H2受容体拮抗薬は現在日本で使用可能な薬剤として、以下の6種類が挙げられます。
なお、ラボルチジンは発がん性のため廃止され、ニペロチジンは肝障害性のため回収となった歴史があります。
H2受容体拮抗薬の薬物動態には大きな違いがあり、臨床での薬剤選択に重要な影響を与えます。
腎排泄型薬剤の特徴
ラニチジン塩酸塩、ファモチジン、ニザチジンでは尿中未変化体排泄率が高く、消失過程において腎機能の影響が大きいと考えられています。これらの薬剤では腎機能に応じた用量調節が必要となります。
肝代謝型薬剤の特徴
ラフチジンは例外的に主として肝臓で代謝されるため、腎機能の影響は小さいとされています。この特徴により、腎機能障害患者においても用量調節の必要性が低いという利点があります。
高齢者における投与上の注意
高齢者では腎機能が低下していることが多いため、腎排泄型のH2受容体拮抗薬では血中濃度が持続するおそれがあります。そのため、減量するか投与間隔を延長するなど慎重な投与が必要です。
H2受容体拮抗剤は腎機能障害時に特に注意が必要で、PPIは肝機能障害時に注意が必要という薬物動態学的な違いがあります。
H2受容体拮抗薬は胃の壁細胞にあるヒスタミンH2受容体を遮断することによって胃酸分泌を抑制します。
選択的な作用
H2受容体の選択性は非常に重要で、アレルギー反応の治療に使用される典型的な抗ヒスタミン薬によってブロックされるヒスタミン1型受容体にほとんど影響を与えません。
包括的な胃酸分泌抑制
H2拮抗薬はヒスタミンだけでなく、ガストリン、アセチルコリンによる胃酸分泌も抑制する特徴があります。この包括的な抑制作用により、強力な胃酸分泌抑制効果を発揮します。
具体的な抑制効果
ファモチジン20mg経口投与により、基礎分泌および各種刺激剤投与時の2時間胃酸分泌量をそれぞれ71.6~99.6%抑制し、ペプシン分泌量を29.5~96.9%抑制することが報告されています。
H2受容体拮抗薬は一般的に副作用が少ない薬剤として知られていますが、重篤な副作用も報告されています。
重大な副作用
肝障害のリスク
4つのH2受容体ブロッカーはすべて、臨床的に明らかな急性肝障害のまれな症例に関与しており、ほとんどの場合、ラニチジンとシメチジンに関連していることが報告されています。
薬物相互作用
シメチジンは他薬剤との相互作用が比較的多く、薬物代謝酵素の阻害により他の薬剤の血中濃度に影響を与える可能性があります。
H2受容体拮抗薬の選択においては、患者の全身状態、腎機能、併用薬、疾患の重症度を総合的に評価する必要があります。
腎機能に基づく選択
併用薬との相互作用回避
シメチジンは薬物代謝酵素阻害作用があるため、多剤併用例では避けることが推奨されます。ファモチジンやニザチジンは相互作用のリスクが比較的低いとされています。
プロトンポンプ阻害薬との比較
現在では、H2受容体拮抗薬を上回る効果を示すプロトンポンプ阻害薬(PPI)が登場しており、より強力な胃酸分泌抑制が必要な場合にはPPIが選択されることが多くなっています。
服薬タイミングの最適化
胃酸の分泌は特に夜間高まるため、就寝前の服用が効果的とされています。また、効果の持続時間が長く、服用回数が少なくて済むという利点があります。
医師のフォローを受けながら、H2受容体拮抗薬単独での治療だけでなく、防御システムの維持を図ることが根治のために重要です。自覚症状がなくなったからといって薬物を中断すると再発のリスクが高いため、医師・薬剤師の指示に従った継続的な治療が必要となります。