ロコモティブシンドロームとは何か症状から予防まで簡単に解説

ロコモティブシンドロームとは何か、症状・診断基準・予防法を医療従事者向けに簡単に解説します。国内推計4,700万人の"国民病"、あなたは患者にどう説明していますか?

ロコモティブシンドロームとは何か症状から予防まで簡単に解説

50代の看護師の約65%が、すでにロコモ該当者です。


この記事でわかること
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ロコモの定義と原因

「運動器の障害により移動機能が低下した状態」を指す概念で、骨・筋肉・関節・神経が複合的に関わります。

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ロコモ度テストによる診断基準

立ち上がりテスト・2ステップテスト・ロコモ25の3つで、ロコモ度1〜3を段階的に判定できます。

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予防・改善の具体的方法

ロコトレ(片脚立ち・スクワット)と栄養バランスの取れた食事が、ロコモの予防と回復に有効です。


ロコモティブシンドロームとは何か:定義と基本概念を簡単に整理


ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)とは、骨・関節・筋肉・神経などの「運動器」の障害によって、立つ・歩くといった移動機能が低下した状態を指します。2007年に日本整形外科学会が初めて提唱した概念で、和名は「運動器症候群」です。「ロコモ」はその略称として広く使われています。


「ロコモティブ(locomotive)」は英語で「移動能力を持つ」という意味です。つまりロコモとは、その移動能力が不足・低下した状態を表しています。加齢だけでなく、生活習慣・疾患・疼痛なども複合的に絡み合い、放置するほど要介護リスクが高まります。








原因の分類 代表的な疾患・状態
運動器疾患 変形性膝関節症骨粗鬆症脊柱管狭窄症関節リウマチ
加齢による機能低下 下肢筋力低下、バランス機能低下、関節可動域制限
痛みによる活動制限 慢性腰痛、膝痛による活動量低下、廃用性筋萎縮


特に見落とされがちなのが、「痛みによる活動制限」です。患者さんが痛みをかばって動かなくなる→筋力低下→さらに痛みが増す、という悪循環がロコモを加速させます。これが基本です。


医療従事者として患者に説明する際は、「年をとったら仕方ない」という誤解を解くことが第一歩です。適切に対処すれば移動機能は回復可能であり、それがロコモの最大の特徴でもあります。


参考情報:日本整形外科学会公式ロコモサイトでは、定義・メカニズム・ロコモ度テスト一式が公開されています。


ロコモを知ろう|ロコモONLINE 日本整形外科学会公式


ロコモティブシンドロームの規模:推計4,700万人という国民病の実態

ロコモの推計患者数(予備軍含む)は、国内で約4,700万人とされています。これは高血圧の有病者数(約4,300万人)や、糖尿病(疑い含む)の有病者数(約2,000万人)を上回る規模です。


4,700万人という数字をイメージしやすくすると——東京都の人口が約1,400万人ですから、東京都民が約3都分以上いるということになります。日本国民のおよそ3人に1人が何らかのロコモリスクを抱えている計算です。


さらに、ロコモの原因疾患に深く関わる3つの疾患の推計患者数(40歳以上)は以下のとおりです。



  • 🦷 変形性腰椎症:約2,790万人

  • 🦵 変形性膝関節症:約2,530万人

  • 🦴 骨粗鬆症:約1,300万人


注目すべきは、要支援・要介護になった主な原因の内訳です。「骨折・転倒」「関節疾患」「高齢による衰弱」を運動器の障害としてまとめると全体の約36%を占め、原因の第1位になります。脳血管障害(約18.5%)や認知症(約15.8%)よりも多いのです。意外ですね。


医療従事者がこのデータを知っておくことで、患者や家族への説明に具体性が生まれます。「ロコモは転倒して初めて問題になるのではなく、今この瞬間から進行している」という視点を持てるかどうかが、早期介入のになります。


参考情報:ロコモの患者数・要介護原因の統計データが整理されています。


ロコモティブシンドローム/サルコペニア/フレイル|日本生活習慣病予防協会


ロコモティブシンドロームの診断:ロコモ度テストの3段階チェックを簡単に理解する

ロコモかどうかの判定には「ロコモ度テスト」が用いられます。テストは次の3種で構成されており、それぞれが独立した評価軸を持っています。



  • 📐 立ち上がりテスト:片脚または両脚で指定された高さの台から立ち上がれるかで下肢筋力を評価

  • 👣 2ステップテスト:できる限り大股で2歩歩き「2歩幅÷身長」で2ステップ値を算出

  • 📝 ロコモ25:運動器の痛みや日常生活の不自由さに関する25問のアンケート


これらの結果を組み合わせて、以下の3段階で判定します。








判定 状態 2ステップ値の目安 ロコモ25スコア
ロコモ度1 移動機能の低下が始まっている 1.1以上〜1.3未満 7点以上〜16点未満
ロコモ度2 移動機能の低下が進行している 1.1未満 16点以上〜24点未満
ロコモ度3 社会参加に支障をきたしている 0.9未満 24点以上


ロコモ度3は「運動器が原因の身体的フレイル」に相当する段階であり、整形外科専門医による診療が強く推奨されます。自立した生活ができなくなるリスクが非常に高い状態です。


大規模調査(ROADスタディ)によると、ロコモ度1該当の有病率は全体の約69.8%、ロコモ度2は約25.1%です。つまり、外来に来る中高年患者の多くはすでにロコモ度1以上にある可能性があります。ロコモ25は無料・公開情報なので、指導場面で活用できます。


