急性胆管炎の症状と治療薬を徹底解説

急性胆管炎の特徴的な症状から最新の治療薬まで、医療従事者が知るべき重要なポイントを詳しく解説。診断基準や重症度分類、適切な薬物選択についても触れています。効果的な治療アプローチとは?

急性胆管炎の症状と治療薬

急性胆管炎の重要ポイント
🔥
シャルコーの3徴

発熱・黄疸・右上腹部痛が診断の鍵

💊
初期治療薬

広域スペクトラム抗菌薬の早期投与が重要

緊急対応

重症例では胆道ドレナージが必須

急性胆管炎の特徴的症状とシャルコーの3徴

急性胆管炎は胆管内での細菌感染により引き起こされる急性炎症性疾患で、特徴的な症状として「シャルコーの3徴」が知られています。この3徴は以下の通りです。

  • 発熱:38度以上の高熱で、悪寒・戦慄を伴うことが多い
  • 黄疸ビリルビン値の上昇による皮膚・結膜の黄染
  • 右上腹部痛:肝臓・胆嚢周辺の痛みで、程度には個人差がある

症状の進行とともに、意識障害やショック状態に陥ることもあり、重篤な合併症として急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)に発展する可能性があります。AOSCでは敗血症、播種性血管内凝固(DIC)、多臓器不全のリスクが高まるため、早期診断と適切な治療が生命予後に直結します。

 

胆管の通過障害の原因として、胆石(特に総胆管結石)が最も多く、その他に胆管癌、乳頭部癌、膵頭部癌などの悪性疾患も重要な原因となります。内視鏡的乳頭切開術(EST)後の症例では、乳頭括約筋機能の低下により腸管からの逆行性感染のリスクが高まることも知られています。

 

急性胆管炎の重症度分類と診断基準

急性胆管炎の診断には血液検査と画像検査が用いられ、東京ガイドライン(TG13/TG18)に基づく重症度分類が治療方針決定に重要な役割を果たします。

 

血液検査所見

  • 白血球数の増加(10,000/μL以上)
  • C反応性蛋白(CRP)の高値
  • 総ビリルビン値の上昇(2.0mg/dL以上)
  • 胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇
  • 血液培養陽性率:21-71%の症例で陽性

画像検査所見

  • 腹部超音波検査:胆管拡張(6mm以上)
  • 腹部CT検査:胆管拡張、総胆管結石の確認
  • MRCP:非侵襲的な胆管描出に有用

重症度分類では、Grade I(軽症)、Grade II(中等症)、Grade III(重症)に分類され、各グレードに応じた治療戦略が推奨されています。Grade IIIでは臓器不全を伴い、緊急胆道ドレナージの適応となります。

 

急性胆管炎治療薬の選択と投与方法

急性胆管炎の薬物療法では、抗菌薬の適切な選択と投与が治療成功の鍵となります。初期治療では培養結果を待つ間、経験的治療として広域スペクトラム抗菌薬を使用します。

 

推奨される初期治療薬

抗菌薬名 分類 特徴・適応
セフトリアキソン 第三世代セフェム系 軽症~中等症の第一選択薬
ピペラシリン/タゾバクタム ペニシリン系+βラクタマーゼ阻害薬 中等症~重症、ESBL産生菌をカバー
メロペネム カルバペネム系 重症例、多剤耐性菌が疑われる場合

重症例(Grade III)では、緑膿菌をカバーする抗緑膿菌薬の使用が推奨されます。Pseudomonas aeruginosaは原因微生物の20%を占めることがあり、適切にカバーしないと死亡率上昇につながる可能性があります。

 

投与期間と注意点

  • 通常の投与期間:5-7日程度
  • 症状改善度に応じて調整
  • 腸球菌に対してはバンコマイシンの追加を検討
  • 肝腎機能に応じた用量調整が必要

胆汁中への移行性も考慮し、胆汁中濃度が血中濃度を上回る薬剤(セフトリアキソン、フルオロキノロン系など)の選択が重要です。

 

胆道ドレナージの適応と併用療法

急性胆管炎の治療において、抗菌薬と並んで重要なのが胆道ドレナージです。胆管内圧の減圧により、感染の拡大を防ぎ、抗菌薬の効果を高めることができます。

 

ドレナージ法の種類

  • 内視鏡的胆道ドレナージ(EBD):第一選択、成功率が高い
  • 経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD):内視鏡が困難な場合
  • 外科的ドレナージ:きわめて稀、他の方法が不可能な場合

適応基準

  • Grade II:速やかなドレナージ(6時間以内)
  • Grade III:緊急ドレナージ(6時間以内)
  • 保存的治療で改善しない場合

内視鏡的治療では、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を用いて胆管にカテーテルを挿入し、一時的なプラスチックステントまたは経鼻胆道ドレナージ(ENBD)を留置します。

 

併用療法として、輸液療法による循環動態の安定化、電解質補正、鎮痛薬の投与も重要な要素です。特に高齢者では脱水の補正と腎機能の維持に注意が必要です。

 

急性胆管炎の予後改善と再発防止戦略

急性胆管炎の治療期間は通常1-4週間程度ですが、根本的な原因疾患の治療なしには再発リスクが高いため、包括的な治療戦略が重要です。

 

原因別の根本治療

  • 総胆管結石:内視鏡的結石除去術(EST、EPBD)
  • 肝内結石:経皮的胆道鏡下砕石術
  • 悪性疾患:胆道ステント留置、外科的切除

予後改善のポイント

  • 早期診断と迅速な治療開始
  • 適切な重症度評価に基づく治療選択
  • 多職種連携による集学的治療
  • 高齢者や併存疾患のある患者への配慮

再発防止には、定期的なフォローアップが欠かせません。胆管結石の再発率は年間約10-15%とされており、内視鏡的乳頭切開術後の患者では特に注意深い経過観察が必要です。

 

長期管理のポイント

  • 3-6ヶ月毎の画像検査によるフォロー
  • 症状出現時の早期受診指導
  • 食事指導(低脂肪食の推奨)
  • 併存疾患(糖尿病、肝疾患)の管理

急性胆管炎は適切な治療により予後良好な疾患ですが、重症化すると生命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。早期診断、適切な抗菌薬選択、タイムリーな胆道ドレナージ、そして根本原因の治療という段階的アプローチにより、患者の予後改善と生活の質の向上を図ることができます。

 

急性胆管炎診療ガイドラインの詳細情報
Minds医療情報サービス
日本胆道学会による急性胆管炎の解説
日本胆道学会