プロカイン リドカイン 違い:構造、作用機序と臨床応用の比較

プロカインとリドカインは、どちらも局所麻酔薬ですが、化学構造や作用持続時間、代謝経路などが大きく異なります。それぞれの特徴と使い分けについて、医療現場で知っておくべき重要なポイントとは何でしょうか?

プロカインとリドカインの違い

プロカインとリドカインの主な特徴
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化学構造の違い

プロカインはエステル型、リドカインはアミド型の局所麻酔薬で、代謝経路と安全性が異なります

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作用持続時間の比較

プロカインは30~60分の短時間作用性、リドカインは60~90分の中時間作用性です

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臨床における麻酔効果

リドカインの麻酔効果はプロカインの約2.5倍強力で、表面麻酔にも使用可能です

プロカイン リドカイン 化学構造の違い

 

 

 

プロカインとリドカインの最も基本的な違いは、化学構造にあります。プロカインは1904年にAlfred Eiuhornによって合成されたエステル型局所麻酔薬で、芳香族残基とアミノ基がエステル結合で連結された構造を持ちます。これに対し、リドカインはアミド型局所麻酔薬に分類され、アミリド構造を持つことで化学的安定性が高くなっています。

 

参考)http://www.anesth.or.jp/guide/pdf/publication4-5_20161125.pdf

この構造の違いは、代謝経路に直接的な影響を及ぼします。プロカインは血漿中のコリンエステラーゼ(プロカインエステラーゼ)によって速やかに加水分解され、パラアミノ安息香酸とジエチルアミノエタノールに分解されます。一方、リドカインは主として肝臓でチトクロームP450(CYP1A2およびCYP3A4)により代謝され、モノエチルグリシンキシリジド(MEGX)を経て最終的に4-ヒドロキシ-2,6-キシリジンとして尿中に排泄されます。

 

参考)https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2410_05_400_5.pdf

エステル型であるプロカインは、アミド型のリドカインよりも加水分解されやすいという特徴があります。また、プロカインの代謝産物であるパラアミノ安息香酸は、ごくまれにアレルギー反応を引き起こす可能性があり、サリチル酸やサルファ剤の効果を低下させることが知られています。

 

参考)https://anesth.or.jp/files/pdf/4_local_anesthetic.pdf?var=20250721033955

プロカイン リドカイン 作用機序と薬理学的特性

プロカインとリドカインは、いずれも神経細胞膜のナトリウムチャネルを遮断することで局所麻酔作用を発現します。具体的には、非解離型の中性分子として神経細胞膜を通過し、細胞内で解離してイオン型となり、神経細胞の内側から細胞膜のNa+チャネルに結合することで、ナトリウムの透過を阻止し、活動電位の伝導を可逆的に抑制します。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00053464.pdf

薬理学的特性において、両者には顕著な違いがあります。プロカインはpKaが8.9と高く、脂溶性は0.6と低いため、発現時間は2~5分と即効性ですが、作用時間は30~60分程度の短時間作用性です。対照的に、リドカインはpKaが7.8、脂溶性が366と高く、プロカインより表面、浸潤、伝達麻酔効果が強く、作用持続時間も長いという特徴があります。​
麻酔効果の強さに関しては、リドカインがプロカインよりも優れています。リドカインの局所麻酔作用はプロカインと比較して効力が高く、表面麻酔にも使用可能です。硬膜外麻酔における効果発現時間は、リドカインが10~15分と速やかで、持続時間は60~90分(中時間)であるのに対し、プロカインは作用時間が短いため、現在では浸潤麻酔以外ではほとんど使用されていません。

 

参考)リドカイン - Wikipedia

プロカイン リドカイン 代謝と安全性の比較

プロカインとリドカインの代謝経路の違いは、臨床における安全性に大きく影響します。プロカインは循環血液中でエステラーゼにより速やかに加水分解され、ヒトでは他の動物の4~20倍も分解速度が速く、血漿が主体で肝臓での分解は非常に低いとされています。尿中未変化体排泄率は、150mg投与で平均0.2%、200mg投与で0.26%、400mg投与で0.44%と非常に低い値を示します。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00009009.pdf

リドカインは主として肝臓で約90%が代謝され、活性を有するMEGXおよびグリシンキシリジド(GX)となり、約70%が4-ヒドロキシ-2,6-キシリジンとして尿中に排泄されます。排泄半減期は二相性で、第1相が7~30分、第2相が乳幼児で3.2時間、成人で1.5~2時間です。代謝産物のMEGXはリドカインよりも半減期が長く、蓄積すれば中枢神経毒性を発揮する可能性があります。

 

参考)https://www.viatris-e-channel.com/viatris-products/di/detail/assetfile/Lidocaine_Inj_NM_IF.pdf

アレルギー反応の面では、エステル型局所麻酔薬であるプロカインは、アミド型のリドカインと比較してアレルギー反応が稀に見られます。リドカインなどのアミド型局所麻酔薬では、アレルギー反応は滅多に起こりませんが、プロカインの代謝産物であるパラアミノ安息香酸がアレルギー反応を引き起こすことがあります。

