チアゾリジン系薬は、核内受容体であるPPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)を標的とした薬剤群です。この薬剤群は「チアゾリジンジオン系PPAR作動薬」とも呼ばれ、主に2型糖尿病におけるインスリン抵抗性の改善を目的として使用されています。
PPARγ受容体の活性化により、以下のような作用が発現します。
興味深いことに、最近の研究では、チアゾリジン系薬がPPARγに依存するものの、その転写調節作用によらないシグナル伝達経路も存在することが明らかになっています。この経路では、Src-EGF受容体-ERK経路が活性化され、腎臓の近位尿細管におけるNaHCO₃の再吸収が亢進されることが判明しており、これが浮腫の副作用メカニズムの一部と考えられています。
PPARγの転写調節作用によらないシグナル伝達経路に関する詳細な研究結果
現在、日本で使用可能なチアゾリジン系薬剤の種類と特徴を以下に示します。
現在使用可能な薬剤
過去に使用されていた薬剤
開発中・研究段階の薬剤
これらの薬剤はいずれも「-glitazone」というステム(語幹)を持つのが特徴です。薬剤名からチアゾリジン系薬であることを識別することができます。
チアゾリジン系薬の使用において、医療従事者が特に注意すべき副作用は以下の通りです。
重篤な副作用 ⚠️
使用上の注意点
特に興味深い発見として、浮腫の機序には種差があることが最近の研究で明らかになっています。マウスでは恒常的に活性化しているSrc-EGF受容体経路がPPARγの非転写シグナルを阻害するため、チアゾリジン系薬による尿細管での再吸収亢進が認められません。しかし、ラット、ウサギ、ヒトでは明確な再吸収亢進作用が観察されており、これが臨床での浮腫発現の重要なメカニズムの一つと考えられています。
ピオグリタゾンの薬価情報(2025年4月23日版)は以下の通りです。
先発品(アクトス)
規格 | 薬価 | メーカー |
---|---|---|
15mg錠 | 23.8円/錠 | 武田テバ薬品 |
30mg錠 | 45.8円/錠 | 武田テバ薬品 |
15mgOD錠 | 23.8円/錠 | 武田テバ薬品 |
30mgOD錠 | 45.8円/錠 | 武田テバ薬品 |
主要な後発品 💰
最も安価な後発品
15mg錠では日本薬品工業の「ピオグリタゾンOD錠15mg『NPI』」と鶴原製薬の製品が10.4円/錠で最安値となっています。30mg錠では多くのメーカーが21円/錠で横並びとなっており、価格競争が激化している状況が伺えます。
チアゾリジン系薬は、単独療法だけでなく他の血糖降下薬との併用療法や配合薬としても使用されています。
主要な配合薬 🤝
併用療法の利点
併用療法においては、各薬剤の副作用プロファイルを十分に理解し、患者の状態に応じた適切な組み合わせを選択することが重要です。特に心不全や肝機能障害のリスクファクターを持つ患者では、より慎重な経過観察が必要となります。
糖尿病リソースガイドでのチアゾリジン系薬詳細情報
近年のエビデンスでは、チアゾリジン系薬の心血管アウトカムに関する新たな知見も蓄積されており、適応患者の選択においてはこれらの最新情報も考慮に入れる必要があります。また、脂肪細胞分化への影響を利用した再生医療分野での応用研究も進んでおり、糖尿病治療以外の領域での可能性も模索されています。