オキシカム系とコキシブ系の特徴や違い、使い分け

オキシカム系とコキシブ系は、どちらもNSAIDsの一種ですが、作用機序や副作用プロフィールに違いがあります。それぞれの薬剤の特徴を理解し、患者の病態に応じた適切な選択が重要ですが、実際の臨床現場ではどのように使い分けるべきでしょうか?

オキシカム系とコキシブ系の違い

この記事のポイント
💊
オキシカム系の特徴

長い半減期を持ち、1日1~2回の投与で効果が持続する酸性NSAIDs。COX-1とCOX-2を非選択的に阻害する

🎯
コキシブ系の選択性

COX-2を選択的に阻害し、胃腸障害のリスクが低減。心血管系リスクには注意が必要

⚖️
臨床での使い分け

患者の胃腸障害リスク、心血管リスク、疼痛の種類により最適な薬剤を選択

オキシカム系NSAIDsの薬理学的特徴

 

 

オキシカム系NSAIDsは、4-ヒドロキシ-1,2-ベンゾチアジン3-カルボキサミド誘導体を基本骨格とする酸性NSAIDsで、従来のカルボン酸系NSAIDsとは構造的に異なる特徴を持っています。代表的な薬剤には、ピロキシカム(フェルデン)、アンピロキシカム(フルカム)、ロルノキシカム(ロルカム)、メロキシカム(モービック)などがあります。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5300000/

オキシカム系の最大の特徴は、血漿タンパク質との結合率が高く、一般的に半減期が長いことです。多くのオキシカム系薬剤は1日1~2回の投与で十分な効果を発揮し、患者のアドヒアランス向上に寄与します。ただし、ロルノキシカムは例外的に半減期が短く(T1/2:約4時間)、血中濃度の立ち上がりが速いという特性を持ち、急性疼痛への対応に適しています。

 

参考)http://www.keio-palliative-care-team.org/medical/medical/handbook_pdf/manual02_02.pdf

作用機序としては、シクロオキシゲナーゼ(COX)-1とCOX-2の両方を非選択的に阻害し、プロスタグランジンの生成を抑制することで抗炎症・鎮痛・解熱作用を発揮します。興味深いことに、オキシカム系は他のNSAIDsとは異なる結合様式でCOX活性部位に作用することが明らかになっています。4-ヒドロキシル基がSer-530と水素結合を形成し、2つの水分子を介した極性相互作用によって独特の結合ポーズを示します。

 

参考)http://iryogakkai.jp/2011-65-12/639-42.pdf

コキシブ系NSAIDsのCOX-2選択性

コキシブ系NSAIDsは、COX-2選択的阻害薬として新たに設計された薬剤群であり、COX-1とCOX-2の立体構造の違いを利用して開発されました。日本国内で承認されている代表的なコキシブ系薬剤はセレコキシブセレコックス)で、2007年6月に保険適用となりました。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/10/100_2888/_pdf

セレコキシブは極性のスルホンアミド基とメチルフェニル基を有し、構造的にアルギニンの120位に結合するカルボキシル基を持たないという特徴があります。この構造的特徴により、炎症や痛みに関連するCOX-2を選択的に阻害する一方で、胃粘膜保護や腎血流維持、血小板機能に重要なCOX-1への影響を最小限に抑えることができます。

 

参考)急性期治療(消炎鎮痛剤)

臨床試験においては、セレコキシブの鎮痛効果は従来型NSAIDsであるロキソプロフェンと同等であることが示されています。また、大規模臨床試験であるCLASS試験やVIGOR試験では、消化管傷害や出血のリスクが従来型NSAIDsの半数以下であることが確認されました。

 

参考)https://www.lifescience.co.jp/cr/zadankai/0712/1.html

ただし、コキシブ系薬剤については重要な注意点があります。海外において、ロフェコキシブ(商品名ビオックス、日本未発売)やバルデコキシブ(商品名ベクストラ)などの一部のCOX-2選択的阻害薬が、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系血栓塞栓性事象のリスク増加により市場から撤退しています。セレコキシブについても、用量依存的な心血管リスクの増加が報告されており、特に高用量での長期使用には慎重な評価が必要です。

 

