ブロプレス効果と降圧作用の臓器保護機序

ブロプレスは高血圧治療に広く用いられるARB薬剤ですが、その降圧効果だけでなく心臓や腎臓への保護作用も注目されています。医療従事者として知っておくべき作用機序や適切な使用法とは何でしょうか。

ブロプレス効果の作用機序

ブロプレスの主要な効果
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AT1受容体遮断作用

アンジオテンシンIIの受容体をブロックし、血管収縮を抑制します

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臓器保護作用

心臓・腎臓への負担を軽減し、長期的な予後改善に寄与します

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持続的降圧効果

1日1回の投与で24時間安定した血圧コントロールを実現します

ブロプレスの基本的な薬理作用

 

 

 

ブロプレス(カンデサルタン シレキセチル)は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)に分類される降圧薬です。有効成分のカンデサルタン シレキセチルは体内で速やかに加水分解され、活性代謝物であるカンデサルタンへと変換されるプロドラッグとして設計されています。

 

参考)高血圧症治療薬「ブロプレス錠(2・4・8・12)カンデサルタ…

カンデサルタンは、血管平滑筋や心臓、腎臓に存在するアンジオテンシンII受容体(AT1受容体)に選択的に結合し、アンジオテンシンIIの作用を競合的に阻害します。アンジオテンシンIIは強力な血管収縮作用を持ち、血圧上昇や心臓・腎臓への負担増加をもたらす物質ですが、ブロプレスはこの受容体への結合をブロックすることで、血管を拡張させ血圧を低下させます。

 

参考)降圧剤「カンデサルタン(ブロプレス)」の効果・副作用・飲み合…

ARBの特徴として、ACE阻害薬と異なりキマーゼ経路で産生されるアンジオテンシンIIの作用も抑制できる点が挙げられます。心臓組織ではアンジオテンシンII産生の約7割がキマーゼ経路によるとされており、ARBはACE阻害薬よりも広範囲にアンジオテンシンIIの働きを抑制できる可能性があります。

 

参考)https://www.takanohara-ch.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/10/di201609.pdf

ブロプレスの降圧効果と持続時間

ブロプレスは1日1回の経口投与で24時間にわたり安定した降圧効果を発揮します。成人の高血圧症に対しては、通常4~8mgから開始し、必要に応じて12mgまで増量可能です。腎障害を有する患者では2mgから開始し、8mgまでの増量が推奨されています。

 

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=45318

臨床試験では、ブロプレスによる降圧効果が早朝高血圧や夜間高血圧の改善にも有用であることが示されています。長時間作用型であるため、次回服用までの血圧変動を抑え、一貫した血圧管理を実現します。

 

参考)https://www.fukuuni-shinnai.jp/vascular/pdf/2012/vs_7_7.pdf

他のARBと比較すると、降圧力の強さは中等度に位置づけられます。
アジルサルタンオルメサルタンと比較すると降圧効果はやや弱めですが、副作用が少なく忍容性が高いという特徴があります。このため、過度の降圧を避けたい高齢者や、副作用リスクを最小限にしたい患者に適した選択肢となります。

 

参考)循環器医から見た高血圧薬の選び方|平塚市の一般内科・循環器内…

ブロプレスの心臓・腎臓保護作用

ブロプレスの効果は単なる降圧作用にとどまらず、心臓や腎臓に対する臓器保護作用も重要な特徴です。アンジオテンシンIIは心筋肥大、心筋線維化、腎臓の糸球体硬化を促進する因子として知られており、これらの作用を抑制することで臓器障害の進行を遅らせることができます。

 

参考)高血圧治療薬『カンデサルタン(ブロプレス)』

慢性心不全に対しては、軽症~中等症の患者でACE阻害薬の投与が適切でない場合にブロプレスが適応となります(ただし12mg錠を除く)。心不全患者に対する臨床試験では、プラセボ群と比較して駆出分画の有意な増加、左室収縮末期径および心胸郭比の有意な減少が認められています。血管拡張による前負荷と後負荷の軽減により、心臓への負担が減少し、心不全の予後改善に寄与します。

 

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

腎保護作用としては、糸球体内圧の低下や尿蛋白の減少効果が報告されています。特に慢性腎臓病を背景に持つ高血圧患者では、ブロプレスをはじめとするARBが第一選択薬として推奨されることが多くあります。腎実質性高血圧症に対しても保険適応があり、2mgから開始して8mgまで増量可能です。

 

参考)ブロプレス錠2の基本情報(作用・副作用・飲み合わせ・添付文書…

ブロプレスの用法用量と服用方法

高血圧症(成人)
通常、成人には1日1回4~8mgを経口投与し、必要に応じて12mgまで増量します。腎障害を有する患者では2mgから開始し、必要に応じて8mgまで増量します。​
高血圧症(小児)
1歳以上6歳未満の小児では、体重kgあたり0.05~0.3mgを1日1回投与します。6歳以上の小児では、2~8mgを1日1回投与し、必要に応じて12mgまで増量可能です。​
腎実質性高血圧症
通常、成人には2mgから開始し、必要に応じて8mgまで増量します。​
慢性心不全
慢性心不全(軽症~中等症)でACE阻害薬の投与が適切でない場合、成人には4mgから開始し、必要に応じて8mgまで増量します。少量から開始する必要がある患者では2mgから開始することもあります。
低血圧関連の副作用に対する忍容性を確認する目的で、2mg投与は4週間を超えて行わないこととされています。

 

