JAK3だけを選択的に阻害しても、必ずJAK1とペアで動くため、JAK1を同時に抑えないと免疫抑制が不十分になります。 hakatara(http://www.hakatara.net/images/no22/22-7.pdf)
| 種類 | 主な発現部位 | 主な役割 |
|---|---|---|
| JAK1 | 広範な細胞(ほぼ全身) | 免疫応答・炎症・リンパ球分化 |
| JAK2 | 広範な細胞(造血細胞含む) | 免疫応答・炎症・血球分化・赤血球産生 |
| JAK3 | ほぼリンパ球・造血細胞のみ | リンパ球の生存・活性化・分化 |
JAK1とJAK2は全身の幅広い細胞に発現しているのに対し、JAK3の発現はほぼリンパ球に限られます。 つまり、JAK3阻害薬は理論上「リンパ球への選択的な免疫抑制」を実現できるとされましたが、後述のように実際はそう単純ではありません。 tokushima-u.repo.nii.ac(https://tokushima-u.repo.nii.ac.jp/record/2011775/files/tcsdr_31_2_1.pdf)
各JAKが担当するサイトカイン受容体の組み合わせは決まっています。 JAK3は必ずJAK1とペアを組み、IL-2・IL-4・IL-7・IL-9・IL-15・IL-21といったγ鎖共通受容体(common γ鎖)を利用するサイトカインのシグナル伝達を担います。 これらのサイトカインは特にリンパ球の活性化・増殖・生存に不可欠です。 note(https://note.com/takenouchi14/n/n892edc67ed7c)
JAK2が関与する主なサイトカインはエリスロポエチン(EPO)やトロンボポエチン(TPO)など、赤血球・血小板産生に直結するものが含まれます。 JAK1はインターフェロン(IFN)やIL-6経路にも幅広く関与します。 medicalnote(https://medicalnote.jp/diseases/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E6%80%A7%E9%AA%A8%E9%AB%84%E7%B7%9A%E7%B6%AD%E7%97%87)
以下に主なサイトカイン経路とJAKの対応をまとめます。
JAK3がJAK1とのみペアリングするという点は臨床上きわめて重要です。 JAK3を選択的に阻害しようとすると、JAK1側も同時に抑制しなければシグナルが遮断されません。実際、JAK3選択的とされる薬剤でもJAK1依存性の免疫抑制が並行して起こっています。 hakatara(http://www.hakatara.net/images/no22/22-7.pdf)
各JAKが欠損した場合の影響は、その役割を如実に示しています。結論は役割の違いそのものです。
JAK3を欠損したヒトでは、NK細胞とTリンパ球の欠損を伴う重症複合免疫不全症(SCID)を発症します。 これはJAK3がリンパ球の発生・生存にいかに不可欠かを示す証拠です。JAK3欠損でSCIDを発症するのは人間だけで、JAK3ノックアウトマウスでもT細胞・B細胞・NK細胞すべてに欠損がみられます。 note(https://note.com/takenouchi14/n/n892edc67ed7c)
JAK2の場合、赤血球・血小板産生に直結する経路を担うため、骨髄増殖性腫瘍(MPN)ではJAK2 V617F変異が病態の中心となっています。 真性赤血球増加症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症の3疾患に共通してこの変異がみられます。 hosp.juntendo.ac(https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/ketsuekinaika/disease/disease04.html)
JAK1については広範な発現のため、欠損すると胎生致死となることが動物実験で示されています。 これが臨床上「JAK1完全阻害」が難しい理由の一つです。 jyseleca(https://www.jyseleca.jp/ra/jak_stat_mechanism/ra_expert/movie/part2)
JAK1〜3の違いを理解すると、各JAK阻害薬の特性が見えてきます。これは使えそうな知識です。
| 薬剤名 | 阻害するJAK | 主な適応 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| トファシチニブ(ゼルヤンツ) | JAK1・JAK3 | RA、UC、PsA | 最初のJAK阻害薬 |
| バリシチニブ(オルミエント) | JAK1・JAK2 | RA、アトピー、COVID-19 | JAK3依存性免疫抑制を回避 |
| ウパダシチニブ(リンヴォック) | JAK1選択的(JAK2も一部) | RA、UC、PsA、AD | JAK1高選択性 |
| フィルゴチニブ(ジセレカ) | JAK1選択的 | RA、UC | JAK2への影響が最も弱い |
| ペフィシチニブ(スマイラフ) | JAK1・2・3・TYK2(汎) | RA | 広範阻害 |
バリシチニブはJAK1とJAK2を選択的に阻害することで、JAK3依存性の免疫抑制を回避し、より良好な安全性プロファイルを示すとの報告があります。 一方、ウパダシチニブはJAK1選択性を謳いながらも基礎研究ではJAK2阻害作用も比較的強いとされており、純粋なJAK1選択性については議論が続いています。 chigasaki-localtkt(https://chigasaki-localtkt.com/jaksogaikusurinokuchoushousaihikaku/)
フィルゴチニブはJAK2への影響が3剤の中で最も弱く、JAK1に最も高い選択性を持ちます。 JAK2を強く阻害すると赤血球・血小板の産生経路にも影響するため、貧血リスクや血小板減少リスクが薬剤間で異なります。 koganei.tsurukamekai(https://koganei.tsurukamekai.jp/blog/janus_kinase_inhibitor2.html)
JAKの選択性が副作用プロファイルを左右するということですね。
関節リウマチ領域のJAK阻害薬全般について、最新の使用の手引きは日本リウマチ学会が公開しています。
日本リウマチ学会|関節リウマチ(RA)に対するヤヌスキナーゼ阻害薬使用の手引き(2025年版)
JAK阻害薬共通のリスクとして、帯状疱疹の発症増加が確認されています。 RA患者の帯状疱疹発症率はもともと10〜20件/1000人/年と一般人より高く、JAK阻害薬投与でさらに上乗せされます。 特にアジア人患者ではTNF阻害薬と比較して帯状疱疹発症率が有意に高く、播種性帯状疱疹などの重篤例の報告もあります。 m3(https://www.m3.com/clinical/news/936344)
これはJAK1・JAK3が担うγ鎖共通受容体系(IL-2・IL-7・IL-15経路)の抑制が、ウイルス特異的T細胞の維持に影響するためと考えられています。 つまり、JAK1またはJAK3を阻害する薬剤全般で、細胞性免疫を担うT細胞・NK細胞の機能維持が難しくなります。 note(https://note.com/takenouchi14/n/n892edc67ed7c)
帯状疱疹対策には3つの優先順位があります。
シングリックスは不活化ワクチンのため、免疫抑制中でも接種可能です。 帯状疱疹の早期治療には抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル・バラシクロビル)が有効で、これも投与前から患者に周知しておくと早期受診につながります。 ryumachi-jp(https://www.ryumachi-jp.com/pdf/tebiki_jak_250430.pdf)
JAK2阻害(バリシチニブ、JAK2関与薬)では造血系への影響(貧血、血小板減少、好中球減少)も監視が必要です。 投与開始後は定期的な血算チェックが原則です。 a-connect.abbvie.co(https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/rinvoq/RINVOQ_useguide2.pdf)
JAK阻害薬の選択性と主要副作用の詳細な比較は以下のサイトが参考になります。
JAK阻害薬の一覧・主要薬剤特徴詳細比較(茅ヶ崎地域医療連携サイト)
JAK1〜3の生物学的な役割とJAK阻害薬の臨床応用をより深く理解するための学術解説は以下を参照してください。