脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの特徴や機能

脂溶性ビタミンA・D・E・Kと水溶性ビタミンの違いや特徴、吸収メカニズム、欠乏・過剰症について詳しく解説します。各ビタミンの働きや摂取方法を知って健康管理に役立てませんか?

脂溶性ビタミンの基本的な特徴と機能

脂溶性ビタミンの基本特性
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4つの種類と化学的性質

ビタミンA・D・E・Kが脂溶性で、油脂に溶けて体内に吸収される特性を持つ

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体内蓄積と代謝経路

肝臓や脂肪組織に貯蔵され、水溶性ビタミンと異なる代謝パターンを示す

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吸収と輸送システム

ミセル形成により腸管で吸収され、リポタンパク質を介して全身に輸送される

脂溶性ビタミンは、油脂に溶ける性質を持つ4種類のビタミン(A・D・E・K)を指し、生命活動の維持に欠かせない重要な栄養素です 。これらのビタミンは脂肪(脂質)に溶けて体内に吸収され、肝臓や脂肪組織に貯蔵される特徴があります 。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/11-%E6%A0%84%E9%A4%8A%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

 

脂溶性ビタミンの化学的特性により、食物中の脂肪が吸収を助けるため、低脂肪食を実践した結果として脂溶性ビタミンの欠乏症になることがあります 。また、一部の病気(吸収不良を引き起こす病気)によって脂肪の吸収が阻害され、その結果、脂溶性ビタミンの吸収も阻害されることがあります 。
水溶性ビタミンと異なり、脂溶性ビタミンは加熱調理では破壊されません 。しかし、ビタミンAまたはDを過剰に摂取すると、体内に蓄積して有害な影響が現れることがあるという重要な特徴があります 。
参考)https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3892.html

 

脂溶性ビタミンAの視覚機能と細胞成長作用

ビタミンAは皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあり、目の網膜で光を感じる物質を作り出す重要な機能を持ちます 。強い抗酸化力を持ち、がんの発生を抑制する働きや動脈硬化の予防効果も認められています 。
参考)https://www.shiroyama-hsp.or.jp/content/files/eiyou/kenkokyositu_Vol8.pdf

 

牛・豚の肝臓(レバー)、うなぎ、緑黄色野菜(ほうれん草、人参、小松菜など)に多く含まれており 、視覚、免疫機能、細胞の成長に重要な役割を果たします 。欠乏すると夜盲症(暗い所や夜になると見えにくくなる)やドライアイが起こります 。
参考)https://palhonest.co.jp/column/fat-soluble-vitamins/

 

過剰症では脳圧亢進症による嘔吐や頭痛、脂肪肝などが発症し 、妊婦が過剰摂取した場合には胎児奇形のリスクも指摘されています 。急性の場合は脳脊髄液圧の上昇により頭痛や吐き気、嘔吐などが起こります 。
参考)https://kateinoigaku.jp/disease/349

 

脂溶性ビタミンDの骨形成とカルシウム代謝への影響

ビタミンDは骨や歯の成長に大きく関わり、血液中のカルシウム濃度を一定に保ち、神経や筋肉の働きを正常化する重要な機能を持ちます 。主に日光から合成され、骨の健康維持に寄与します 。
鮭、青魚、うなぎ、干し椎茸、卵黄に多く含まれており 、腸管からのカルシウムの吸収を促進することが主な作用です 。骨は、コラーゲンを中心としたタンパク質の枠組みの上に、リン酸カルシウムが沈着(石灰化)して形成されます 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586561.pdf

 

欠乏するとくる病(子ども)、骨粗しょう症などが発症し 、石灰化障害が惹起されます 。過剰症では高カルシウム血症を引き起こし、悪心、嘔吐、食欲不振、腎機能障害意識障害などが現れることがあります 。
参考)https://cloud-dr.jp/medical-navi/disease/1109/

 

脂溶性ビタミンEの抗酸化作用と細胞保護機能

ビタミンEは抗酸化作用があり、細胞を酸化から守る重要な役割があります 。脂溶性ビタミンとして、その代謝過程で13′-ヒドロキシクロマノール(13′-OH)と13′-カルボキシクロマノール(13′-COOH)という長鎖代謝物が形成されます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5789320/

 

これらの長鎖代謝物は人間の血清中にも存在し、生理学的な関連性があることが示されています 。実際に、長鎖代謝物は脂質代謝、細胞死、増殖、炎症反応、さらにはトコフェロールや外来物質の代謝に対して効果を持つことが確認されています 。
ビタミンEは他の脂溶性ビタミンA、D、Kとともにマトリックスメタロプロテイナーゼ-2/9(MMP-2/9)の発現と酵素活性を調節する機能も持ちます 。これらのビタミンは複数の経路を通じて治療効果を発揮し、特にがんに対する潜在的な治療薬としても注目されています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10707015/

 

脂溶性ビタミンKの血液凝固と骨代謝における重要性

ビタミンKは血液の凝固に関わり、骨の健康にも影響する重要なビタミンです 。骨形成や血液凝固に重要な役割を果たしており、ビタミンK1は骨へのカルシウムの沈着を促進し、骨形成(骨を作る)に関与します 。
参考)https://www.aichi-kyosai.or.jp/service/culture/internet/cook/shokuiku/shokuiku_1/8_31.html

 

過剰症では黄疸、呼吸困難、皮膚水疱などが起こります 。欠乏症については、腸内細菌によってある程度合成されるため、通常の食事では不足しにくいとされていますが、抗生物質の長期使用や吸収不良症候群では注意が必要です 。
ビタミンKは脂溶性ビタミンの中でも特に血液凝固因子の合成に直接関わるため、ワルファリンなどの抗凝固薬を服用している患者では、ビタミンK摂取量の管理が重要になります 。医療現場では、ビタミンK2-7(メナキノン-7)の形で50μg配合されたサプリメントも利用されています 。
参考)https://www.mssco.jp/supplement/36/

 

脂溶性ビタミンの吸収メカニズムと代謝経路の特殊性

脂溶性ビタミンの腸管での吸収は水溶性ビタミンとは根本的に異なる複雑なメカニズムを持ちます 。小腸管腔におけるミセルの形成は疎水性成分が吸収されるために重要なステップです 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/18/8/18_393/_pdf

 

食事中のトリグリセリドは、十二指腸において胆汁の胆汁酸塩とエマルジョンを形成した後、膵液リパーゼにより脂肪酸とグリセロールに分解されます 。これらはミセルとなって小腸粘膜細胞から吸収され、長鎖脂肪酸は再びトリグリセリドを形成してカイロミクロンに取り込まれます 。
参考)https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-4/

 

脂溶性ビタミンは、スカベンジャー受容体クラスBタイプ1(SR-B1)などのタンパク質を介した脂質媒介経路に依存して吸収されます 。この輸送システムは、ビタミンの生体利用率と細胞内利用を確保するために特化された専門的な輸送タンパク質群によって制御されています 。
参考)https://academic.oup.com/lifemeta/article/doi/10.1093/lifemeta/loaf008/8068533