骨粗鬆症は「整形外科の病気」と思われがちですが、実は内分泌・代謝の異常が根本原因で内科領域の疾患です。
「骨が弱くなっているなら整形外科」——多くの医療従事者もこの認識を持っています。しかし、骨粗鬆症の本質は骨の内分泌・代謝異常であり、日本整形外科学会も「内科医が得意とする分野」と明言しています。もちろん整形外科でも診療は行われますが、二次性骨粗鬆症(ステロイド長期投与・甲状腺疾患・糖尿病など)が背景にある場合、内分泌代謝内科への紹介が必要なケースが少なくありません。
仙台市内では、整形外科・内科・内分泌代謝内科など、複数の診療科が骨粗鬆症を診ています。つまり「整形外科に紹介すれば完結」という考え方では、根本原因を見逃す可能性があります。これは診療科の問題です。
| 診療科 | 対応が得意なケース |
|---|---|
| 整形外科 | 骨折後の外科的治療・リハビリ・骨密度評価 |
| 内分泌代謝内科 | 二次性骨粗鬆症・ホルモン異常・代謝疾患合併例 |
| 婦人科 | 更年期・閉経後の原発性骨粗鬆症 |
| 内科(一般) | かかりつけ医からの継続治療・生活習慣病合併例 |
骨粗鬆症財団が公開している「病院リスト」では、仙台市内の登録施設(整形外科・内科・外科など)を診療科別に確認できます。患者の背景に応じて適切な診療科を選ぶことが、治療の質を左右します。
仙台市内で骨粗鬆症財団に登録されている施設は、青葉区・宮城野区・若林区・太白区・泉区の各区に分布しており、地域偏在も意識した連携先の把握が求められます。これが原則です。
参考:骨粗鬆症の診療科について詳しく解説した専門クリニックのブログ記事。内科と整形外科の役割分担を整理するのに役立ちます。
参考:骨粗鬆症財団による宮城県(仙台)の登録医療機関一覧。連携先の選定に活用できます。
骨粗鬆症専門医への紹介が完了した時点で「対応完了」と考えてしまうのは、現場でよく起きることです。しかし、この認識が二次骨折リスクを高めます。
国内の統計によると、骨粗鬆症薬物療法を開始した患者の1年後の治療継続率は60%を下回るとされています。特にビスホスホネート週1回製剤でも1年後の服薬継続率は大幅に低下するという報告があります。これは痛いですね。
大腿骨近位部骨折を起こした患者では、受傷時の骨粗鬆症治療率は23.0%、12か月後でも47.3%にとどまることが全国調査で示されています(日本整形外科施設約3,000施設を対象)。
さらに深刻なのが骨折連鎖の問題です。脆弱性骨折(骨粗鬆症を背景とした軽微な外力による骨折)を一度起こした患者は、次の骨折リスクが格段に上昇します。つまり、専門医に紹介した後の「継続」と「再評価」のフォローが、医療従事者全体の責務といえます。
医療従事者としてできる具体的なアクションは「治療が継続されているかの確認を紹介元でも定期的に把握する仕組みをつくること」です。紹介した後も次回受診時に薬剤の服用状況を確認する、骨代謝マーカーの再検査タイミングを記録しておくなど、些細な一歩が継続率の底上げにつながります。
参考:骨粗鬆症治療継続率の課題と循環型連携の成果が整理されたPDF資料。治療率改善の具体策を学べます。
骨粗鬆症の診断と治療効果判定に欠かせないのが、DXA(デキサ)法による骨密度測定と骨代謝マーカーの採血検査です。仙台市内の複数のクリニック(仙台みやぎ整形外科クリニック、くにみ整形外科クリニック、長町南たかの整形外科、小倉整形外科など)では、全身型DXA装置を導入しており、腰椎・大腿骨の骨密度を精度高く評価できます。
DXA検査の基準を確認しておきましょう。
- YAM(若年成人平均値)80%以上:骨量正常
- YAM 70〜80%未満:骨量減少(要注意)
- YAM 70%未満:骨粗鬆症と診断(骨折がない場合)
これが診断の基準です。骨折があれば80%未満でも骨粗鬆症と診断されます。
骨代謝マーカーには「骨吸収マーカー(骨が壊れる速さを示す)」と「骨形成マーカー(骨が作られる速さを示す)」の2種類があります。治療薬の選択や効果判定にも直結するため、どのマーカーが高値か低値かを読み解く知識が、紹介先との情報共有の質を高めます。
たとえば、デノスマブはビスホスホネートよりも骨吸収マーカーを強力に低下させる薬剤です。治療薬が変更された場合、骨代謝マーカーの変動をフォローすることが次回の紹介先とのコミュニケーションをスムーズにします。これは使えそうです。
仙台市では令和7年度の骨粗鬆症検診も実施予定で、40歳・50歳・60歳の女性が対象です。一次検診で「要精検」となった場合、医師の紹介状をもって二次検診機関(浅沼整形外科・小倉整形外科など)を受診する流れになっています。患者への案内精度を上げることが、専門医との連携をスムーズにします。
参考:仙台市の骨粗鬆症検診の流れと参加医療機関について確認できます。二次検診の手順も掲載されています。