参考)NSAIDで心筋梗塞リスクが増大?44万例の調査/BMJ|医…

オキシカム系とコキシブ系の副作用プロフィール比較

オキシカム系とコキシブ系NSAIDsの最も重要な違いは、副作用プロフィールにあります。以下の表に主な違いをまとめました。

 

副作用 オキシカム系 コキシブ系
胃腸障害 比較的高リスク(COX-1阻害による) 低リスク(COX-1への影響が少ない)
出血傾向 あり(血小板機能抑制) 少ない(血小板機能への影響小)
腎障害 あり(PG合成抑制) あり(従来型と同等)
心血管系リスク 比較的低い 用量依存的増加の報告あり
浮腫 特にオキシカム系で多い 注意が必要

消化器系副作用については、オキシカム系がCOX-1とCOX-2を非選択的に阻害するため、胃粘膜保護に必要なプロスタグランジン産生も抑制してしまい、胃痛、胃潰瘍、消化管出血などのリスクが高くなります。特に長期投与が必要な慢性疾患患者では、プロトンポンプ阻害薬H2ブロッカーなどの胃粘膜保護薬の併用が推奨されます。

 

参考)ロキソニンとセレコックスの違い。併用は可能?

一方、コキシブ系はCOX-2選択性が高いため、胃腸障害のリスクは有意に低減されています。しかし、腎障害については、COX-2も腎臓でのプロスタグランジン合成に関与しているため、コキシブ系でも従来型NSAIDsと同等の注意が必要です。​
心血管系リスクについては、コキシブ系特有の問題として認識されています。セレコキシブの大腸腺腫予防試験では、プラセボ群と比較して用量依存的に心血管複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全)のハザード比が上昇することが示されました(200mg1日2回:ハザード比2.3、400mg1日2回:ハザード比3.4)。また、44万例を対象とした大規模調査では、NSAIDsによる急性心筋梗塞リスクは使用開始後最初の1ヵ月が最も高く、用量依存的にリスクが増加することが明らかになっています。​

オキシカム系薬剤の臨床適応と特性

オキシカム系NSAIDsの中でも、各薬剤には独自の特性があり、臨床での使い分けが可能です。ピロキシカムは半減期が約45~50時間と非常に長く、1日1回投与で済むため、慢性関節リウマチ変形性関節症などの慢性疾患に適しています。アンピロキシカムも同様に長い半減期を持ち、慢性炎症性疾患に使用されます。

 

参考)https://www.chiba.med.or.jp/general/info/pdf/11-1.pdf

メロキシカム(モービック)は、オキシカム系の中でもCOX-2選択性がやや高い特徴を持ち、消化管粘膜障害が少ない安全なNSAIDsとして位置づけられています。そのため、胃腸障害のリスクがある患者でも比較的使いやすい薬剤です。適応疾患は、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群などと幅広くなっています。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu/14/1/14_1_11/_pdf

ロルノキシカム(ロルカム)は、オキシカム系の中では例外的な薬理プロフィールを持っています。Tmax(最高血中濃度到達時間)が約0.5時間と速やかで、半減期が約4時間と短いため、蓄積性が少なく、急性疼痛への対応に優れています。前臨床試験の段階から、あらゆる標準的な疼痛・炎症動物モデルにおいて顕著な鎮痛・抗炎症作用を示しました。COX-1とCOX-2をバランスよく抑制する特性を持ち、急性疼痛の抑制に適した薬理プロフィールを有すると考えられています。

 

参考)https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2023/09/52890/

オキシカム系全般の副作用としては、浮腫が比較的多いことが知られており、心不全患者や高齢者では特に注意が必要です。また、半減期が長い薬剤では薬物の蓄積が懸念されるため、腎機能低下患者では用量調整や投与間隔の延長を考慮する必要があります。

 

参考)https://www-yaku.meijo-u.ac.jp/Research/Laboratory/chem_pharm/mhiramt/EText/Diseases_Drugs/NSAIDs.htm

コキシブ系の臨床における位置づけと使用上の注意

コキシブ系NSAIDsであるセレコキシブは、日本では2007年に承認され、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘炎などの適応で使用されています。セレコキシブの最大の利点は、COX-2選択性による胃腸障害リスクの低減です。

