パリエット(一般名:ラベプラゾールナトリウム)は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる胃酸分泌抑制薬です 。胃粘膜細胞のプロトンポンプ(H⁺, K⁺-ATPase)を阻害することで、胃酸の分泌を強力に抑制します 。
参考)https://www.eisai.jp/products/pariet/pariets
本剤は酸性条件下で活性体(スルフェンアミド体)に変化し、プロトンポンプのSH基を修飾して酵素活性を阻害します 。この作用により、胃酸分泌の最終段階を効果的にブロックすることができます 。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065136
パリエットの主な適応症は以下の通りです :
参考)https://sokuyaku.jp/column/rabeprazole-pariet.html
通常の治療では1日1回10mgを経口投与しますが、病状により1日1回20mgまで増量可能です 。プロトンポンプ阻害剤抵抗性の逆流性食道炎に対しては、1日2回投与も可能な唯一のPPIです 。
参考)https://www.eisai.co.jp/news/pdf/news201752pdf.pdf
パリエットの主な副作用として、発疹、じんま疹、かゆみ、下痢、軟便、腹痛、腹部膨満感、便秘、味覚異常などが報告されています 。これらの副作用の多くは軽度から中等度であり、投与中止により改善します 。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=42252
プロトンポンプ阻害薬としてのパリエットは、他のPPIと比較して薬物相互作用の数が最も少ないという特徴があります 。これは、ラベプラゾールの代謝経路が他のPPIと異なり、CYP2C19酵素の遺伝子多型の影響を受けにくいためです 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2386363/
消化器系副作用として以下が報告されています :
皮膚系副作用では、発疹・発赤、かゆみなどが主に報告されており、多くの場合は軽度です 。
パリエットには注意が必要な重篤な副作用も報告されています。最も重要な重大な副作用として横紋筋融解症があります 。筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とし、異常が認められた場合は直ちに投与を中止する必要があります 。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00049623
その他の重大な副作用として以下が挙げられます :
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=49623
これらの重篤な副作用は頻度は低いものの、発現した場合は生命に関わる可能性があるため、定期的な検査と患者の状態観察が重要です 。特に肝機能異常については、定期的な肝機能検査の実施が推奨されています 。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2014/P201400149/170033000_20900AMZ00603_B102_1.pdf
プロトンポンプ阻害薬の長期使用における懸念の一つとして、骨粗鬆症や骨折リスクの増加があります 。胃酸の長期抑制により、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの吸収が低下し、骨密度の減少を引き起こす可能性が指摘されています 。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/medicine-clinical-questions/uac0bqjvcdap
パリエットに関する製造販売後調査では、骨粗鬆症や骨折の報告は複数件ありましたが、多くの症例で本剤との因果関係は否定されています 。しかし、長期使用時には以下の点に注意が必要です :
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000238049.pdf
適切に使用されている場合、服用期間に制限はありませんが、定期的な経過観察と必要に応じた投与量・投与期間の調整が重要です 。特に高齢者や骨粗鬆症のリスクが高い患者では、カルシウムやビタミンDの補充を検討することもあります。
2025年6月から、パリエットの一般用医薬品版である「パリエットS」が日本で初めて市販されました 。これは国内OTC史上初となるプロトンポンプ阻害薬で、医療用と同量のラベプラゾールナトリウム10mgが配合されています 。
参考)https://www.eisai.co.jp/news/2025/news202541.html
パリエットSの特徴は以下の通りです :
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000006757.html
パリエットSは胃酸の逆流や過剰分泌による症状に対して、医療用と同等の効果を期待できますが、セルフメディケーションでの使用には限界があります 。症状が続く場合や改善しない場合は、医療機関での受診が必要です。
参考)https://www.eisai.jp/faq/faq-item/pariet-pariets-003
要指導医薬品のため、現在はネット販売はされておらず、薬局やドラッグストアで薬剤師から直接説明を受ける必要があります 。これにより、適切な使用方法や注意点について十分な情報提供が行われます。
参考)https://www.family-dr.jp/?column=44844