ニューロタンの有効成分であるロサルタンカリウムは、経口投与後速やかに吸収され、その一部が主代謝物であるカルボン酸体に変換されます。ロサルタン及びカルボン酸体は、いずれも生理的昇圧物質であるアンジオテンシンII(A-II)に対して、AT1受容体において特異的に拮抗することで降圧効果を発揮します。この作用により血管が拡張し、末梢血管抵抗が低下することで血圧が降下します。
参考)高血圧症治療薬「ニューロタン(ロサルタン)」ARB - 巣鴨…
臨床研究のデータによると、50mg投与群では収縮期血圧が平均15-20mmHg、拡張期血圧が10-15mmHg低下することが示されています。投与期間が長くなるほど降圧効果は安定し、12週間後には収縮期血圧が平均20mmHg、拡張期血圧が15mmHg低下し、目標血圧達成率は85%に達します。重要な点として、血圧の下降に伴う心拍数の増加を認めず、投与中止に伴う血圧のリバウンド現象は生じないことが確認されています。
参考)ロサルタンカリウム(ニューロタン) href="https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/losartan-potassium/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/losartan-potassium/amp;#8211; 代謝疾患…
高血圧症の治療においては、通常成人にロサルタンカリウムとして25〜50mgを1日1回経口投与し、年齢や症状により適宜増減しますが、1日100mgまで増量が可能です。また、ニューロタンは作用時間が長く、1回の服用で長時間効果が持続するため、服薬コンプライアンスの向上にも寄与します。
参考)https://med.daiichisankyo-ep.co.jp/products/files/1088/%E3%83%AD%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%B3K%E9%8C%A0%E3%80%8CDSEP%E3%80%8D%E6%B7%BB%E4%BB%98%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%8810%EF%BC%89.pdf
ニューロタンは、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の中で唯一、尿酸を低下させる働きを持つ医薬品として注目されています。この独自の作用機序は、近位尿細管にあるURAT1(尿酸トランスポーター)を阻害することで尿酸の再吸収を抑制し、尿酸を排泄することによるものです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnam/39/2/39_163/_pdf/-char/ja
2008年に日本で行われた臨床研究において、ロサルタンがヒトの腎尿細管からの尿酸再吸収を担うURAT1を尿細管管腔側から阻害し、尿酸の再吸収を抑制することで血中の尿酸値を低下させる作用があることが初めて臨床的に証明されました。ロサルタンによる尿酸低下の効果は用量依存的であり、高尿酸血症患者の尿酸値を平均0.7mg/dL程度低下させることが報告されています。
参考)ニューロタンのヒトにおける尿酸低下作用の機序が証明される|医…
in vitroでの研究では、ロサルタンのURAT1を介する尿酸の取り込みのIC50は570.0±28.04μMと報告されており、ベンズブロマロン(0.13±0.01μM)と比較すると阻害作用は弱いものの、降圧薬としての役割を果たしながら尿酸値の管理も同時に行えるという利点があります。そのため、尿酸値が高い高血圧患者の場合、ARBの中でもロサルタンを優先的に処方する医師も多く、高血圧と高尿酸血症を合併する患者において特に有用性が高いと考えられています。
参考)ロサルタンカリウム(ニューロタン)作用機序・特徴・尿酸を下げ…
ニューロタンは降圧作用に加えて、顕著な腎保護作用を有していることが複数の研究で示されています。その腎保護のメカニズムは、腎の輸出細動脈を選択的に拡張させ、糸球体内圧を低下させることで糸球体への過剰負荷を改善するというものです。この作用により、たんぱく尿の減少効果が得られ、長期的な腎機能の保護につながります。
参考)ニューロタン錠50mgの効能・副作用|ケアネット医療用医薬品…
