早期ステロイドを投与すれば重症化を防げると思っていても、感染発症7日以内の投与は予後を悪化させることがあります。 jrs.or(https://www.jrs.or.jp/covid19/faq/treatment/20210311101217.html)
サイトカインストームとは、感染症・自己免疫疾患・薬剤投与などを契機に免疫系が過剰に活性化し、大量のサイトカインが全身へ放出される状態です。 T細胞が活性化されると、OX40(CD134)と呼ばれる生存シグナル物質が放出され、炎症部位でのT細胞の活性化が維持・増幅されます。 この連鎖反応が制御不能になると、多臓器不全・循環動態の破綻を招きます。 neurotech(https://neurotech.jp/saiseiiryou/what-are-cytokains-and-cytokain-storms/)
つまり「免疫が強いほど安全」ではないということです。 stemcells.or(https://stemcells.or.jp/cytokine-storm/)
中心的な炎症性サイトカインはインターロイキン-6(IL-6)であり、高サイトカイン血症と急性腎不全・多臓器障害との関連が研究で明らかにされています。 COVID-19重症例でもIL-6をはじめとするサイトカインレベルの上昇が一貫して確認されており、これが免疫病態改善のターゲットとなっています。 jpeds.or(https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20230328_covid-19_3-2.pdf)
サイトカインストームは感染症の重症化だけでなく、CAR-T療法・免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の副作用としても発症します。 CAR-T療法では多くの場合、投与翌日から14日目までに発症し、典型的には投与2〜3日後に始まり7〜8日持続するとされています。 発症契機を把握しておくことが原則です。 hokuto(https://hokuto.app/post/qgiGpORLM2j2juz5UfJ1)
ステロイド(デキサメタゾン)はサイトカインストームに対する過剰な免疫反応を抑制し、現在最もエビデンスレベルが高い治療薬です。 RECOVERY試験のデザインに準じた投与期間は7〜10日間が標準であり、WHO REACT Working Groupのメタアナリシスでは5〜14日間が対象試験の範囲とされています。 gan911(https://gan911.com/column/3045/)
ただし、投与時期の判断が極めて重要です。 jrs.or(https://www.jrs.or.jp/covid19/faq/treatment/20210311101217.html)
感染発症から7日以内はウイルス増殖期であり、この時期にステロイドを投与すると免疫応答が抑制され、ウイルス排除が遅延するリスクがあります。 酸素投与が不要な軽症例にはステロイドを投与すべきでなく、人工呼吸器や酸素投与が必要な重症例では、7日以内であっても投与検討が妥当とされています。 長期投与では二次感染・血栓化のリスクが増加します。 jrs.or(https://www.jrs.or.jp/covid19/faq/treatment/20210311101217.html)
また、irAE(免疫関連有害事象)では、1型糖尿病や内分泌系irAEなどステロイドを使うべきでない種類のirAEが存在します。 ステロイドの漸減は原則4〜6週間以上かけて行い、急激な減量は再燃を招きます。 疾患の種類と重症度の評価が条件です。 msdconnect(https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2025/09/irae-steroid-management.pdf)
トシリズマブ(アクテムラ®)はIL-6受容体を特異的に阻害することでサイトカインストームの病勢を抑制します。 中外製薬が開発したこの薬剤はもともと関節リウマチ・キャッスルマン病向けであり、CRS(サイトカイン放出症候群)への適応は後から追加されたものです。 chugai-pharm.co(https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20190326160001_827.html)
これは意外かもしれません。 chugai-pharm.co(https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20190326160001_827.html)
体重30kg以上には1回8mg/kgを点滴静注し、30kg未満では1回12mg/kgと体重が軽いほど用量が多くなる点は見落としやすい仕様です。 CAR-T療法後のCRSでは、まず解熱薬(アセトアミノフェン)を投与し、改善が乏しければトシリズマブに移行する段階的アプローチが推奨されます。 ステロイドへの上乗せ投与によりCOVID-19重症例での30日死亡率低下が示されています。 jstct.or(https://www.jstct.or.jp/modules/cart_t/index.php?content_id=30)
一方でCOVID-19単独へのトシリズマブ使用を支持しないデータも存在します。 当初「ステロイドが効くならIL-6阻害薬も効くはず」という仮説のもと試験が進みましたが、統計的有意差が得られなかったコホート研究もあります。 臨床試験の文脈を理解した上で適応を判断することが求められます。 nihs.go(http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly19/05210318.pdf)
参考:CAR-T療法に伴うCRS管理の詳細手順(日本造血・免疫細胞療法学会)
日本造血・免疫細胞療法学会|CAR-T療法におけるCRS治療ガイダンス(トシリズマブ投与手順含む)
血液浄化療法は、炎症性サイトカイン(特にIL-6)を血液から直接吸着・除去することを目的とした治療です。 薬物療法が奏効しない難治例や、急性壊死性脳症(ANE)・HSES型の急性脳症では有効性が示されつつあります。 具体的には血漿交換療法(PE)と血液透析療法(HD)の組み合わせが用いられています。 encephalopathy(https://encephalopathy.jp/nsurvey_data/r4_abe.pdf)
参考:サイトカインストーム型急性脳症への血液浄化療法の研究報告
急性脳症研究班|サイトカインストーム型急性脳症に対する血液浄化療法の後方視的研究(ANE・HSES症例の治療効果)
現行の薬物療法・血液浄化療法でも難治例が存在し、強力な改善効果を示す確立された治療法はまだありません。 そのため、新たなアプローチとして経自律神経的炎症制御や幹細胞投与が研究されています。 stemcells.or(https://stemcells.or.jp/cytokine-storm/)
幹細胞から分泌される抗炎症性サイトカインが、過剰に放出された炎症性サイトカインを制御できるのではないかという仮説に基づき、幹細胞投与の臨床試験が進んでいます。 効果発現までの時間が課題であり、急性期への適応に向けた研究が続いています。 また、OX40-Igによるリガンド結合阻害でT細胞活性化を抑制するアプローチも、2003年の*Journal of Experimental Medicine*報告以来研究が続いています。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%94%BE%E5%87%BA%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4)
| アプローチ | 標的 | 現状 |
|---|---|---|
| 幹細胞投与 | 抗炎症性サイトカイン分泌 | 臨床試験中 |
| OX40-Ig | T細胞活性化シグナル | 開発段階 |
| シンバスタチン | OX40・OX40Lの発現抑制 | 有用性確認済 |
| ACE阻害薬/ARB | 炎症性病態の多経路 | 理論的有効性あり |
| 経自律神経制御カテーテル | 全身炎症反応の神経制御 | 開発中(国内研究) |
ACE阻害薬・ARBはサイトカイン関連の多くの炎症性病態に有効性が示されており、理論的にもサイトカインストーム抑制効果を持つとされています。 既存薬の新たな活用としてIRが注目されており、現場での情報収集が求められます。 stemcells.or(https://stemcells.or.jp/cytokine-storm/)
参考:国内の経自律神経的炎症制御カテーテル開発の詳細(日本医療研究開発機構)