日医工ヘパリン類似物質油性クリームの特徴と効果

日医工ヘパリン類似物質油性クリームは、皮脂欠乏症やアトピー性皮膚炎など乾燥性皮膚疾患の治療に用いられる保湿剤です。保湿・血行促進・抗炎症の3つの作用により肌のバリア機能を改善しますが、他の製剤との違いや正しい使用方法をご存知ですか?

日医工ヘパリン類似物質油性クリーム

この記事で分かること
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製剤の特徴

油中水型クリームの構造により高い保湿力と皮膚保護効果を発揮

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作用メカニズム

保湿・血行促進・抗炎症の3つの薬理作用による治療効果

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臨床での使い分け

他の剤形との違いと適応疾患に応じた選択基準

日医工ヘパリン類似物質油性クリームの基本情報

 

 

日医工ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%は、ヘパリン類似物質3.0mgを1g中に含有する外用保湿剤です。本剤は先発医薬品であるヒルドイドソフト軟膏0.3%の後発医薬品として承認されており、健康成人を対象とした生物学的同等性試験において皮表角層水分含有量の変化量を指標とした評価で同等性が確認されています。nichiiko+1
有効成分であるヘパリン類似物質は、人体に存在するヘパリンと類似した構造を持つムコ多糖類の一種です。硫酸基、カルボキシル基、水酸基など多くの親水基を持つため、水分子を引き寄せて保持する高い親水性と保水性を示します。この特性により角質層への水分補給と長時間の保湿効果が期待できます。ic-clinic-ueno+2
本剤の性状は白色のクリーム剤で、においはないかまたはわずかに特異なにおいがあります。基剤の種類は油中水型の乳剤性であり、これが製剤特性に大きく影響しています。薬価は1gあたり4.5円(2025年4月時点)と比較的安価であり、医療経済的な観点からも使いやすい製剤となっています。qlife+2

日医工ヘパリン類似物質油性クリームの作用機序と薬理効果

ヘパリン類似物質の作用機序は完全には解明されていませんが、複数の薬理作用が確認されています。主要な作用として保湿作用、血行促進作用、抗炎症作用の3つが挙げられます。shionogi-hc+4
保湿作用のメカニズムは、ヘパリン類似物質が持つ親水性と保水性によるものです。皮膚に塗布すると角質層まで浸透し、水分を引き寄せて保持することで高い保湿効果を発揮します。この作用により角質層の水分保持機能が改善され、皮膚のバリア機能が正常化します。尿素と比較した研究では、ヘパリン類似物質の方がより高い保湿効果を示すことが報告されています。maruho+4
血行促進作用については、ウサギを用いた水素クリアランス法による実験で皮膚組織血流量の増加が確認されています。血流改善により皮膚の新陳代謝が促進され、肌のターンオーバーの正常化や栄養供給の改善が期待できます。この作用は凍瘡や血行障害に基づく疼痛の改善に寄与します。carenet+5
抗炎症作用はヒアルロニダーゼの働きを抑制することによるとされています。モルモットを用いた実験で抗炎症作用が確認されており、乾燥による炎症を伴う肌荒れの治療に有用です。また、血液凝固時間を延長する血液凝固抑制作用も有しており、血栓性静脈炎や痔核への適応もあります。nittomedic+4

日医工油性クリームと他剤形の使い分け

ヘパリン類似物質製剤には油性クリーム(油中水型)、クリーム(水中油型)、ローションなど複数の剤形が存在し、それぞれ特徴が異なります。医療従事者として適切な剤形選択は重要な臨床判断です。mt-pharma+2
油性クリーム(油中水型)は、油の中に水が分散している構造を持ちます。先発品ではヒルドイドソフト軟膏がこのタイプに該当します。油性クリームの最大の特徴は高い保湿力と皮膚保護効果です。水で流れ落ちにくく、皮膚表面に油性の保護膜を形成するため、水分蒸発を効果的に防ぎます。テクスチャーはやや硬めで伸びは控えめですが、べたつきが強く患部を長時間カバーできます。乾燥が強い秋冬季や、重度の皮脂欠乏症患者に適しています。ogikubo-shonika+5
一方、水中油型クリームは水の中に油が分散している構造です。伸びが良く塗りやすいため使用感に優れ、べたつきが少なくさっぱりした感触が特徴です。水で洗い流せる点も利点ですが、保湿力は油性クリームより劣ります。広範囲の皮膚疾患や、べたつきを嫌う患者、汗をかきやすい季節に適しています。famil-s-wakuwaku+5
軟膏は油性基剤のみで構成され、水を含まないため最も保湿力が高く刺激が少ない特徴があります。しかし、べたつきが最も強いため使用感は劣ります。ローションは最も質感が軽くさっぱりしており、広範囲に塗布しやすいですが、保湿力は最も低くなります。hashimoto-c+4

