骨折リエゾンサービスの診療報酬を正しく算定する方法

骨折リエゾンサービス(FLS)に関連する診療報酬「二次性骨折予防継続管理料」の算定要件・施設基準・注意点を徹底解説。算定漏れで損をしないために知っておくべきポイントとは?

骨折リエゾンサービスの診療報酬を正しく算定する方法

管理料1を届け出ている病院が、管理料3を算定しようとして届出を出し忘れると報酬がゼロになります。


この記事の3ポイント要約
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骨折リエゾンサービス(FLS)とは?

50歳以上の脆弱性骨折患者に対し、骨粗鬆症の評価・治療・フォローを多職種で継続する仕組み。再骨折率の低下と死亡率改善に直結します。

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二次性骨折予防継続管理料とは?

2022年度改定で新設。管理料1(1,000点)・2(750点)・3(500点)の3区分に分かれ、急性期→回復期→外来の連携を診療報酬で評価します。

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算定で損しないための注意点

管理料1・2の届出があっても管理料3は別途届出が必要。介護老人保健施設では管理料3は算定不可。院内転棟での管理料2も算定できないケースがあります。


骨折リエゾンサービス(FLS)が診療報酬に組み込まれた背景と意義


大腿骨近位部骨折は、日本で年間約20万人が発症する重篤な疾患です。しかも、これは単なる「骨折」で終わらない問題をはらんでいます。骨粗鬆症を有する患者が大腿骨近位部骨折を起こすと、1年以内の死亡率は約10〜14%に上るという報告(日本脆弱性骨折ネットワーク 2022年データ)があります。がんや脳卒中と同様に、生命予後への影響が大きい疾患なのです。


さらに深刻なのが「骨折の連鎖」です。初回骨折を起こした患者は、その後わずか平均4.28年という短期間で再骨折を起こすリスクが著しく高まります。2012年の国内調査では、急性期病院のうち骨折後に骨粗鬆症治療を「必ず行う」と回答したのはたった約1割、回復期病院でも約2割に過ぎませんでした。つまり、骨折を治しても骨粗鬆症の治療に繋げられていないケースが圧倒的多数を占めていたわけです。


つまり構造的な問題です。この状況を変えるために、骨折リエゾンサービス(FLS:Fracture Liaison Service)という多職種連携の仕組みが海外から導入されました。「リエゾン」はフランス語で「連絡係・橋渡し役」を意味し、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・管理栄養士・医療ソーシャルワーカーなどが協働して患者をサポートします。


こうした医療的・社会的背景を受け、2022年4月の診療報酬改定でついに「二次性骨折予防継続管理料」が新設されました。FLSという臨床的な取り組みが初めて診療報酬として評価された、画期的な改定です。その後2024年度の改定でも算定対象の拡大が行われており、制度としての重要性はさらに高まっています。


参考:二次性骨折予防継続管理料の詳細な解説(日本骨粗鬆症学会)
http://www.josteo.com/medical/secondary/


骨折リエゾンサービスのクリニカルスタンダード:5つのステージとチーム体制

診療報酬の算定要件には「FLSクリニカルスタンダードに沿った適切な評価及び治療等」という文言が繰り返し登場します。では、このクリニカルスタンダードとは具体的に何を指すのでしょうか。


日本骨粗鬆症学会と日本脆弱性骨折ネットワーク(FFN-Japan)が共同で策定した「日本版 二次骨折予防のための骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」では、FLSの実施を5つのステージに整理しています。


| ステージ | 英語名 | 内容 |
|---|---|---|
| ステージ1 | Identification(特定)| 50歳以上の脆弱性骨折患者を可及的速やかに特定し、チームに周知 |
| ステージ2 | Investigation(評価)| DXA・FRAX・転倒リスク評価などで骨折後90日以内にリスク評価 |
| ステージ3 | Initiation(治療開始)| ガイドラインに基づく薬物治療転倒予防介入を速やかに開始 |
| ステージ4 | Integration(フォロー)| 退院後3〜4か月、1年後のフォローアップを継続 |
| ステージ5 | Information(教育)| 患者・家族・医療従事者への教育と情報提供を全ステージで継続 |


チームメンバーは医師・看護師・薬剤師・診療放射線技師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士・医療ソーシャルワーカーなど多職種にわたります。骨粗鬆症マネージャー(日本骨粗鬆症学会が認定する資格)がリエゾンサービスの中核を担う役割を果たすことも多く、チームの連携教育が強調されています。


ステージ5が重要です。これは他のステージと独立した単独の工程ではなく、ステージ1〜4のすべての流れに並走して継続的に行われるものです。患者・家族への骨折連鎖の危険性の説明、転倒予防・栄養改善の指導、さらには多職種連携教育や地域行政機関への啓発活動も含まれます。