参考情報:ロコモ度テストの各判定基準と具体的な実施方法が解説されています。


ロコモ度判定方法|ロコモONLINE 日本整形外科学会公式


ロコモ・フレイル・サルコペニアの違いを簡単に整理:医療従事者が押さえる3つの概念

ロコモ・フレイル・サルコペニアは、臨床現場でしばしば混同されます。整理しておくと、指導や説明が格段にスムーズになります。


まず概念の範囲を整理すると、ロコモは「運動器の障害による移動機能低下」を指し、主に整形外科的な視点の概念です。サルコペニアは「加齢による全身の筋肉量・筋力の低下」に焦点を当てた概念で、ロコモの原因の一つになります。そしてフレイルは「身体的・精神的・社会的な複合的虚弱状態」を指す最も広い概念です。



  • 🏋️ サルコペニア:筋量・筋力の低下→ロコモの一因になる

  • 🦿 ロコモ:運動器全体の障害→移動機能の低下

  • 🌡️ フレイル:身体・精神・社会すべての機能低下→ロコモはフレイルの前段階


関係性のポイントは「サルコペニア→ロコモ→フレイル」という進行の流れです。ロコモはフレイルよりも人生の早い段階から始まり、身体的フレイルの手前の状態として位置づけられます。


3つを区別できると何が得になるでしょうか?アプローチの入口が変わります。サルコペニアならまず筋量評価と栄養介入、ロコモなら運動器の痛みへの対処と筋トレ、フレイルなら多職種連携での包括的支援——と、介入の優先順位が変わります。つまり概念の整理が、質の高いケアに直結します。


参考情報:フレイル・サルコペニア・ロコモの相互関係と有病率データが詳しくまとめられています。


ロコモティブシンドロームとフレイル、サルコペニアの有病率|持田製薬


ロコモティブシンドロームの予防と改善:ロコトレと栄養で移動機能を維持する方法

ロコモ対策の基本は「運動」と「食事」の2本柱です。難しい機器や特別なジムは必要ありません。


日本整形外科学会が推奨する「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」は、次の2種類だけで構成されています。



  • 🦵 片脚立ち:つかまる物の近くで、床につかない程度に片足を上げる。左右1分間ずつ、1日3回

  • 🏋️ スクワット:肩幅より少し広めに足を広げ、つま先を30度外向きに。お尻を後ろに引くように深く腰を下ろす。5〜6回を1日3回


片脚立ちはバランス能力を、スクワットは下肢筋力をターゲットにしています。これだけで構いません。スポーツ庁の調査では、ほぼ毎日運動する50歳の人は運動習慣のない30歳の人より体力テストの点数が高いというデータもあります。継続こそが条件です。


食事面では、以下の栄養素を意識することが重要です。



  • 🥩 たんぱく質:筋肉の材料。肉・魚・卵・大豆製品から積極的に摂取

  • 🥛 カルシウム:骨の強化。乳製品・小魚・緑黄色野菜から摂取

  • ☀️ ビタミンD:カルシウムの吸収を助ける。鮭・しらす・きのこ類、日光浴も有効

  • 🥦 ビタミンK骨質の維持。納豆・キャベツ・ブロッコリーに豊富


医療従事者として患者にアドバイスする際の場面と順番を整理すると、「まずロコモ度テストで現状確認→痛みがあれば優先的に治療→ロコトレと食事指導を同時並行」が基本の流れです。飲酒過多や喫煙は骨粗鬆症リスクを高めるため、生活習慣全体を俯瞰する姿勢も必要になります。


患者がロコトレの実施頻度を管理しやすくするツールとして、日本整形外科学会のロコモONLINEサイトにある「ロコトレ動画」を外来で紹介するだけで、行動につながりやすくなります。これは使えそうです。


参考情報:ロコモ予防の具体的な運動・栄養指導内容が、一般向けにわかりやすくまとめられています。


ロコモティブシンドロームの予防|健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)


医療従事者こそ自身のロコモリスクを見直すべき理由:職場環境と腰痛の見えない関係

急性期病院に勤務する職員239名を対象とした調査(大西ら、2021年)では、全体の25.9%がロコモ該当者でした。驚くのはその内訳です。50代看護師のロコモ該当率は約65%に上り、40代(約23%)と比べて約3倍に急増しています。


看護師に特有の傾向として、40代までは筋力を使う業務(患者移乗・排泄介助など)によって下肢筋力がある程度維持されている一方、50代になると腰部への長年の負担が「ロコモ25」の自覚症状スコアに反映されてくるという構造が見えてきます。同調査では、看護師の50代における腰痛のJLEQ得点は40代の約2倍に増加しています。


厳しいところですね。つまり「忙しく体を動かしているから大丈夫」という感覚が、腰痛リスクを見えにくくしている可能性があります。


医師・技術職・事務職では、50代で「運動機能単独」の低下が顕著になります。これは座位時間が長い業務特性と1日の歩数の少なさが関係していると考えられています。職種によってロコモの現れ方が異なるため、セルフチェックの入口は「自分の職種で何が弱点か」を知ることから始まるといえます。


医療従事者が自身のロコモリスクを把握している——それ自体が、患者指導の説得力を高めます。ロコモ25は5分程度で自己評価できるため、職場の健康診断などで活用することを検討する価値があります。


参考情報:急性期病院職員を対象としたロコモ有病率と職種・腰痛との関係を論じた学術論文です。






ロコモティブシンドロームのすべて[本/雑誌] (日本医師会生涯教育シリーズ) / 中村耕三/監修 田中栄/監修 大江隆史/編集 葛谷雅文/編集 星野雄一/編集