二次性高血圧スクリーニング実践方法
二次性高血圧スクリーニングの重要ポイント
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早期発見の意義
高血圧患者の10%程度が二次性で、適切な治療により完治可能
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スクリーニング対象
治療抵抗性高血圧、若年発症、急速進行例を優先的に検査
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検査の体系化
問診・身体所見から内分泌検査、画像診断まで段階的に実施
二次性高血圧スクリーニング適応基準
二次性高血圧のスクリーニングにおいて、すべての高血圧患者を対象とするのは現実的ではありません。効率的なスクリーニングのため、以下の基準に該当する患者を優先的に検査対象とします。
- 若年発症の高血圧:40歳未満での高血圧発症
- 治療抵抗性高血圧:3種類以上の降圧薬を用いても目標血圧に達しない
- 重症高血圧:未治療で150/100mmHg以上
- 血圧変動が激しい:日内変動や日差変動が著明
- 急速進行する高血圧:短期間で血圧が急上昇
- 臓器障害の進行が早い:血圧値に比して心肥大や腎障害が強い
これらの基準により、二次性高血圧の可能性が高い患者を効果的に絞り込むことができます。特に治療抵抗性高血圧患者では、約30%が原発性アルドステロン症であることが報告されており、積極的なスクリーニングが推奨されます。
二次性高血圧スクリーニング検査手順
スクリーニング検査は段階的アプローチが重要です。まず基本的な検査から開始し、異常所見に応じて詳細検査へ進みます。
第1段階:基本スクリーニング
- 血液生化学検査:電解質(Na、K、Cl)、腎機能、血糖
- 尿検査:蛋白、糖、沈渣
- 心電図、胸部X線:心肥大、大動脈異常の評価
- 眼底検査:血管変化の程度評価
第2段階:内分泌スクリーニング
- アルドステロン/レニン比(ARR):原発性アルドステロン症
- 24時間尿中カテコールアミン:褐色細胞腫
- デキサメサゾン抑制試験:クッシング症候群
- 甲状腺機能(TSH、fT3、fT4):甲状腺機能異常
第3段階:画像診断
- 腹部超音波:腎臓のサイズ、副腎腫瘍の評価
- 副腎CT:副腎腫瘍の詳細評価
- 腎動脈エコー/CT:腎血管性高血圧の評価
検査の実施順序は患者の臨床症状や初期検査結果により調整します。効率的なスクリーニングのため、複数の検査を同時進行させることも重要です。
二次性高血圧原発性アルドステロン症診断
原発性アルドステロン症は二次性高血圧の中で最も頻度が高く、高血圧患者の5-10%を占めます。スクリーニングから確定診断まで体系的なアプローチが必要です。
スクリーニング検査の実施条件
- 採血時刻:午前中(日内変動を考慮)
- 体位:15分間安静後の座位、可能なら30分安静臥位
- 降圧薬の調整:ACE阻害薬、ARBは2週間以上休薬
- アルドステロン受容体拮抗薬は2ヶ月以上休薬
判定基準
- ARR ≧ 200かつPAC ≧ 60 pg/mL:陽性
- ARR 100-200かつPAC ≧ 60 pg/mL:暫定陽性
確認試験(スクリーニング陽性例に実施)
- カプトリル負荷試験
- フロセミド立位負荷試験
- 生理食塩水負荷試験
3つの確認試験のうち2種以上で陽性となれば原発性アルドステロン症と確定診断されます。手術適応の評価には副腎静脈サンプリングによる局在診断が必要です。
早期診断により手術による根治治療が可能となり、心血管合併症のリスクも大幅に軽減できます。
二次性高血圧褐色細胞腫スクリーニング特徴
褐色細胞腫は副腎髄質や傍神経節から発生するカテコールアミン産生腫瘍で、特徴的な症状と検査所見を示します。見逃しやすい疾患のため、典型的な臨床像の理解が重要です。
特徴的症状(3主徴)
- 頭痛:拍動性、激烈な痛み
- 動悸・頻脈:安静時でも100回/分以上
- 発汗:多汗、特に夜間発汗
その他の症状・所見
- 血圧変動:発作性高血圧、起立性低血圧
- 代謝異常:血糖上昇、体重減少
- 精神症状:不安、焦燥感
- 皮膚症状:蒼白、冷感
スクリーニング検査
- 24時間蓄尿中カテコールアミン:アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン
- 24時間蓄尿中バニリルマンデル酸(VMA)
- 血中・尿中メタネフリン、ノルメタネフリン
画像診断
- 副腎CT:腫瘍の局在、性状評価
- MRI:T2強調画像で高信号を示すことが特徴
- MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)シンチ:機能的局在診断
褐色細胞腫の約10%は家族性であり、遺伝子検査の適応も考慮します。手術前には必ずα遮断薬による前処置が必要で、β遮断薬は単独使用を避けます。
二次性高血圧腎血管性診断アプローチ
腎血管性高血圧は腎動脈狭窄により引き起こされる二次性高血圧で、高齢者では動脈硬化性、若年者では線維筋性異形成が主な原因です。早期診断により血管拡張術や外科的治療で改善が期待できます。
疑うべき臨床所見
- 急速に発症・進行する高血圧
- ACE阻害薬・ARB投与後の急激な腎機能悪化
- 腎サイズの左右差(>1.5cm)
- 腹部血管雑音の聴取
- 若年女性の重症高血圧(線維筋性異形成)
- 全身の動脈硬化所見
スクリーニング検査
- 腎動脈エコー:血流速度の測定、抵抗指数
- レニン活性:ただし最近のガイドラインでは推奨度が低下
- 血清クレアチニン、尿素窒素:腎機能評価
- 尿検査:蛋白尿の程度
確定診断
- 造影CT血管撮影:腎動脈の狭窄度評価
- MR血管撮影:造影剤腎症のリスクが高い場合
- 腎動脈造影:ゴールドスタンダード、治療も同時可能
- 分腎機能検査:片腎機能の評価
治療選択の考慮点
腎動脈狭窄が50%以上であっても、すべてが治療適応とは限りません。片腎萎縮(長径<8cm)例では血管拡張術の効果は限定的です。高血圧の改善、腎機能保持、心血管イベント予防の観点から総合的に判断します。
近年、薬物治療の進歩により腎血管性高血圧の予後は改善していますが、適切な症例選択により侵襲的治療の恩恵を受ける患者も存在するため、専門医との連携が重要です。