成人スティル病(Adult-onset Still's Disease: AOSD)は、発熱、皮疹、関節症状を3主徴とする希少な全身性炎症性疾患です。日本の患者数は約4,760人で、人口10万人あたり3.7人という稀な疾患とされています。
🌡️ 発熱の特徴
🔴 皮疹の特徴
🦴 関節症状の特徴
診断には日本の診断基準が用いられ、大項目(発熱、関節症状、定型的皮疹、白血球増加)2項目以上を含む合計5項目以上で診断されます。血清フェリチン値が正常上限の5倍以上の著増は診断の重要な参考所見となります。
成人スティル病の治療において、副腎皮質ステロイドは第一選択薬として位置づけられています。多くの症例でステロイド治療により良好な反応が得られますが、適切な用量設定と副作用管理が重要です。
💊 ステロイド治療の実際
ステロイド治療の副作用として、感染症リスク増加、骨粗鬆症、糖尿病、胃潰瘍、肥満、高血圧などが知られており、長期使用時には特に注意が必要です。約40%の患者でステロイド減量時の再燃が問題となるため、他の免疫抑制薬との併用療法が検討されます。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も初期治療に用いられますが、単独では十分な効果が得られないことが多く、ステロイドとの併用が一般的です。
従来治療に抵抗性を示す症例に対して、生物学的製剤が有効な治療選択肢として確立されています。特に、サイトカイン阻害薬の使用により、治療成績の大幅な改善が報告されています。
🧬 トシリズマブ(抗IL-6受容体阻害薬)
トシリズマブは、成人スティル病の病態に重要な役割を果たすインターロイキン-6(IL-6)を標的とした生物学的製剤です。日本では2013年に成人スティル病に対する保険適応が承認されており、ステロイド抵抗性症例において良好な治療成績が報告されています。
🎯 カナキヌマブ(抗IL-1β抗体)
カナキヌマブは、炎症性サイトカインであるIL-1βを特異的に阻害するヒトモノクローナル抗体です。成人スティル病の病態において、IL-1の異常産生が重要な役割を果たすことから、理論的根拠に基づいた治療薬として注目されています。
海外では成人スティル病に対する使用経験が蓄積されており、難治性症例において有効性が報告されています。日本での保険適応は現在のところありませんが、今後の治療選択肢として期待されています。
ステロイド単独では十分な効果が得られない症例や、ステロイド減量が困難な症例に対して、免疫抑制薬の併用療法が検討されます。
🧪 メトトレキサート(MTX)
関節リウマチ治療で広く使用されるメトトレキサートは、成人スティル病においてもステロイド温存効果が期待される重要な併用薬です。
💉 シクロスポリン
シクロスポリンは、T細胞の活性化を阻害するカルシニューリン阻害薬で、ステロイド抵抗性症例において有効性が報告されています。
🔬 タクロリムス
近年、タクロリムスによる治療成功例も報告されており、特に難治性症例における新たな治療選択肢として注目されています。従来の免疫抑制薬で効果不十分な症例において、良好な治療反応が得られる可能性があります。
成人スティル病は約半数の患者で寛解と再燃を繰り返す慢性経過をたどるため、薬剤耐性や治療抵抗性への対応が重要な課題となります。
⚡ 治療抵抗性の定義と評価
🎯 個別化医療のアプローチ
患者の病型(単発型、多発型、慢性関節型)や重症度に応じた治療戦略の個別化が重要です。特に高齢発症例では、感染症リスクを考慮した慎重な薬剤選択が求められます。
📊 治療効果のモニタリング
血清フェリチン値は治療効果の評価において有用な指標となります。正常化までの期間や再上昇パターンは、治療方針決定の重要な参考情報となります。
🔄 治療戦略の見直し
初期治療で十分な効果が得られない場合、早期に生物学的製剤の導入を検討することで、長期的な予後改善が期待できます。特に関節破壊の進行予防の観点から、積極的な治療介入が推奨されています。
成人スティル病診療ガイドライン
https://www.nanbyou.or.jp/entry/132
慶應義塾大学病院 成人スティル病解説
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000612/