二次骨折予防における最重要の仕組みが、FLS(Fracture Liaison Service:骨折リエゾンサービス)です。仙台市立病院では2024年2月よりFLS を正式に開始し、大腿骨近位部の脆弱性骨折患者を対象とした多職種チームによる介入が始まっています。
FLSとは何でしょうか? 骨折を起こした患者に対して、医師・薬剤師・看護師・理学療法士・管理栄養士などが連携し、骨粗鬆症治療の開始と継続、転倒予防、栄養指導を一体的に実施する仕組みです。骨折後の患者が「手術が終わったら終わり」にならないよう、退院後のフォローまで担う点が最大の特徴です。
東北労災病院でもOLS(骨粗鬆症リエゾンサービス)の取り組みが行われており、薬剤師・看護師・リハビリスタッフが骨粗鬆症治療の継続率向上に向けた介入を実践しています。仙台みやぎ整形外科クリニックでは骨粗鬆症マネージャー資格を持つ看護師2名が骨粗鬆リエゾンチームを組んでおり、患者への転倒リスク評価・栄養指導・運動療法を包括的に提供しています。
医療従事者がFLSを活用するために意識すべきことは次の3点です。
- 🔗 紹介情報に骨粗鬆症関連の検査データを添付する(DXA値・骨代謝マーカー・転倒リスク評価)
- 📋 退院後の治療継続確認のための逆紹介ルートを整備する
- 🏃 理学療法士によるサルコペニア・ロコモ評価を同時依頼する
多職種介入によって病診連携を開始してから2年間で70%以上の患者が手術後も治療を継続し、再骨折率が20%程度に抑えられたという報告もあります(聖隷佐倉病院の取り組み事例)。仙台でも同様の成果が期待されています。
参考:仙台市立病院が2024年2月から開始したFLSの研究概要と目的が記載されています。現場での取り組み把握に有用です。
当院における骨折リエゾンサービス(FLS)の取り組みについて|仙台市立病院
検索上位の記事ではあまり取り上げられていない視点として、「紹介の質」の問題があります。専門医への紹介状に何を書くかで、初診でできる検査や治療の深さが変わります。つまり紹介状の精度が患者予後を左右します。
骨粗鬆症の紹介状で見落とされがちな記載項目を整理しておきましょう。
| 記載項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 既往骨折の部位・時期 | 脆弱性骨折の有無が診断基準に影響する |
| ステロイド・抗てんかん薬・PPI等の服薬歴 | 二次性骨粗鬆症の原因薬剤特定に必須 |
| 転倒歴・歩行状態 | 転倒リスク評価の基礎情報になる |
| 腎機能データ(eGFR) | ビスホスホネート系薬剤の使用可否に直結する |
| 身長の変化(縮んだ経緯) | 椎体圧迫骨折の見逃し防止に有用 |
この中で特に重要なのが「腎機能データ」です。ビスホスホネート製剤はeGFR 35mL/min/1.73㎡未満では原則禁忌とされています。事前にデータを添付することで、専門医が初診当日に薬剤選択まで踏み込める状態が整います。腎機能は必須です。
また、仙台の骨粗鬆症検診(一次検診・二次検診)を経て来院する患者の場合、検診結果票の保存・引き継ぎも重要です。検診で測定された骨密度の値(超音波法)と、DXA法での測定値は異なる基準を持つため、専門医への正確な情報伝達が誤認を防ぎます。
さらに独自の視点として、「薬の飲み方の煩雑さによる服薬離脱リスク」を初診前に評価しておくことをお勧めします。ビスホスホネート経口薬は「起床直後に水200mLで服用し、30分間は横にならない・食事をしない」という服用条件があります。一人暮らしの高齢者・認知機能低下の患者では、この条件が服薬中断につながることが現場では知られています。事前に患者の生活背景をヒアリングし、注射製剤(年1回点滴のゾレドロン酸、月1回皮下注射のデノスマブなど)が適しているかを専門医に相談するメモを紹介状に添えるだけで、治療選択の質が上がります。
大腿骨近位部骨折の5年生存率は約49〜51%で、全がんの5年生存率(66.2%)を下回るとも報告されています。これは骨粗鬆症が「老化の一部」ではなく「治療すべき疾患」であることを強く示しています。医療従事者一人ひとりが「紹介の質」を高めることが、仙台の患者の生命予後を守ることに直結します。
参考:骨粗鬆症ガイドライン2025年版。薬剤選択・腎機能基準・診断アルゴリズムなど臨床判断の根拠になります。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版(PDF)|日本骨粗鬆症学会
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骨粗鬆症[本/雑誌] (シリーズ専門医に聞く「新しい治療とクスリ」) / 萩野浩/〔著〕 折茂肇/〔著〕 小松泰喜/〔著〕