 

参考)研修医になったら必ずこの手技を身につけてください。改訂版〜消…

肝機能障害や腎機能障害のある患者では、リドカインは主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が高くなりやすく、振戦、痙攣等の中毒症状を起こす可能性があります。プロカインは血漿エステラーゼで代謝されるため、血清エステラーゼの減少している患者では注意が必要です。​

プロカイン リドカイン 臨床応用と適応

プロカインとリドカインの臨床応用における違いは、それぞれの薬理学的特性に基づいています。プロカインは、0.5%、1%、2%の注射液と1gの粉末が市販されており、効能・効果としては浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄麻酔となっていますが、最近はより安全な局所麻酔薬が開発されたため、浸潤麻酔として以外はほとんど使用されていません。また、粘膜からの吸収が悪く表面麻酔には適していません。​
リドカインは、局所麻酔薬として硬膜外麻酔、伝達麻酔、浸潤麻酔、表面麻酔に広く使用されています。さらに、脊髄くも膜下麻酔薬、クラスⅠbの抗不整脈薬としても使用され、期外収縮(心室性、上室性)、発作性頻拍(心室性、上室性)および心室性不整脈の予防が保険適応となっています。
ペインクリニックの分野においては、ナトリウムチャネル遮断薬として神経障害性疼痛の治療にも用いられています。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00052270.pdf

使用量に関しては、プロカインの最大安全使用量は100mg(アドレナリン添加で150mg)、脊髄くも膜下麻酔では20mgです。小児では一般使用量7mg/kg、最大量10mg/kgでの使用が勧められています。リドカインの基準最高投与量は、硬膜外麻酔・伝達麻酔・浸潤麻酔で1回200mgを最大用量とし、脊髄くも膜下麻酔では1回100mgを最大用量としています。​
脊髄くも膜下麻酔後の一過性神経症状の発生がリドカイン使用後に多く発生する事実より、リドカインに替わる短時間作用性の脊髄くも膜下麻酔への応用としてプロカインが期待されましたが、実際の使用は少ないのが現状です。​
日本麻酔科学会が発行する局所麻酔薬ガイドラインには、プロカインとリドカインの詳細な使用法と注意点が記載されています
参考リンク:日本麻酔科学会の麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドラインでは、両薬剤の適切な使用法、禁忌、副作用について詳しく解説しています。

 

プロカイン リドカイン 神経毒性と副作用の独自比較

神経毒性の観点から、プロカインとリドカインを比較すると、興味深い知見が得られています。神経障害をきたす毒性の程度は、臨床応用する濃度から換算すると、リドカイン塩酸塩の毒性は相対的に強く、プロカイン塩酸塩の2.5倍、メピバカイン塩酸塩の13.2倍であることが報告されています。これは、in vitroでの研究において、プロカインとメピバカインが他の臨床使用される局所麻酔薬よりも毒性が低いことを示しています。​
リドカインの高濃度使用による神経毒性は、特に脊髄くも膜下麻酔において問題となっています。5%リドカインは、孤立した神経または孤立したニューロンに適用すると、伝導を永続的に中断することがあり、これは細胞内カルシウムのリドカイン誘発性増加の結果である可能性があり、Naチャネル遮断を伴うようには見えません。このため、現在では高濃度リドカインの神経毒性の観点から脊髄くも膜下麻酔ではほとんど使用されなくなりました。

 

参考)局所麻酔薬の臨床薬理学-NYSORA

副作用に関しては、両薬剤ともに局所麻酔薬中毒として、初期症状に眠気、興奮、眩暈、嘔気・嘔吐、振戦、痙攣などがあり、適切な処置を施さなければ循環破綻ならびに呼吸停止に至る可能性があります。リドカインの中枢神経症状として、初期症状に不安、興奮、多弁、口周囲の知覚麻痺、舌の痺れ、ふらつき、聴覚過敏、耳鳴り、視覚障害、振戦などがあらわれ、症状が進行すると意識障害、全身痙攣があらわれます。​
プロカインはまれにメトヘモグロビン血症をきたす可能性があり、メトヘモグロビン血症の患者では症状を悪化させる可能性があるため禁忌となっています。リドカインもメトヘモグロビン血症のリスクがありますが、特に小児、新生児、乳児では重篤な症例が報告されているため、使用には十分な注意が必要です。​
高齢者における使用では、プロカインは生理機能が低下していることが多く副作用が発現しやすく、リドカインも肝機能が低下していることが多いため、血中濃度が高くなり振戦、痙攣等の中毒症状を起こす可能性があります。妊婦への投与については、両薬剤ともに妊娠中の投与に関する安全性は確立しておらず、慎重投与が必要です。​
医薬品医療機器総合機構(PMDA)のデータベースには、プロカイン塩酸塩の作用機序と薬効薬理に関する詳細情報が掲載されています
参考リンク:KEGGデータベースでは、プロカインとリドカインの分子構造、薬物動態、相互作用について詳細な情報を提供しています。

 


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