なお、施設基準では「FLSクリニカルスタンダードおよび骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインを参照した上で、院内職員を対象とした研修会を年1回以上実施すること」が求められています。新たに届け出る施設でも、届出日から1年以内に研修会の開催が決まっていれば、要件を満たすとみなされます。これは知っておくべき運用です。


参考:FLSクリニカルスタンダード全文(名古屋掲載版)
https://www.nagoya-ekisaikaihosp.jp/content/wp-content/uploads/2023/06/fls_clinical.pdf


二次性骨折予防継続管理料の算定要件・点数・対象施設を完全整理

二次性骨折予防継続管理料は、管理料1・2・3の3区分で構成されています。それぞれの点数・算定タイミング・対象患者・対象施設は以下の通りです。


区分 点数 算定タイミング 主な対象施設(病棟)
管理料1 1,000点 入院中1回のみ 急性期一般入院基本料、地域一般入院基本料、7対1・10対1入院基本料(特定機能病院・専門病院)、有床診療所入院基本料、地域包括医療病棟入院料
管理料2 750点 入院中1回のみ 地域包括ケア病棟入院料、地域包括ケア入院医療管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料、回復期リハビリテーション入院医療管理料
管理料3 500点 月1回、初回算定月から1年限度 病院・クリニック(外来)


📌 管理料2・3を算定するためには、必ず他の医療機関で管理料1が算定されていることが前提です。連鎖の出発点が管理料1ということですね。


【医学管理として必要な評価(共通)】


管理料の算定に当たっては、以下の評価を実施することが求められています。


- 骨量測定(DXA 優先)
- 骨代謝マーカー
- 脊椎エックス線写真
- 転倒リスク評価(転倒リスク評価表など)
- 認知機能評価(例:MMSE)やサルコペニア評価も推奨
- 続発性骨粗鬆症との鑑別診断


これらが揃っていないと算定要件を満たさないため、確認が必要です。島根県立中央病院の調査では、制度開始直後の2022年4〜9月に大腿骨近位部骨折100例中8例(8%)で管理料1が算定されず、その原因の大半は「コスト入力漏れ(3例)」「検査漏れ(2例)」「処方漏れ(1例)」でした。算定漏れは病院の収益機会の損失に直結するという点で、体制整備が急務です。


参考:算定できなかった原因と対策(島根県中病医誌)
https://www.spch.izumo.shimane.jp/hospital/pr/igaku/igakuzassi-48-2.pdf


骨折リエゾンサービスで必ず確認したい算定の落とし穴と注意点

管理料の算定要件は一見シンプルに見えますが、実臨床では見落とされがちな「算定不可のケース」がいくつか存在します。これを知らないままでいると、届け出ていても収益が取れないという状況が発生します。痛いですね。


❌ 落とし穴① 院内転棟では管理料2は算定できない


管理料1を算定した患者が、同一の保険医療機関内の回復期病棟や地域包括ケア病棟へ転棟した場合、管理料2は算定できません。「特別の関係にある」医療機関への転院の場合も同様です。管理料2は、あくまで別施設へ転院して継続管理される患者に対するものです。系列病院間での転院も「特別の関係」に該当するため、注意が必要です。


❌ 落とし穴② 介護老人保健施設では管理料3は算定不可


退院後に介護老人保健施設(老健)へ移った患者には、管理料3は算定できません。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、介護老人福祉施設(特養)に入居した場合は外来受診扱いで算定が可能です。この区別は実務上かなり重要で、患者の退院先ごとに適否を確認する仕組みが必要です。


❌ 落とし穴③ 管理料3は別途届出が必要


管理料1・2の施設基準届出を既に行っている医療機関でも、管理料3を外来で算定したい場合は改めて届出を行う必要があります。「もう届け出ているから大丈夫」という思い込みが算定漏れの原因になります。ここだけは例外です。


❌ 落とし穴④ 同一月の同一日に管理料1・2と管理料3は併算定不可


管理料1または2を算定した同一月の退院後に外来を受診した場合、その同一月に管理料3は算定できません。月をまたいで退院した場合は算定可能なため、退院日と算定月の関係も把握しておく必要があります。


これらを防ぐために、先述の島根県立中央病院の事例では「手術チェックリストへのコスト入力欄の追加」「電子カルテの伝言板への算定対象患者の明示」「退院時のレセプト担当職員による点検フロー」を整備し、制度開始から6か月後には算定率100%を達成しました。算定体制の構築は、FLS推進と収益確保の両面から欠かせない取り組みです。


参考:二次性骨折予防継続管理料の算定要件(薬剤師向け解説)
https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_182/


