セフメタゾールの略語である「CMZ」は、日本化学療法学会によって制定された公式な略語表記です。この略語標準化により、医療従事者間でのコミュニケーションが円滑になり、処方ミスのリスクも軽減されています。ただし、この略語は日本国内での標準であり、国際的に統一されたものではないことに注意が必要です。
医療現場では、カルテ記載や口頭での指示において「セフメタゾール」と正式名称を使用する代わりに「CMZ」という略語が頻繁に使用されています。特に救急医療や集中治療室などの時間的制約がある場面では、この3文字の略語が迅速な意思疎通に貢献しています。
抗菌薬の略語使用においては、類似した略語との混同を避けるため、医療機関では略語使用に関するガイドラインを設けることが推奨されています。CMZの場合、他の抗菌薬略語との重複はありませんが、処方時には必ず用量・投与方法も併記することが安全な医療提供につながります。
セフメタゾールは第2世代セフェム系抗生物質に分類されますが、より正確にはセファマイシン系抗生物質として位置づけられます。この分類は抗菌スペクトラムと化学構造に基づいて決定されており、第1世代セフェム系よりも広い抗菌範囲を持つことが特徴です。
第2世代セフェム系抗菌薬の中でも、セフメタゾールは特別な位置を占めています。一般的な第2世代セフェム系薬剤であるセフォチアム(CTM)と比較すると、セフメタゾールは嫌気性菌に対してより強力な抗菌活性を示します。これは7位の側鎖にメトキシ基を持つことによる構造的特徴に起因しています。
抗菌薬の世代分類において、セフメタゾールは「2.5世代」と表現されることもあります。これは第2世代の基本的な特性を持ちながら、嫌気性菌に対する活性が第3世代に近いレベルであることを示しています。この独特な位置づけが、腹腔内感染症や婦人科感染症での第一選択薬としての地位を確立しています。
セフメタゾールの抗菌スペクトラムは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、そして特に嫌気性菌に対して優れた活性を示します。特にバクテロイデス属やクロストリジウム属などの嫌気性菌に対する強い抗菌力は、他の第2世代セフェム系薬剤にはない特徴です。
β-ラクタマーゼに対する安定性も、セフメタゾールの重要な特徴の一つです。ESBLを産生しない一般的なβ-ラクタマーゼに対しては高い安定性を示すため、アンピシリン耐性大腸菌などの感染症に対しても有効性を発揮します。ただし、AmpC型β-ラクタマーゼや一部のESBLに対しては不安定であることが知られています。
近年、薬剤耐性菌の増加により、セフメタゾールの適応も慎重に検討される必要があります。特に院内感染で問題となるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)には無効であるため、黄色ブドウ球菌感染症が疑われる場合には、感受性検査結果を確認してから使用することが重要です。
セフメタゾールの臨床適応は主に腹腔内感染症、骨盤内感染症、術後感染症予防の3つの領域に集約されます。腹部外科手術における術前予防投与では、嫌気性菌を含む混合感染のリスクを考慮して、セフメタゾールが第一選択薬として推奨されています。
投与方法については、静脈内投与のみが承認されており、1日2-4回に分けて投与します。成人の標準的な投与量は1回1-2gで、重症感染症では1回2gを1日4回まで増量可能です。腎機能低下患者では、クレアチニンクリアランスに応じた用量調整が必要となります。
投与期間中の注意点として、アルコールとの相互作用によるジスルフィラム様作用があげられます。これはセフメタゾールの化学構造中のN-メチルチオテトラゾール基が原因とされており、投与期間中および投与終了後1週間は飲酒を避ける必要があります。顔面潮紅、動悸、めまい、頭痛、嘔気などの症状が出現する可能性があるため、患者への十分な説明が重要です。
セフメタゾールの薬物動態は、静脈内投与後に速やかに血中濃度が上昇し、約1-1.5時間で最高血中濃度に達します。半減期は約1.2-1.5時間で、主に腎臓から未変化体として排泄されます。組織移行性は比較的良好で、特に胆汁や腹水中への移行が良いことが知られています。
腎機能低下患者における用量調整は、クレアチニンクリアランス値に基づいて行います。Ccr 60-90 mL/minでは標準量の75%、30-60 mL/minでは50%、10-30 mL/minでは25%、10 mL/min未満では12.5%に減量することが推奨されています。血液透析患者では、透析後に追加投与が必要な場合があります。
安全性に関しては、一般的なβ-ラクタム系抗生物質と同様の副作用プロファイルを示します。主な副作用として、過敏症反応(発疹、蕁麻疹)、消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)、肝機能異常(AST・ALT上昇)、血液障害(好酸球増多、血小板減少)などが報告されています。重篤な副作用は稀ですが、アナフィラキシーショックやClostridioides difficile関連下痢症(CDAD)の発現に注意が必要です。
KEGG DRUGによるセフメタゾールの詳細な薬剤情報
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