参考)ブロプレス錠8の基本情報(副作用・効果効能・電子添文など) …

飲み忘れた場合は、気づいた時点で1回分を服用しますが、次回服用時間まで8時間以上空ける必要があります。2回分を一度に服用してはいけません。​

ブロプレスの副作用と安全性

ブロプレスの副作用は全体的に軽微で、忍容性が高いとされています。しかし、重大な副作用として以下のものが報告されているため、注意深い観察が必要です。

 

参考)降圧薬の選び方 1 ARB、ACE、Ca拮抗薬 - 心臓クリ…

重大な副作用

その他の副作用

  • 循環器系:めまい、ふらつき、立ちくらみ、動悸などが報告されています。特に服用開始時にめまいやふらつきが出現することがありますが、血中濃度が安定すると症状は軽減する傾向があります​
  • 精神神経系:頭痛、頭重感、不眠、眠気など​
  • 過敏症:発疹、湿疹、蕁麻疹、そう痒、光線過敏症など​

慢性心不全患者では、立ちくらみ、低血圧、ふらつきの発現頻度が5%以上と高めに報告されています。​
ACE阻害薬と比較して、ARBであるブロプレスは咳の副作用が非常に少ないという利点があります。ACE阻害薬ではブラジキニンの蓄積により空咳が高頻度で発現しますが、ブロプレスではこの機序が関与しないため、咳の副作用はほとんど見られません。

 

参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/4fec1d886fad5de4fc9ef72f0878bec8.pdf

ブロプレスの併用注意と禁忌

併用禁忌
糖尿病患者におけるアリスキレンフマル酸塩(ラジレス)との併用は禁忌とされています。レニン-アンジオテンシン系阻害作用が過度に増強され、腎機能障害、高カリウム血症、低血圧のリスクが上昇するためです。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071254.pdf

併用注意
以下の薬剤との併用には注意が必要です。

 

参考)ブロプレス錠12との飲み合わせ情報[併用禁忌(禁止)・注意の…

  • カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレンなど):血清カリウム値が上昇する可能性があります

    参考)https://www.wam.go.jp/wamappl/bb11gs20.nsf/0/3bbf7db34fa6fce049257083000fb4fb/$FILE/siryou5,6.pdf

  • カリウム補給剤:高カリウム血症のリスクが増加します​
  • 利尿剤フロセミドなど):併用により降圧作用が増強されることがあります​
  • アンジオテンシン変換酵素阻害剤:レニン-アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性があります​
  • 非糖尿病患者におけるアリスキレンフマル酸塩:腎機能障害、高カリウム血症、低血圧のリスクが増加します​

手術前の注意点として、麻酔中や手術中に高度な血圧低下を起こす可能性があるため、手術前24時間はブロプレスの投与を避けることが望ましいとされています。

 

参考)医療用医薬品 : ブロプレス (ブロプレス錠2 他)

また、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与禁忌です。胎児への影響が懸念されるため、妊娠が判明した時点で速やかに投与を中止する必要があります。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00063377.pdf

ブロプレス効果を最大化する臨床的ポイント

適切な患者選択
ブロプレスは以下のような病態で特に恩恵が大きいとされています。

 

参考)高血圧の薬の選び方|種類・効果・副作用を循環器専門医が解説【…

  • 心筋梗塞後の患者
  • 慢性心不全(軽症~中等症)
  • 心筋障害を伴う高血圧
  • 腎障害を有する高血圧
  • 糖尿病や脂質異常症を伴う高血圧

服薬指導のポイント
服薬アドヒアランスの向上には、患者への適切な説明が重要です。降圧効果は服用開始後数週間で安定するため、初期のめまいやふらつきが出現しても自己判断で中止しないよう指導します。​
家庭血圧測定を推奨し、測定記録を診察時に持参してもらうことで、投与量の調整がスムーズに進みます。特に早朝血圧や夜間血圧の変動を把握することで、より適切な用量設定が可能になります。​
定期的なモニタリング
腎機能(血清クレアチニン、BUN、eGFR)と血清カリウム値の定期的なチェックが必要です。特に高齢者、腎機能低下例、カリウム保持性利尿薬やカリウム補給剤を併用している患者では、高カリウム血症のリスクが高まるため、より慎重なモニタリングが求められます。​
肝機能検査(AST、ALT、γ-GTPなど)も定期的に実施し、異常が認められた場合は投与中止を含めた適切な対応が必要です。​
糖尿病患者では低血糖のリスクがあるため、脱力感、空腹感、冷汗、手の震え、集中力低下などの症状に注意するよう患者教育を行います。​
他のARBとの使い分け
ARBの中でもブロプレスは中等度の降圧力を持ち、副作用が少ないバランスの取れた薬剤として位置づけられます。より強力な降圧が必要な場合はアジルサルタン(アジルバ)やオルメサルタン(オルメテック)への変更を検討し、逆に高齢者で過度の降圧を避けたい場合はロサルタン(ニューロタン)への変更も選択肢となります。

 

参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/6368

ブロプレスは腎実質性高血圧症と慢性心不全に対する適応を持つ点が他のARBと異なる特徴であり、これらの病態を合併する高血圧患者では第一選択薬として考慮されます。​
ブロプレスの効果を最大限に引き出すためには、患者背景、合併症、併用薬を総合的に評価し、個別化した治療戦略を立てることが医療従事者に求められます。

 


「社会の裏側!」 25……武田薬品工業のニセ高血圧治療薬「ブロプレス」問題は、何を物語っているのか。その衝撃的背景! ニッポン人の心と体を救う山田流「時事呆談」: 同社は、この研究に対して総額で「約25億円」をこれらの大学に「寄付」していたと言うのだが……