 

参考)医療用医薬品 : セレコックス (セレコックス錠100mg …

臨床的には、以下のような患者でセレコキシブが優先的に選択されることがあります。

 

日本での臨床試験では、セレコキシブの鎮痛効果はロキソプロフェンと同等であることが確認されています。消炎、鎮痛、解熱作用のバランスが良く、特に慢性的な炎症性疼痛に対して有効性が期待できます。​
しかし、セレコキシブの使用にあたっては、心血管系リスクに対する慎重な評価が不可欠です。添付文書には警告として、「外国において、COX-2選択的阻害薬等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象の発生リスクが増加する可能性がある」という記載があります。特に以下のような患者では使用を避けるか、慎重に投与する必要があります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068525.pdf

また、コキシブ系でも腎障害のリスクは従来型NSAIDsと変わらないため、腎機能低下患者や高齢者では注意深いモニタリングが必要です。COX-2も腎臓でのプロスタグランジン合成に関与しており、その抑制により腎血流低下や水・ナトリウム貯留が起こる可能性があります。

 

参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/38df9b97d00a22499a91cbb470cd69c5.pdf

興味深いことに、獣医領域ではヒト用に先んじて犬用のコキシブ系NSAID(フィロコキシブ)が2007年1月に発売され、抗炎症作用だけでなく抗腫瘍効果などさまざまな作用についても研究が進められています。このような知見は、今後のヒト医療における応用可能性を示唆しています。

 

参考)https://www.animalhospital.gifu-u.ac.jp/seminar/pdf/file013_01.pdf

オキシカム系とコキシブ系の使い分けと臨床判断基準

オキシカム系とコキシブ系の使い分けは、患者の背景因子、合併症、併用薬、疼痛の性質などを総合的に評価して決定する必要があります。以下に具体的な選択基準を示します。

 

オキシカム系が推奨される状況:

コキシブ系が推奨される状況:

  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍の既往がある患者​
  • 消化管出血のリスクが高い患者​
  • 抗血小板薬、抗凝固薬を併用している患者​
  • ステロイドを長期使用している患者​
  • 従来型NSAIDsで胃腸障害を経験した患者​
  • 心血管リスクが低く、長期的なNSAIDs投与が必要な慢性疼痛患者​

実際の臨床現場では、米国リウマチ学会のガイドラインや厚生労働省班会議のガイドラインにおいて、NSAIDsはステロイドとともに初期治療時に考慮する補助的薬剤として位置づけられています。選択的COX-2阻害薬は、消化管障害発症については最も有効な製剤であると考えられており、特に胃腸障害のリスクが高い患者群では第一選択となります。​
一方で、オキシカム系の中でもメロキシカムやエトドラクのようにCOX-2選択性が比較的高い薬剤も存在し、これらは従来型NSAIDsとコキシブ系の中間的な位置づけとして、バランスの取れた選択肢となります。また、ジクロフェナクボルタレン)やロキソプロフェン(ロキソニン)もCOX-2選択性が比較的強い部類に入るため、症例に応じて柔軟に選択することが可能です。​
重要なのは、どのNSAIDsを選択する場合でも、最小有効量を最短期間使用するという原則を守ることです。NSAIDsによる急性心筋梗塞リスクは使用開始後最初の1ヵ月が最も高く、用量依存的に増加するため、必要最小限の用量で開始し、効果と副作用を慎重にモニタリングしながら治療を継続することが求められます。また、長期使用が必要な場合は、定期的な血液検査(腎機能、肝機能、血球数)や消化管症状の確認を行い、副作用の早期発見に努めることが重要です。​
<参考リンク:日本内科学会雑誌におけるCOX-2阻害薬に関する詳細な解説>
日本内科学会雑誌 - 非ステロイド抗炎症薬(COX-2阻害薬)
<参考リンク:セレコキシブの心血管リスクに関する臨床試験結果>
NEJM日本語版 - 大腸腺腫予防の臨床試験におけるセレコキシブに関連した心血管リスク
<参考リンク:オキシカム系薬剤の分子レベルでの作用機序>
PMC - Oxicams, a class of nonsteroidal anti-inflammatory drugs and beyond