日医工ヘパリン類似物質油性クリームの適応症と臨床応用

本剤の適応症は、皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後硬結並びに注射後疼痛)、血栓性静脈炎(痔核を含む)と多岐にわたります。rad-ar+1
皮脂欠乏症は最も頻度の高い適応であり、特に高齢者や冬季に多く見られます。角質層の水分保持機能低下により皮膚の乾燥、落屑、掻痒を呈します。本剤の継続使用により角質層の水分量が増加し、バリア機能が回復することで症状改善が期待できます。アトピー性皮膚炎に伴う乾皮症にも保険適用が認められており、ステロイド外用薬との併用でより効果的な治療が可能です。tokyo-online-clinic+6
進行性指掌角皮症(主婦湿疹)は手指の乾燥と角化を特徴とする疾患です。臨床試験では本剤を1日2~3回、4週間塗布することで症状改善が確認されています。血行促進作用により栄養供給が改善され、角化の正常化が促されます。fujita-keisei+2
凍瘡(しもやけ)は寒冷刺激による血行障害が原因で発症します。本剤の血行促進作用により患部の血流が改善し、疼痛や腫脹の軽減が期待できます。ただし、出血している創傷への使用は禁忌であり注意が必要です。carenet+3
肥厚性瘢痕やケロイドに対しては、血行促進作用と線維芽細胞増殖抑制作用により瘢痕の成熟を促進し、症状改善に寄与します。傷跡やニキビ跡のケアにも応用されますが、炎症を伴う活動性病変への使用は悪化のリスクがあるため慎重な判断が求められます。ic-clinic-ueno+1
アトピー性皮膚炎における保湿剤の併用効果について詳細な研究報告

日医工ヘパリン類似物質油性クリームの使用方法と注意点

本剤は通常、1日1~数回適量を患部に塗擦またはガーゼ等に伸ばして貼付します。最適な塗布タイミングは入浴後や洗顔後など、皮膚が水分を含んで潤っている時です。肌が乾燥する前に塗布することで水分を閉じ込め、保湿効果が高まります。shionogi-hc+4
塗布量の目安として、手のひら2枚分の広さに対して人差し指の先端から第一関節までの1/2の長さ分(約0.5g、1FTU)が推奨されます。塗布後の皮膚が軽くテカる程度が適量です。患部に薬剤を置いてから、手のひらでこすらずやさしく皮膚のしわに沿って伸ばします。強くすり込むと皮膚を傷つける可能性があるため注意が必要です。shionogi-hc
顔への使用も可能ですが、目や口の周り、粘膜への塗布は避けてください。化粧水や美容液で肌を整えた後、乳液やクリームの代わりとして使用できます。最後にハンドプレスでなじませると効果的です。ic-clinic-ueno+1
禁忌事項として、出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)の患者には投与しないでください。血液凝固抑制作用により出血を助長する恐れがあります。また、僅少な出血でも重大な結果を招く恐れのある患者も禁忌です。meds.qlifepro
主な副作用として、皮膚炎、掻痒、発赤、発疹、潮紅などが報告されています。これらの症状が現れた場合は使用を中止し、医師に相談する必要があります。妊娠中や小児への使用も可能ですが、小児への使用は保護者の指導監督のもとで行い、保管時は小児の手に届かない場所に置いてください。qlife+3
汗や汚れを落とした清潔な皮膚に使用することも重要です。継続使用により効果が期待できるため、症状が改善しても医師の指示に従って使用を続けることが推奨されます。kenei-pharm+2

日医工製剤と先発品の生物学的同等性および医療経済的側面

日医工ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%は、先発医薬品であるヒルドイドソフト軟膏0.3%の後発医薬品として開発されました。両製剤の生物学的同等性は厳密な試験により確認されています。ic-clinic+1
生物学的同等性試験では、健康成人男子の左右前腕屈側部にそれぞれ50μL単回塗布し、塗布部位の皮表角層水分含有量を経時的に測定しました。薬物塗布前後における水分量の変化量-時間曲線下面積(AUC)を評価項目として90%信頼区間法で統計解析した結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認されました。具体的には、日医工製剤のAUC0→10は98.2±35.1、ヒルドイドソフト軟膏は101.9±35.8(a.u.・hr、Mean±S.D.、n=40)でした。carenet
有効成分および主要な添加物の組成はほぼ同一ですが、細かな添加物の違いにより塗り心地や肌への馴染み方には個人差が生じる可能性があります。先発品であるヒルドイドには添加物としてサラシミツロウが含まれており、これが粘性や安定性の保持、使用感に関与していると考えられています。prtimes+1
医療経済的観点から、後発医薬品である日医工製剤は先発品より薬価が低く設定されています。2025年4月時点で、日医工製剤の薬価は1gあたり4.5円、先発品のヒルドイドソフト軟膏は18.20円と約4倍の価格差があります。この価格差により、医療費削減に貢献できる製剤です。yakka-search+1
近年、ヘパリン類似物質製剤を含むOTC類似薬の保険適用見直しが議論されています。政府は2026年度以降、市販薬と成分・効能が類似する医療用医薬品の保険適用を段階的に縮小する方針を示しており、ヘパリン類似物質製剤も対象となる可能性があります。医療従事者としては、適切な適応判断と保険診療の枠組み内での処方が今後より重要になると考えられます。note+3
<表:主要なヘパリン類似物質製剤の特性比較>

剤形 基剤タイプ 保湿力 使用感 適した状況
油性クリーム(日医工、ヒルドイドソフト軟膏) 油中水型 非常に高い べたつき強め 重度乾燥、秋冬季、局所疾患
クリーム(ヒルドイドクリーム) 水中油型 中程度 さっぱり 広範囲、季節問わず
ローション 乳液・化粧水状 低い 最もさっぱり 広範囲、夏季、毛髪部

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ヒルドイドの薬効薬理に関する詳細情報(マルホ株式会社医療関係者向けサイト)

 

 




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