セルフケアとラインケアの実践方法

医療従事者の心の健康を守るためのセルフケアとラインケアについて解説します。職場のメンタルヘルスケアを効果的に実践するために、どのような取り組みが必要でしょうか?

セルフケアとラインケアの基本

メンタルヘルスケアの全体像
🧘
セルフケア

従業員自身がストレスに気づき対処する

👥
ラインケア

管理監督者が部下の健康状態を把握し支援する

⚕️
産業保健スタッフによるケア

専門職が継続的にサポートする体制を構築

セルフケアとは何か

 

 

セルフケアとは、従業員自身がメンタルヘルスやストレスに対して正しく理解し、自分でストレス反応に気づき対処することです。厚生労働省が策定した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、4つのメンタルヘルスケアの一つとして位置づけられています。医療従事者は特に感情労働による疲労が蓄積しやすく、バーンアウトのリスクが高いため、日常的なセルフケアの実践が不可欠です。chr+5
セルフケアの目的は、従業員が自身のストレス状態を認識し、適切に対処する力を身につけることにあります。ストレスチェックの結果を活用した研修や、リラクゼーション法を学ぶワークショップの開催などが具体的な取り組みとして挙げられます。自律的に健康管理ができるようになることで、職場全体のストレス軽減につながります。avenir-executive+1

ラインケアとは何か

ラインケアとは、部長や課長などの管理監督者が中心となって、部下とコミュニケーションを図りながらメンタルヘルス対策に取り組むことを意味します。管理職は常日頃から部下の状況に精通しているため、ストレスの原因がどこにあるかを把握しやすい立場にあります。具体的には、メンタルが不調な部下の相談に応えたり、休職後の職場復帰をサポートしたりする行為を指します。hrpro+2
管理監督者は、日常的に部下の言動や勤務態度、表情などに注意を払い、健康状態や職場環境の変化を適切に把握しておくことが求められます。早期に問題を発見し、職場環境の改善につなげることで、メンタルヘルス不調を予防できます。ラインケアには「一次予防(未然防止)」「二次予防(早期発見)」「三次予防(職場復帰支援)」のすべてが含まれており、幅広い役割を担っています。iec+2

セルフケアにおける医療従事者のバーンアウト予防

医療従事者のバーンアウト予防には、個人レベルでのセルフケアが重要な役割を果たします。セルフケアの基本は、まず自分自身の状態を客観的に把握することから始まります。日々の感情や体調の変化を記録し、ストレス反応を早期に発見することが効果的です。看護師専用のバーンアウト自己診断ツールやストレスチェック表を活用することで、定期的な自己評価を行うことができます。kaigojob
ストレスマネジメント技法の習得も重要です。深呼吸法、筋弛緩法、マインドフルネス瞑想などのリラクゼーション技法を身につけることで、勤務中でも短時間でストレスを軽減することが可能になります。特にマインドフルネス瞑想は、感情労働による疲労回復に優れた効果があることが研究で明らかになっています。バランスの取れた食事と7~8時間の睡眠時間を確保し、夜勤がある場合でも一定のリズムを作ることが大切です。nursing-st-shirayuri+1

ラインケアにおける職場環境改善と相談対応

ラインケアの重要な役割の一つは、職場環境の把握と改善です。管理監督者は仕事の量や働き方の見直し、良好な人間関係の構築などを通して、働きやすい職場環境をつくる責任があります。職場環境改善を実施する際には、職場全体で取り組むことが大切であり、管理監督者として協力し積極的に関わる必要があります。sanchie+3
部下からの相談対応もラインケアの中核をなします。部下の「いつもと違う」様子に気づき、不調を早期把握し、適切なケアが受けられるよう産業保健スタッフや産業医につなぐことが求められます。部下からの相談に応じて話を聴き、適切な情報提供や専門的なサポートへつなぐことで、メンタルヘルス不調の深刻化を防ぐことができます。医療機関におけるラインケアの実施は、職員のメンタルケアを通して個々人の能力を最大限に発揮させることができます。avenir-executive+3

セルフケアとラインケアの具体的実践方法

セルフケアの具体的な方法として、身体を動かすことが有効です。軽いランニングやサイクリング、ダンスなどの運動は、ネガティブな気分を発散しリラックス効果をもたらし、睡眠リズムを整える効果があります。今の気持ちを書き出してみることも効果的で、文章やイラスト、落書きなどを通じて悩みを客観視し、新しい気づきを得られます。腹式呼吸をゆっくり繰り返すことで不安や緊張が和らぎ、音楽を聴いたり歌ったりすることでエネルギーや活力が生まれます。phchd
ラインケアの実践では、メンタルヘルス不調によって休職していた部下の職場復帰支援が重要な役割となります。復職者は様々な不安を抱えながら職場に戻ってくるため、上司は人事担当者や産業保健スタッフと密に連携をとりながら、復職者の気持ちを受け止め不安や緊張を軽減することが求められます。事前に復帰の流れを把握しておくことが大事であり、一般的な職場復帰支援の考え方と全体的な流れについて理解しておく必要があります。armg+1

事業場内産業保健スタッフと事業場外資源の活用

事業場内産業保健スタッフ等によるケアは、衛生管理者や産業医といった産業保健に関わる職種が行うケアで、セルフケアやラインケアが効果的に実施できるよう支援するものです。働く人々および管理監督者に対する支援の他、職場のメンタルヘルスケアの実施に関して中心的な役割を担います。産業保健スタッフは専門的な知識を活かして、従業員の健康管理を総合的にサポートする立場にあります。go100+3
事業場外資源によるケアとは、メンタルヘルス不調対策や各種の健康維持に関して専門的な相談が可能な機関や、産業保健に関する支援を行っている外部機関を利用した活動のことです。主な機関として、厚生労働省が運営する「こころの耳」、全国各地に所在する「産業保健総合支援センター」、産業保健サービスを提供する民間企業、外部EAP機関などがあります。これらの外部資源を有効に活用することで、組織内だけでは対応が難しい専門的なケアを提供できます。mstage-corp
厚生労働省「こころの耳」では、メンタルヘルスに関する最新情報や企業がすぐに活用できる情報が多数掲載されています。
厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、4つのケアの継続的かつ計画的な実施について詳細が記載されています。

 

 




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