N4K.html)
術後痛管理の実際として様々な鎮痛方法・薬剤の特徴をわかりやすく解説(ナース専科)
疼痛評価は「患者が痛いと言ったら対応する」という受動的な体制では不十分です。 ガイドラインはNRS(Numerical Rating Scale、0〜10の数値評価)やVAS(Visual Analogue Scale)などの客観的スコアを用いた定期的評価を推奨しています。 これが原則です。
現場では「NRSで4以上なら介入」という基準を設けているチームが多いですが、重要なのは「安静時の痛み」だけでなく「体動時・深呼吸時の痛み」も評価することです。 体動時痛が改善されないと、患者は離床を避け、肺合併症のリスクが高まります。 痛みを正確に把握することが、早期回復への第一歩です。 bunkodo.co(https://www.bunkodo.co.jp/book/CTFVNO1N4K.html)
副作用の評価も疼痛評価と同時に行う必要があります。 特にオピオイド使用患者では、呼吸抑制・鎮静レベル・悪心嘔吐のスコアリングを鎮痛評価と並行して記録するプロトコルが求められます。 鎮痛スコアと副作用スコアを同じシートで一元管理すると、チーム間の情報共有が格段に効率化します。 これは使えそうです。 okmc(https://www.okmc.jp/doc/patient/ps/aps/info-protocol.pdf)
| 評価ツール | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| NRS(数値評価) | 0〜10の数字で表現、簡便 | 成人の日常的疼痛評価 |
| VAS(視覚的評価) | 100mmスケール上に印をつける | 研究・詳細評価 |
| フェイススケール | 表情イラストで表現 | 小児・高齢者・言語障害患者 |
| 鎮静スコア(RASS等) | 意識レベルを段階評価 | オピオイド副作用モニタリング |
疼痛管理チームによる回診記録と評価データを蓄積し、自施設のプロトコル改善に活用する「PDCA サイクル」の構築が、ガイドライン実装の次のステップです。 数値で可視化できると、多職種間での議論の質も上がります。 okmc(https://www.okmc.jp/doc/patient/ps/aps/info-protocol.pdf)
日本ペインクリニック学会公式サイト:術後痛ガイドライン(2025年版)の案内と会員向け公開情報