高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症の治療においては、通常成人にロサルタンカリウムとして50mgを1日1回経口投与し、血圧値をみながら1日100mgまで増量できます。ただし、過度の血圧低下を起こすおそれのある患者等では25mgから投与を開始することが推奨されています。
動物実験においても、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(インスリン依存性糖尿病モデル)や自然発症インスリン非依存性糖尿病マウス、5/6腎切除ラット等の糖尿病及び非糖尿病性の腎障害モデル動物において、尿中蛋白排泄量の増加並びに腎組織障害を抑制することが確認されています。これらのエビデンスから、ニューロタンは糖尿病性腎症の進行を遅延させる効果が期待できる治療薬として位置づけられています。
参考)たんぱく尿を減らす降圧薬 
ニューロタンによる治療において、副作用の発現率は全体で約15%と報告されており、その多くは投与開始から4週間以内に出現します。投与初期に生じる一過性の症状としては、めまいが8.2%、頭痛が6.5%、倦怠感が4.3%の頻度で認められます。これらの症状は血圧低下に伴うものであり、特に朝の起床時に顕著となる傾向があります。
血圧の薬は飲み始めにめまいやふらつきなどがあらわれることがありますが、しばらく飲み続けて血中濃度が安定してくると、不快な症状はあらわれにくくなります。ただし、ひどいめまいやふらつきなどが長期間続く場合は、投与量の変更なども検討する必要があります。
重大な副作用として注意すべきものには、高カリウム血症があります。ニューロタンが高カリウム血症を起こす作用機序は、アンジオテンシンIIの作用を阻害し、副腎皮質でアルドステロンを分泌抑制し、腎からカリウム排泄を抑制するためです。臨床検査値の異常変動として、血清カリウム上昇が11.9%、クレアチニン上昇が4.0%、BUN上昇が1.3%で認められています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00056601.pdf
高カリウム血症に注意が必要な患者は、腎機能低下、糖尿病、高カリウム血症を起こす他の薬剤を併用中の患者、および高齢者です。また、外来患者では食事からカリウムの過剰摂取も起きることがあるため、食事内容にも注意が必要です。その他の重大な副作用として、血管浮腫、急性腎障害、不整脈、汎血球減少、低血糖、低ナトリウム血症などが報告されており、定期的な血液検査と腎機能のモニタリングが重要です。
参考)全日本民医連 
ニューロタンの服用に際しては、薬物相互作用や服薬管理に関する注意点があります。まず、グレープフルーツジュースとの相互作用について、ニューロタンは作用時間が長く、1回の服用で長時間効果が持続する一方、グレープフルーツの薬に対する影響は個人差があり、その影響が持続する時間も明らかではないため、服用間隔をあけても降圧効果の低下は避けられないと考えられています。そのため、ニューロタン服用中はグレープフルーツジュースを飲まないことが推奨されています。
薬物代謝酵素については、ロサルタンはCYP2C9をメインとし、CYP3A4により活性代謝物であるカルボン酸体に代謝されます。健康成人に空腹時単回投与した時の薬物動態として、ロサルタンのTmax(最高血中濃度到達時間)は1.3±0.9時間、T1/2(半減期)は1.7±0.8時間であり、活性代謝物のTmaxは3.0±0.6時間、T1/2は3.8±0.7時間と報告されています。
服薬管理において、飲み忘れた場合は気付いたタイミングですぐに1回分を飲むことが推奨されますが、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばし、次の服用タイミングで1回分を服用します。その際、2回分を一度に飲んではいけません。服用量が多すぎると、副作用が発現しやすくなります。また、投与後に血清クレアチニン値が前回の検査値と比較して30%(あるいは1mg/dL)以上増加した場合、及び糸球体濾過値等で評価した腎機能障害の進行が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行う必要があります。
高血圧治療薬としてのニューロタンは、降圧効果だけでなく尿酸低下作用や腎保護作用といった多面的な効果を持ち、特に高血圧と高尿酸血症や糖尿病性腎症を合併する患者において有用性が高い医薬品です。適切な服用方法と副作用のモニタリングを行うことで、安全かつ効果的な治療が期待できます。