ロコアテープは、消化性潰瘍のある患者に禁忌です。これはNSAIDsのプロスタグランジン合成阻害により胃粘膜防御が低下し、潰瘍を悪化させるおそれがあるためです。
とくに外来では「貼付剤=胃は荒れにくい」という先入観が残りやすく、問診で既往が抜けることがありますが、ロコアテープは2枚貼付時の全身曝露量(AUC)がフルルビプロフェン経口剤の通常用量投与時と同程度に達する、という前提で考える必要があります。
患者指導としては、黒色便、吐血様、腹痛などの消化管出血を疑う症状が出たら使用中止し受診するよう説明します(貼り薬の説明に「便が黒くなる」「便に血が混じる」まで入れるのがポイントです)。
また「禁忌」と「慎重投与」を混同しやすい点にも注意が必要です。消化性潰瘍“既往”は禁忌ではなく注意対象ですが、再発リスクがあるため、長期化しそうな変形性関節症では貼付期間・貼付部位・他NSAIDs併用の有無をセットで見直します。
現場での実務では、初回処方時に「胃潰瘍で治療中(内服中)」「最近黒色便があった」「上部消化管内視鏡で潰瘍と言われた」など、患者が答えやすい具体質問に落とすと拾いやすくなります。
参考:禁忌(消化性潰瘍)と理由、消化管障害の症状例(黒色便など)を確認する部分
https://medical.taisho.co.jp/di/infoproper/infoproper_loqoa.pdf
ロコアテープは、重篤な腎障害のある患者に禁忌です。NSAIDsが腎プロスタグランジンを抑制し、腎血流量低下を介して腎障害を悪化させるおそれがあるためです。
「貼り薬だから腎機能は安全」という誤解は特に危険で、ロコアテープは全身曝露が高い設計である点が、他の貼付NSAIDsと運用を分ける理由になります。実際、患者向医薬品ガイドでも、長期使用では尿検査・血液検査などの定期的な検査が行われることが明記され、腎障害の自覚症状として「尿量が減る」「むくみ」「体がだるい」が挙げられています。
医療従事者側のチェックは「腎機能障害の有無」だけでなく、「腎血流量が低下している状況」を拾うことが重要です。脱水、発熱、食事摂取低下、高齢での循環血漿量低下などは、腎前性要因としてNSAIDsの腎リスクを増やします。患者が痛みで食欲が落ちている、利尿薬が増えた、などの周辺情報も問診で拾う価値があります。
意外と盲点になるのが「複数部位が痛い患者」です。患部が複数あると貼付枚数を増やしやすい一方、ロコアテープは1日最大2枚までが原則で、2枚貼付時の曝露は経口剤並みです。貼付枚数が増えるほど腎・消化管など全身性副作用の確率論も上がるため、疼痛部位の優先順位を患者と一緒に決める運用が現実的です。
また、腎機能が「重篤」でない場合でも慎重投与に該当し得ます。過去の腎障害や腎血流量低下が疑われる場合は、漫然貼付を避け、貼付期間を区切って再評価(痛み・ADL・腎機能)するのが安全です。
参考:禁忌(重篤な腎障害)、慎重投与(腎血流量低下など)、2枚貼付で経口剤並み曝露、腎障害症状を確認する部分
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/400059_2649896S1022_1_01G.pdf
ロコアテープは、アスピリン喘息(NSAIDs等による喘息発作誘発)またはその既往歴のある患者に禁忌です。患者向けガイドでも、アスピリン喘息の自覚症状として「ゼーゼー、ヒューヒュー」「息苦しい」が示され、該当時は使用できないことが明確に書かれています。
一方で、気管支喘息そのものは「禁忌」ではなく慎重投与の枠に入るため、現場ではここが混乱ポイントになります。運用上は「喘息あり=即禁忌」ではなく、「NSAIDsで悪化したことがあるか(特に解熱鎮痛薬で発作)」を軸に確認すると整理しやすいです。
問診のコツは、疾患名の自己申告に頼らないことです。患者が「アスピリン喘息」という診断名を知らなくても、「ロキソニンやイブプロフェン、解熱鎮痛薬で息が苦しくなった」「鼻水→咳→喘鳴が短時間で出た」などの経験を持つ場合があります。貼り薬でも全身作用があり得るという説明を添え、初期症状が出たら即中止・受診につなげます。
