高脂血症薬一覧と選択基準や副作用の注意点

高脂血症の治療には複数の薬剤があり、それぞれ作用機序や副作用が異なります。スタチンやフィブラート、PCSK9阻害薬など主要薬剤の特徴と使い分けのポイントを解説します。患者への適切な薬剤選択に迷っていませんか?

高脂血症薬の分類と一覧

高脂血症治療薬の主要分類
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スタチン系薬剤

LDLコレステロールを強力に低下させる第一選択薬。肝臓でのコレステロール合成を抑制する

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フィブラート系薬剤

中性脂肪を低下させHDLコレステロールを上昇させる。高トリグリセリド血症に有効

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PCSK9阻害薬

LDL受容体の分解を抑制し強力にコレステロールを低下。重症例に使用される注射薬

高脂血症治療におけるスタチン系薬剤の種類

 

 

スタチン系薬剤はHMG-CoA還元酵素を阻害することで、肝臓におけるコレステロール合成を抑制する第一選択薬です。日本では現在6種類のスタチンが使用可能で、LDLコレステロール低下作用の強さにより「ストロングスタチン」と「スタンダードスタチン」に分類されます。kanri.nkdesk+3
ストロングスタチンには、ロスバスタチン(クレストール)、アトルバスタチン(リピトール)、ピタバスタチン(リバロ)があり、これらはLDLコレステロールを50%以上低下させることが可能です。ロスバスタチンは最も強力な作用を持ち、日本人では低用量でも十分な効果が得られることが特徴です。hirotsu+1
スタンダードスタチンには、プラバスタチン(メバロチン)、シンバスタチン(リポバス)、フルバスタチン(ローコール)が含まれ、比較的穏やかな作用を持ちます。プラバスタチンはCYP酵素に依存しない代謝経路を持つため、薬物相互作用が少なく、高齢者や多剤併用患者に適しています。inui-iin+2

分類 一般名 商品名 標準投与量 特徴
ストロング ロスバスタチン クレストール 2.5〜5mg/日 最も強力、腎排泄比率高い
ストロング アトルバスタチン リピトール 10mg/日 CKD・糖尿病に適応
ストロング ピタバスタチン リバロ 1〜2mg/日 HDL上昇作用あり
スタンダード プラバスタチン メバロチン 10〜20mg/日 相互作用少ない
スタンダード シンバスタチン リポバス 5〜10mg/日 実績豊富
スタンダード フルバスタチン ローコール 20〜40mg/日 副作用少ない

心血管イベントの既往がある患者や家族性高コレステロール血症では、ストロングスタチンの使用が推奨されます。一方、軽度から中等度の脂質異常症や、副作用リスクが高い患者では、スタンダードスタチンから開始することが一般的です。oishi-shunkei+1

高脂血症におけるフィブラート系とPPARα調節薬

フィブラート系薬剤は、PPARα受容体を活性化することで肝臓での中性脂肪合成を抑制し、トリグリセリド(TG)を低下させると同時にHDLコレステロールを上昇させます。特に高トリグリセリド血症や低HDL血症の患者に有効で、スタチンでは十分に改善しない残存リスクへの対応が可能です。sera-clinic+2
日本で使用可能なフィブラート系薬剤には、ベザフィブラート(ベザトールSR)、フェノフィブラート(トライコア)、クロフィブラート、そして選択的PPARαモジュレーターであるペマフィブラート(パルモディア)があります。ベザフィブラートは徐放錠として1日1〜2回の投与で、中性脂肪を平均20〜50%低下させる効果が報告されています。eki-kuri+1
ペマフィブラートは従来のフィブラート系薬剤と比較して、PPARαに対する選択性が高く、副作用リスクが低いことが特徴です。PROMINENT試験などの大規模臨床試験において、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)への効果も注目されており、腎機能低下患者でも比較的安全に使用できます。pmc.ncbi.nlm.nih+1
⚠️ 併用時の注意点
フィブラート系薬剤とスタチンの併用は、横紋筋融解症のリスクを増加させるため慎重な対応が必要です。特に腎機能障害のある患者では禁忌とされています。ただし、ペマフィブラートは従来のフィブラート系と比較して横紋筋融解症のリスクが低く、スタチンとの併用がより安全に行える可能性があります。minnanokaigo+2
フィブラート系薬剤の主な副作用には、消化器症状(腹部不快感、下痢)、肝機能障害、筋肉痛などがあり、定期的な肝機能検査とCK値のモニタリングが推奨されます。また、胆石形成のリスクも報告されているため、長期投与時には超音波検査などによる定期的な評価が望ましいとされています。apha+2

高脂血症治療における小腸コレステロール吸収阻害薬の特徴

エゼチミブ(ゼチーア)は、小腸刷子縁膜に存在するコレステロールトランスポーターを阻害し、食事由来および胆汁由来のコレステロール吸収を抑制する薬剤です。単剤でLDLコレステロールを平均18.1%低下させ、総コレステロールを12.8%減少させる効果があります。kobe-kishida-clinic+1
エゼチミブの最大の利点は、スタチンとの作用機序が異なるため併用療法が可能であり、相加的な効果が得られることです。配合剤として、エゼチミブ・アトルバスタチン配合錠(アトーゼット)やエゼチミブ・ロスバスタチン配合錠が使用され、単剤でコントロール困難な症例において有効性が示されています。carenet+3
📊 エゼチミブの効果

