輸液1号2号3号4号違い:成分組成と適応の使い分け

医療現場で頻用される輸液1号から4号液の成分組成の違いと、それぞれの適応場面について詳しく解説します。なぜ各輸液で電解質濃度が異なるのでしょうか?

輸液1号2号3号4号違いとその特徴

輸液製剤の基本分類
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低張電解質輸液

体液より電解質濃度が低く、細胞内外に分布

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等張電解質輸液

血漿と同等の浸透圧で細胞外液を補充

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1~4号液分類

組成と適応に基づいた臨床的な使い分け

輸液1号から4号液は、生理食塩液と5%ブドウ糖液の混合比率によって分類される低張性電解質輸液です。これらの輸液は、電解質濃度が血漿より低く設計されており、ブドウ糖を配合することで浸透圧を等張に調整しています。ブドウ糖は体内で代謝されて水となるため、結果的に低張液として機能し、細胞内液を含む全身への水分補給が可能となります。
各号液の特徴を理解するためには、ナトリウム(Na)とカリウム(K)の含有量に注目することが重要です。1号液から4号液は、それぞれ異なる病態や治療目的に応じて使い分けられており、医療現場では患者の状態に最も適した輸液を選択することが求められます。

輸液1号液の組成と開始液としての使用法

1号液は「開始液」とも呼ばれ、Na濃度77mEq/L、K濃度0mEq/Lの組成を持つ輸液製剤です。カリウムを含まないという特徴から、病態が不明確な初期段階や、カリウムの投与を避けたい患者に使用されます。
特に高カリウム血症を伴う脱水や、腎機能障害が疑われる患者の初期治療において重要な役割を果たします。1号液は細胞外液の約1/2の電解質濃度を有しており、生理食塩液と透析液を1:1で混合した組成に相当します。
小児医療において、1号液は脱水の開始液として頻繁に使用されます。年齢の低い患者では腎機能が未熟であることが多く、カリウムの調整が困難な場合があるため、まず1号液で水分と基本的な電解質を補給し、患者の状態を評価してから次の治療方針を決定することが一般的です。
📊 1号液の臨床応用例

  • 救急外来での初期輸液
  • 高カリウム血症合併例
  • 腎機能評価前の脱水治療
  • 小児の脱水初期治療

輸液2号液の脱水補給液としての特性

2号液は「脱水補給液」の別名を持ち、Na濃度77mEq/L、K濃度20mEq/Lの組成で設計されています。ナトリウムとカリウムの両方を補給したい脱水症例に適応され、1号液に比べてより積極的な電解質補正が可能です。
2号液は3号液1Lに10%生理食塩液20mLを加えた組成、または1号液1LにKCL20mLを加えた組成と等価であり、臨床現場では調製の便宜性も考慮されて使用されています。
この輸液は特に消化管からの喪失(嘔吐・下痢)や発汗による脱水で、ナトリウムとカリウムの両方が欠乏している症例に有効です。通常の脱水では細胞外液(主にナトリウム)と細胞内液(主にカリウム)の両方が失われるため、2号液による同時補正は理論的に合理的な選択肢となります。

 

🔬 2号液の適応疾患

  • 急性胃腸炎による脱水
  • 熱中症
  • 術前の脱水補正
  • 高浸透圧性脱水

輸液3号液の維持輸液としての役割

3号液は「維持輸液」または「基本輸液」と呼ばれ、Na濃度35mEq/L、K濃度20mEq/Lの組成を持つ最も汎用性の高い輸液です。この輸液は、体重50kgの患者に1日2000mLを投与することで、生体が必要とする基本的なナトリウムとカリウムの量を満たすように設計されています。
3号液の設計思想は、健康な人が1日に尿や不感蒸泄で失う水分と電解質を補うことにあります。水分や電解質は体内に長期間貯蔵できないため、毎日適切な量を補給する必要があり、3号液はこの生理学的要求を満たすBasic Allowanceとして機能します。
臨床的には、経口摂取が困難な患者の基本的な水分・電解質維持や、手術後の標準的な輸液療法として広く使用されています。3号液は細胞外液と細胞内液の両方に分布するため、全身の体液バランス維持に適しています。
⚕️ 3号液の臨床使用場面

  • 術後の標準的維持輸液
  • 経口摂取不能時の基本補給
  • 慢性期患者の水分・電解質維持
  • 栄養管理併用時のベース輸液

輸液4号液の術後維持液としての応用

4号液は「術後維持液」と称され、Na濃度35mEq/L、K濃度0mEq/Lの特殊な組成を持つ輸液です。この輸液はナトリウム投与は最小限に抑えつつ、カリウムの投与をゼロにしたい特殊な病態に使用されます。
4号液は1号液の電解質濃度を半分にした組成に相当し、1号液と糖液を1:1で混合した場合と同等の電解質含有量となります。この特性により、電解質の微調整が必要な症例や、腎機能が未熟な新生児の術後管理に適用されることがあります。
特に新生児や乳児では、腎機能の未熟性によりカリウムの排泄能力が限定的であるため、4号液による慎重な電解質管理が重要となります。また、心疾患や腎疾患を有する患者において、カリウム負荷を避けつつ基本的な水分補給を行う際にも使用されます。

 

🍼 4号液の特殊適応

  • 新生児・乳児の術後管理
  • 心不全合併例の慎重な輸液
  • 腎機能低下時の維持輸液
  • カリウム制限が必要な病態

輸液選択における成分比較と臨床判断

各号液の成分組成を比較すると、Na濃度では1・2号液(77mEq/L)が3・4号液(35mEq/L)の約2倍の濃度を有し、K濃度では2・3号液(20mEq/L)が含有し、1・4号液(0mEq/L)は含まない設計となっています。
この組成の違いは、それぞれの輸液が想定する臨床状況と密接に関連しています。急性期の脱水治療では高濃度のナトリウム補給が必要なため1・2号液が選択され、慢性期の維持輸液では生理学的な電解質バランスを重視した3号液が標準的に使用されます。
浸透圧の観点では、すべての号液がブドウ糖の添加により等張に調整されていますが、ブドウ糖の代謝後は実質的に低張液として機能します。このため、細胞外液補充液(生理食塩液、リンゲル液)と異なり、細胞内液を含む全身の水分補給が可能となります。
📋 輸液選択の決定因子

  • 急性期 vs 慢性期
  • 脱水の種類と重症度
  • 腎機能・心機能の状態
  • 年齢と基礎疾患
  • 併用薬剤との相互作用

現代の輸液療法では、目標指向型輸液(Goal-Directed Fluid Therapy)の概念が重要視されており、単純な組成の違いだけでなく、患者の血行動態や臓器機能に基づいた個別化された輸液選択が求められています。各号液の特性を理解した上で、患者の病態に最も適した輸液を選択し、適切なモニタリングのもとで投与することが、現在の標準的な医療として確立されています。