医療安全上の“意外な落とし穴”は、鎮痛目的で複数科(整形+内科+歯科など)を受診している患者です。A科では喘息歴を把握していても、B科では共有されず、ロコアテープが追加されることがあり得ます。薬局での薬歴聴取と、患者自身に「NSAIDsで息苦しさが出たことがあるか」を毎回確認する運用が事故を減らします。
参考:禁忌(アスピリン喘息)と自覚症状、慎重投与(気管支喘息)を確認する部分
https://medical.taisho.co.jp/di/infoproper/infoproper_loqoa.pdf
ロコアテープは妊娠後期(妊娠28週以降)の女性に禁忌です。患者向医薬品ガイドには、妊娠後期の人は使用できないこと、また妊娠後期の女性に他のNSAIDs外皮用剤を使用して胎児動脈管収縮が起きた報告があることが記載されています。
さらに企業資材では、妊娠後期ラットへの投与で分娩遅延や出生率低下、死産児数増加などが示されたこと、授乳については投与を避け、やむを得ず投与する場合は授乳中止を指導することが明記されています。
臨床現場での実務としては、整形外来などで「妊娠かもしれない」段階の申告が拾いにくい点が課題になります。痛みの部位が腰・膝で妊娠と結び付けにくいケースほど、初回処方時の確認が重要です。
もう一つの盲点は「貼付剤は局所だから妊娠中もOK」と患者が自己判断しやすい点です。ロコアテープは2枚貼付で経口剤並みに曝露し得るため、妊娠週数の確認、併用薬(市販NSAIDs含む)の棚卸し、代替(非薬物療法や他剤)検討をセットで行うのが安全です。
参考:禁忌(妊娠後期)、妊娠28週以降の定義、授乳中の注意を確認する部分
https://medical.taisho.co.jp/di/infoproper/infoproper_loqoa.pdf
禁忌の知識は多くの医療者が持っていますが、事故は「知っているのに、確認が抜けた」場面で起きます。ロコアテープは、(1)禁忌が多い、(2)一部ニューキノロンが併用禁忌、(3)他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤は“可能な限り併用回避”、(4)1日最大2枚という用量上限、が同時に存在するため、運用をフロー化すると強いです。
ここでは独自視点として、処方・監査・服薬指導のどこでも使える「3点セット確認」を提案します。ポイントは、禁忌と相互作用と用法(貼付枚数)を、同じチェック欄に混ぜないことです。混ぜると“重要度”がぼやけ、最終的に全部抜けます。
✅チェック1:禁忌スクリーニング(患者背景)
※これらは「該当なら処方自体を止める」領域として、質問票や薬局のヒアリング項目を固定化します。禁忌項目は企業資材・患者向ガイドに列挙されているため、原典に合わせて文言を寄せると教育コストが下がります。
✅チェック2:併用禁忌(薬剤)
この「4剤」は数が少ないので、電子カルテ・薬局システムのアラートだけでなく、人の記憶にも乗せられます。患者向医薬品ガイドにも対象薬が具体名で並んでいるため、患者が薬名を持参できなくても照合しやすいのが利点です。
✅チェック3:併用回避&用法(貼付枚数)
これは禁忌ではないため軽視されがちですが、実際の副作用リスクを左右します。特に「市販の風邪薬」「頭痛薬」「歯痛での鎮痛薬」など、患者が“薬”として認識していないNSAIDsが入り込みやすいので、服薬指導では「のど・熱・頭痛の市販薬」まで具体化して確認すると取りこぼしが減ります。
最後に、貼付剤でありがちなトラブルとして、皮膚障害による中止が多い点も忘れないようにします。臨床試験で適用部位皮膚炎などが一定頻度で報告され、患者向ガイドでも「傷や粘膜、湿疹または発疹のある部分には使用しない」「ゆっくりはがす」などが明確に書かれています。禁忌チェックが完璧でも、貼り方指導が弱いと継続できず、結果的に内服NSAIDsへ移行して全身リスクが上がる、という逆転も起き得ます。
参考:禁忌一覧、併用禁忌薬、2枚貼付で経口剤並み曝露、他消炎鎮痛剤併用回避、貼り方注意を確認する部分
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/400059_2649896S1022_1_01G.pdf