指標 低下率
LDLコレステロール 18.1%
総コレステロール 12.8%
中性脂肪 2.2%

エゼチミブは1日1回10mgの服用で、食事の影響を受けないため服用タイミングの自由度が高く、患者のアドヒアランス向上に寄与します。副作用は比較的少なく、主なものとして発疹、下痢、吐き気などの消化器症状が報告されていますが、重篤な副作用の頻度は低いとされています。mcsg+1
スタチン不耐性の患者や、筋症状のリスクが高い高齢者においても、エゼチミブは単剤または他剤との併用で安全に使用できる選択肢となります。また、家族性高コレステロール血症やホモ接合体性シトステロール血症の適応も持ち、小児から成人まで幅広い年齢層で使用されています。kanri.nkdesk+1

高脂血症におけるPCSK9阻害薬と新規治療薬の選択

PCSK9阻害薬は、肝臓で産生されるPCSK9タンパク質を阻害し、LDL受容体の分解を抑制することで血中LDLコレステロールを低下させる革新的な治療薬です。日本ではエボロクマブ(レパーサ)とインクリシラン(レクビオ)が使用可能で、スタチンで効果不十分な家族性高コレステロール血症や心血管イベントリスクの高い患者に適応されます。yuhi-clinic+2
エボロクマブは2週間に1回または月1回の皮下注射で投与され、LDLコレステロールを約50〜60%低下させる強力な効果を持ちます。FOURIER試験では、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントを15%減少させることが実証されています。自己注射が可能であり、在宅での投与により通院負担が軽減されます。fuelcells+2
インクリシランは、PCSK9遺伝子のmRNAを分解する低分子干渉RNA(siRNA)製剤で、初回投与後3ヶ月、その後は6ヶ月に1回の投与でLDLコレステロールを約50%低下させます。ORION試験において長期的な効果と安全性が確認されており、年2回の投与で持続的なコレステロール管理が可能です。misaki-internal-medicine-clinic+2
💉 PCSK9阻害薬の比較

薬剤名 投与間隔 LDL-C低下率 投与方法
エボロクマブ 2週〜4週 50〜60% 自己注射可能
インクリシラン 6ヶ月 約50% 医療従事者投与

ベムペド酸(ネクセトール)は、肝臓特異的にATPクエン酸リアーゼを阻害し、コレステロール合成を抑制する経口薬です。スタチンとは異なる経路で作用するため、スタチン不耐性患者や筋症状のリスクが高い患者に有効で、糖尿病発症リスクを上昇させないことが特徴です。jstage.jst+2
PCSK9阻害薬の主な副作用には、注射部位反応(疼痛、紅斑)、上気道感染が報告されていますが、重篤な副作用の頻度は低いとされています。ただし、高額な薬剤費用が課題であり、使用には一定の条件(スタチン最大耐用量でもLDL-C目標値未達、心血管疾患の既往など)が求められます。j-athero+2

高脂血症薬の副作用管理と患者モニタリングの実践

高脂血症治療薬の使用において、副作用の早期発見と適切な管理は治療継続のために極めて重要です。スタチン系薬剤の最も注意すべき副作用は横紋筋融解症で、発症頻度は0.1%未満と稀ですが、重篤化すると急性腎不全を引き起こす可能性があります。minnanokaigo+1
横紋筋融解症の初期症状には、筋肉痛、脱力感、褐色尿があり、これらの症状が出現した場合は直ちに投与を中止し、CK値(クレアチンキナーゼ)と腎機能の測定が必要です。特にフィブラート系薬剤との併用、高齢者、腎機能低下患者、大量のアルコール摂取者ではリスクが高まります。kobe-kishida-clinic+2
肝機能障害は、スタチン投与患者の1〜3%に認められ、通常は投与開始後3ヶ月以内に発現します。AST・ALTが基準値上限の3倍を超える場合は減量または中止を検討し、定期的な肝機能検査(投与開始後1〜3ヶ月、その後3〜6ヶ月ごと)が推奨されます。umin+1
🔍 主要副作用とモニタリング項目

薬剤分類 主な副作用 モニタリング項目 検査頻度
スタチン 横紋筋融解症、肝機能障害 CK、AST/ALT、クレアチニン 投与開始後1〜3ヶ月、以降3〜6ヶ月
フィブラート 筋症状、胆石形成 CK、肝機能、胆嚢超音波 3〜6ヶ月ごと
エゼチミブ 消化器症状、発疹 肝機能 6ヶ月ごと
PCSK9阻害薬 注射部位反応 特になし 投与時に視診

消化器症状(腹痛、便秘、下痢、悪心)は比較的頻度の高い副作用で、特にエゼチミブやフィブラート系で報告されています。これらは軽度であれば経過観察可能ですが、持続する場合は投与時間の変更や食事との関係を見直すことが有効です。mhlw+2
陰イオン交換樹脂(レジン製剤)を長期使用する場合、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収低下が生じる可能性があり、必要に応じてビタミン補充が推奨されます。また、ワルファリンなど他剤の吸収を妨げることがあるため、服用時間を2時間以上空けることが重要です。apha+1
妊娠中・授乳中の女性に対しては、スタチンとフィブラートは催奇形性のリスクがあり禁忌です。妊娠可能年齢の女性には、治療開始前に妊娠の可能性を確認し、適切な避妊指導を行う必要があります。EPA製剤やプロブコールは比較的安全性が高いとされていますが、個別の評価が必要です。med+1
参考リンク:高脂血症治療薬の副作用に関する詳細情報
解説 高脂質血症治療薬の副作用について

 

 




高脂血症治療薬の選択と適正使用 分冊生活習慣病のマルチケア [ 板倉弘重 ]