短時間型副腎皮質ホルモンは生物学的半減期が8〜12時間と短く、天然の糖質コルチコイドに最も近い特性を持ちます。代表的な薬剤として、ヒドロコルチゾン(コートリル)と酢酸コルチゾン(コートン)があります。
ヒドロコルチゾン(コートリル)
注射用製剤
短時間型の最大の特徴は電解質作用が強いことです。これにより副腎皮質不全の補充療法に最適ですが、長期使用では血清カリウムの低下に注意が必要です。また、即効性があるためショック治療にも適しています。
中間型副腎皮質ホルモンは生物学的半減期が12〜36時間で、使用しやすさと効果のバランスが良く、臨床現場で最も汎用されています。
プレドニゾロン
プレドニゾロンは中間型の代表的薬剤で、多数のメーカーから製造されています。
メチルプレドニゾロン(メドロール)
メチルプレドニゾロンは抗炎症作用がヒドロコルチゾンの5倍と強力で、抗炎症療法や免疫抑制療法に広く使用されます。パルス療法にも適用されており、重篤な自己免疫疾患の治療に重要な役割を果たします。
注射用製剤
長時間型副腎皮質ホルモンは生物学的半減期が36〜54時間と長く、最強の抗炎症作用を持ちます。しかし、同時に受容体への結合が強く、下垂体副腎機能抑制も最強という特徴があります。
デキサメサゾン
長時間型の代表的薬剤で、前立腺がん治療においても重要な役割を果たします。デキサメサゾンはACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を介して副腎性アンドロゲン(男性ホルモン)を抑制し、抗腫瘍効果を示します。
外用製剤の分類
副腎皮質ホルモンの外用製剤も多数存在します。
これらの外用製剤は、皮膚炎や湿疹などの局所的な炎症性疾患に使用され、全身への影響を最小限に抑えながら局所的な抗炎症効果を発揮します。
近年、前立腺がん治療における副腎皮質ホルモンの役割が注目されています。内分泌療法が効かなくなった去勢抵抗性前立腺がんに対して、副腎皮質ステロイドは重要な治療選択肢となっています。
作用機序
副腎皮質ステロイドであるデキサメサゾンやプレドニゾロンは、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を介して副腎性アンドロゲン(男性ホルモンの5%を占める)を抑制します。これにより、精巣由来のテストステロンが除去された後でも残存する副腎由来の男性ホルモンを阻害し、抗腫瘍効果を発揮します。
女性ホルモンとの併用
女性ホルモン(エストロゲン)は、中枢性のアンドロゲン抑制効果と腫瘍細胞への直接作用による抗腫瘍効果を持ちます。副腎皮質ホルモンと女性ホルモンの併用により、多角的なホルモン療法が可能となります。
治療のコンビネーション例
前立腺がん治療では、以下のような組み合わせが行われます。
この多段階アプローチにより、がん細胞のホルモン依存性を段階的に遮断し、治療効果の向上が期待されています。
副腎皮質ホルモンの選択において、薬価は重要な考慮要素の一つです。同じ成分でも製造会社により価格差があります。
内服薬の薬価比較
注射薬の薬価比較
選択基準のポイント
特殊な適応での選択
トリアムシノロン(レダコート)は電解質作用がなく、食欲亢進作用も少ないため、体重増加傾向を示す患者に適しています。ただし、カリウム喪失作用があるため、ミオパシー(筋肉の病気)を起こしやすく注意が必要です。
デポ製剤の活用
デポ・メドロール(水懸注)は徐放性製剤として、関節内注射や筋肉内注射に使用されます。
これらの製剤は局所での持続的な抗炎症効果を期待でき、関節リウマチや変形性関節症の治療に有用です。
副腎皮質ホルモン治療薬の適切な選択には、患者の病態、重症度、治療目標、副作用リスク、経済性などを総合的に評価することが重要です。また、長期使用時には下垂体副腎機能抑制や感染症リスクの増加などの副作用に十分注意し、定期的なモニタリングが必要です。
厚生労働省の薬効分類表における副腎ホルモン剤(分類コード245)の位置づけも理解し、適切な処方と管理を行うことが医療従事者には求められています。