2024年度改定で広がった算定対象と、薬剤師・クリニックが担う新たな役割

2024年(令和6年)度の診療報酬改定では、管理料1の算定対象となる入院料・病棟が拡大されました。新たに「有床診療所入院基本料」と「地域包括医療病棟入院料(新設)」が加わったことで、これまで算定できなかった施設でも取り組める環境が整いました。


これは使えそうです。特に、地域に根差した有床診療所が急性期の大腿骨近位部骨折手術を行っているケースや、高齢者医療を担う地域包括医療病棟を持つ施設にとって、新たな収益機会となります。


施設基準として必要な「専任の常勤薬剤師との連携体制」についても、重要な緩和措置があります。クリニックなど院内に常勤薬剤師を配置できない施設については、地域の保険医療機関・保険薬局との連携によって要件を満たすことが認められています。「薬剤師がいないからFLSは始められない」という思い込みは、実は正確ではありません。


管理料3の外来算定において薬剤師が果たす役割も大きいです。骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート製剤・抗RANKL抗体・副甲状腺ホルモン薬など)は服薬継続率が低い薬剤も多く、薬局薬剤師による処方後フォローアップが治療継続に大きく寄与します。FFN-J 2022年データでは、退院時の骨粗鬆症薬処方率は72.7%でしたが、受傷前の治療率はわずか18.3%でした。つまり、退院時に治療を始めた患者をいかに継続させるかが、再骨折防止のを握っています。


骨粗鬆症治療の継続率低下を防ぐためのアプローチとして、骨粗鬆症マネージャー制度(日本骨粗鬆症学会認定資格)の活用が挙げられます。医師・歯科医師を除く医療職(看護師・薬剤師・理学療法士など)が取得できるこの資格は、FLSの中核的役割を担う人材育成の仕組みとして設計されています。チームの中に骨粗鬆症マネージャーが1名いるだけで、介入の質と治療継続率が大きく変わることが報告されています。


参考:2024年度改定内容(アステラス医業経営情報)
https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/medical-information/management/pdfs/medicalmesa/2024/mesa_2024_Special04.pdf


骨折リエゾンサービスの効果を裏付けるデータと、他職種が知っておくべき独自視点

FLSの臨床的意義は、診療報酬が付いたことでより実証データが集まりやすくなっています。ここでは、現場の医療従事者が知っておくべき具体的な数字を整理します。


FFN-J 2022年データ(全国380施設・21,167例)によると、大腿骨近位部骨折患者の1年死亡率は13.9%でした。受傷後48時間以内に手術を行った群では12.3%、48時間以降では15.3%と、早期手術群で有意に低い結果が示されています。緊急整復固定加算・緊急挿入加算が48時間以内の手術を促す設計になっているのは、まさにこのエビデンスに基づいています。


骨粗鬆症治療継続率については、退院時72.7%、120日目70.7%、1年時68.8%という数字が示されており、治療が継続されている割合が比較的高く維持されています。これは二次性骨折予防継続管理料の加算導入により、急性期から治療を開始・継続する体制が整備された結果と考えられています。治療が継続されています。


また、骨折後の再診率・治療継続率の観点から重要なのが、「骨粗鬆症は症状が出ない」という疾患特性です。痛みがなくなれば通院をやめてしまう患者が多く、FLSが機能しなければ治療中断が容易に起こります。そのため、ステージ4(フォローアップ)では退院後3〜4か月と1年後の追跡が明示的に推奨されており、医療機関と患者のつながりを切らさない設計が不可欠です。


独自の視点として注目したいのが、「FLSは医療経済にも貢献する」という点です。再骨折が発生した場合、入院・手術・リハビリに要する医療費は骨折1件あたり相当な額になります。FLSの介入によって再骨折率を低下させることは、患者QOLの維持のみならず、医療費全体の抑制という社会的意義も持ちます。これは病院経営の観点からもFLS体制整備の正当化に使えるロジックです。


さらに、2022年の診療報酬改定を機に、FFN-Jのレジストリ参加施設数は23施設から380施設へと急増しました(月次データで約10倍増)。これは、緊急加算の算定要件として日本脆弱性骨折ネットワークへの症例登録が必須とされたためです。このレジストリへの参加は単なる義務ではなく、自施設データを全国平均と比較できるツールとしても機能しており、質改善(QI)活動に活用できます。


参考:FFN-J 2022年多施設大腿骨近位部骨折データベース報告書
https://ffn.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/09/FFNJ-NHFD-2022-annual-report.pdf


参考:緊急整復固定加算・緊急挿入加算を含む施設基準の詳細(厚生労働省 令和4年度診療報酬改定概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000912336.pdf




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