トラムセット配合錠は、本邦初の経口鎮痛剤として2011年に発売された薬剤です 。1錠中にトラマドール塩酸塩37.5mgとアセトアミノフェン325mgを配合した合剤で、この2成分の相乗効果により従来の単剤よりも優れた鎮痛効果を発揮します 。WHOの三段階除痛ラダーにおいて「ステップ2」に位置付けられた弱オピオイド鎮痛薬として、多様な疼痛疾患に対して有効性を示すことが期待されています 。
参考)https://innovativemedicine.jnj.com/japan/press-release/20110719
慢性疼痛の有病率は国内で22.9%に上るとされ、約2,200万人の患者が慢性疼痛に悩まされているという大規模疫学調査結果があります 。従来のNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)では効果が不十分な症例に対して、トラムの痛み止めは新たな治療選択肢として重要な役割を果たしています 。
参考)https://h-ohp.com/column/3807/
トラマドール塩酸塩の作用機序は、複数の経路を通じて鎮痛効果を発現する点で従来の鎮痛薬と異なります 。主要な作用機序として、μオピオイド受容体への作用とモノアミン再取り込み阻害作用の2つが挙げられます 。
参考)https://med.mochida.co.jp/medicaldomain/otherareas/tramcet/info/mechanism.html
μオピオイド受容体に対しては、トラマドール本体よりも活性代謝物M1の方が約175倍高い親和性を示します 。この代謝物M1は肝臓でCYP2D6という酵素によってトラマドールから生成され、μオピオイド受容体に強力に結合することで鎮痛効果を発揮します 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067643.pdf
モノアミン再取り込み阻害作用では、ノルアドレナリンとセロトニンの再取り込みを阻害することで下行性疼痛抑制系を活性化させます 。この作用により、特に神経障害性疼痛に対して効果的とされています 。
参考)https://www.min-iren.gr.jp/news-press/shinbun/20130819_16655.html
日本緩和医療学会のがん疼痛ガイドラインでもトラマドールの薬理学的知識が詳しく解説されています
トラムセット配合錠の標準的な投与方法は、成人に対して1回1錠、1日4回の経口投与です 。投与間隔は4時間以上空ける必要があり、症状に応じて適宜増減可能ですが、1回2錠、1日8錠を超えて投与してはいけません 。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_product?id=00062002
空腹時の投与は避けることが推奨されており、食後投与により副作用の軽減が期待できます 。また、慢性疼痛に対しては定時投与が基本となり、痛いときだけ服用する頓用薬とは異なり、規則正しく服用し続けることで長引く痛みを抑制します 。
参考)https://med.mochida.co.jp/pamphlet/book_12913.pdf
高齢者への投与では特に注意が必要で、一般的に高齢者は生理機能が低下していることが多く、代謝・排泄が遅延し副作用が現れやすいため、患者の状態を観察しながら慎重に投与する必要があります 。腎機能低下患者では血清中トラマドールの半減期とAUCが健康成人に比べてそれぞれ最大1.5倍および2倍となるため、投与間隔を延長するなど慎重な投与が求められます 。
参考)https://www.min-iren.gr.jp/news-press/shinbun/20210302_42416.html
トラムセット配合錠の主要な副作用として、消化器系では悪心(41.4%)、嘔吐(26.2%)、便秘(21.2%)の発現頻度が高いことが報告されています 。これらの副作用は服用初期に現れることが多く、投与1日目から発現する症例もあります 。
精神・神経系の副作用として、全身のふるえ、ふらつき、めまい、眠気が報告されており、50歳代から90歳代まで幅広い年齢層で発現が確認されています 。特に高齢者では傾眠傾向が強く現れる傾向があり、90代女性の症例では服用開始4日目に傾眠傾向が認められ、中止により改善した報告があります 。
眠気やめまい、意識消失が起こることがあるため、投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意が必要です 。高齢者では特に鎮静作用による上気道閉塞や呼吸抑制が起きやすく、舌根沈下や気道閉塞のリスクが高まります 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=63379
民医連の副作用モニター情報では高齢者のトラマール使用事例が詳しく解説されています
トラマドールを含む弱オピオイドによる便秘は、一般的な便秘薬では治りにくい特徴があります 。この便秘はオピオイド誘発性便秘(OIC: Opioid-Induced Constipation)と呼ばれ、腸管のオピオイド受容体を刺激することで消化管の蠕動運動が抑制されることが原因です 。youtube
参考)https://note.com/mainstream_tosh/n/n7c7350c660f8
従来の酸化マグネシウムなどの一般的な便秘薬では効果が限定的であり、患者の生活の質を大きく低下させる要因となります 。便秘により腹部膨満感、食欲低下、さらには離床障害の原因にもなるため、適切な対策が重要です 。youtube
この問題に対して、スインプロイク錠(ナルデメジン)が効果的な治療選択肢として注目されています 。スインプロイクは末梢性オピオイドアンタゴニストであり、腸管のオピオイド受容体を選択的に阻害することで、中枢の鎮痛作用を保持しながら腸管機能を改善します 。youtube
緩和ケア医による詳しいスインプロイクの使用法解説が参考になります
トラマドールは精神科・心療内科の薬剤との相互作用に注意が必要です 。特にSSRI/SNRIとの併用では、セロトニン症候群のリスクが高まるため慎重な管理が求められます 。
参考)https://www.cocorone-clinic.com/column/tramadol.html
ICU入院中の高齢者において、トラマドール単剤でもせん妄のリスクが高いことが報告されており、うつ病既往や在宅でのSSRI/SNRI使用がある患者では特に注意が必要です 。
MAO阻害剤との併用は禁忌とされており、投与中止後2週間以内の患者にも使用できません。また、てんかん既往患者やけいれん発作の既往がある患者では、けいれん閾値を低下させる可能性があるため慎重投与が必要です。
妊娠中の安全性は確立されておらず、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与が考慮されます 。授乳中の使用についても同様に慎重な判断が求められます 。
参考)https://www.nippon-zoki.co.jp/mtassets/files/6e1fd64a5f268dd879e1595216b1330186ba2200.pdf
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