過換気症候群 過呼吸 違いとは|症状から治療まで

過換気症候群と過呼吸は、呼吸の状態を表すのか症状を表すのかという点で違いがあります。この記事では、医療従事者向けに両者の定義、発症メカニズム、鑑別診断、治療法について詳しく解説します。正確に区別できていますか?

過換気症候群と過呼吸の違い

過換気症候群と過呼吸の基本的な違い
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過呼吸

呼吸回数に変化はなく、呼吸の深さが増加した状態そのものを指す

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過換気症候群

過剰な換気によって二酸化炭素が減少し、呼吸性アルカローシスを引き起こす一連の症候群

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関連性

過呼吸や多呼吸などが過換気症候群の状態を引き起こす原因となる

過換気症候群と過呼吸の定義の違い

 

 

 

過呼吸は呼吸の状態そのものを指す用語であり、呼吸回数に変化はなく呼吸の深さが増加した状態を表します。一方、過換気症候群は過剰な換気が発作的に行われることで、血液中の二酸化炭素濃度が低下し、呼吸性アルカローシスによって引き起こされる一連の症状を指す疾患概念です。つまり、過呼吸は「呼吸の状態」であるのに対し、過換気症候群は「呼吸によって起こる症状」という点で明確に区別されます。

 

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多呼吸という用語も混同されやすいですが、これは深い呼吸の回数が増えることを指し、通常の呼吸の回数も多くなることが一般的です。運動や肉体労働など、通常よりも酸素が多く必要になる場合に生理的に起こる現象です。人は状況にあわせて呼吸の回数や深さを変化させており、酸素需要が高まると呼吸の回数と深さの両方が増加します。​
過換気症候群では、換気(呼吸で体に酸素を取り込んで二酸化炭素として吐き出すこと)のし過ぎによって、体内の二酸化炭素が減少し、血液中の炭酸ガス濃度が低下します。それにより血液のpHがアルカリ性に傾いて電解質バランスが崩れ、意識が遠のいたり、手足がしびれたりといった症状が起こります。この状態が過換気症候群と定義されます。

 

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過換気症候群の病態生理メカニズム

過換気症候群の病態生理は、呼吸性アルカローシスを中心とした一連の生理学的変化によって説明されます。通常、呼吸中枢が血中の酸素と二酸化炭素の濃度やpHを一定に保っていますが、発作的な過換気により動脈血中の二酸化炭素が洗い出されて二酸化炭素分圧が低下し、逆に酸素分圧は正常より上昇します。この結果、血液中のpHが上昇して体がアルカリ側に傾き、呼吸性アルカローシスと呼ばれる状態になります。

 

参考)https://www.itsuki-hp.jp/radio/%E9%81%8E%E6%8F%9B%E6%B0%97%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6

呼吸性アルカローシスに伴い、血液中のカリウム(K)濃度やカルシウム(Ca)濃度が低下します。特に二酸化炭素分圧の低下は脳血管の過剰な収縮をきたし、意識レベルの低下を引き起こし、ひどくなると失神やけいれんをきたすこともあります。また、血清Ca濃度の低下は四肢や口周囲のしびれ感を引き起こし、ひどくなるとテタニー発作と呼ばれる全身の筋硬直や細かいけいれんを招くこともあります。

 

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過換気の状態になると、体内に必要な二酸化炭素が過剰に排出され、血中二酸化炭素濃度が下がります。すると脳が呼吸を抑制する指令を出すため、息苦しさを感じ「もっと吸わなければ」と焦り、呼吸の回数が増えていきます。また、血中二酸化炭素濃度が下がることで血液がアルカリ性に傾き、血管収縮が起きて手足のしびれやめまいなどの症状があらわれ、さらに不安が増強する悪循環を起こすのです。​

過換気症候群の主な症状と臨床像

過換気症候群では多岐にわたる症状が出現しますが、主なものとして以下の症状が挙げられます。

 

呼吸器系の症状として、窒息しそうな息苦しさ(呼吸困難)、呼吸が速くなったり荒くなったりする症状が認められます。患者は息を十分に吸えない感じがして、呼吸が浅く速くなり、胸部の圧迫感や痛みとして胸が締め付けられるような感覚を訴えます。
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神経・筋肉系の症状では、手足の先や口周りのしびれがピリピリとした感覚として現れ、手足の硬直・つっぱり(テタニー)により指や手、足などがこわばり、勝手に曲がってしまうこともあります。特に手の痙攣はトルーソー徴候と呼ばれる特徴的なもので、指を伸展させて手のひらをすぼめ、指の先を接触させる独特の形(助産師の手と呼ばれる)を呈します。めまいや立ちくらみ、頭痛も認められます。
参考)https://medical-term.nurse-senka.jp/terms/2188

循環器系の症状としては、動悸や心臓がドキドキする感覚、脈が速くなる頻脈が出現します。精神的な症状では、強い不安感や恐怖感、非現実感(自分が自分ではないような感覚、周囲が遠い世界のように感じる)、失神感(意識を失いそうになる感覚)が認められます。これらの症状は本人にとって非常に苦痛で、重篤な病気になったのではないかという強い不安を伴いますが、通常は発作が治まれば症状は消え、後遺症を残すことはありません。基本的には時間の経過とともにおさまり、命に関わることはありません。
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過換気症候群の原因とリスク因子

過換気症候群の原因は様々ですが、最も一般的な原因はストレスや不安などの精神的な要因です。精神的な不安や極度の緊張などの心理的ストレスがきっかけとなり発症し、不安や恐怖、緊張などの心理的なストレスが引き金となります。ストレスや不安は自律神経系のバランスを崩し、身体を活動モードに切り替える交感神経が優位になることで、過剰な呼吸を引き起こします。

 

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性格的な傾向として、心配症な人や不安を感じやすい人、几帳面な性格の人などは過換気症候群の発作を起こしやすいといわれています。また、神経質な人、不安症な傾向のある人、緊張しやすい人も発症しやすいとされています。年齢的には10代~20代の若い女性に多いとされていますが、男性や高齢の方、誰にでも起こりうる疾患です。

 

参考)I-04 過換気症候群 - I.その他|一般社団法人日本呼吸…

過換気症候群の原因は精神的な原因だけではありません。激しい運動や肉体労働、疲労がたまっているとき、睡眠不足のときなど、身体的な要素も原因となります。これらの肉体的な疲れが引き金となり、過換気症候群を発症するケースもあります。​
器質的障害は認められず、心因的なものが原因であると考えられています。精神的な緊張から交感神経が過剰に興奮し、頻脈、血圧上昇、呼吸促迫などを引き起こし、動悸、胸内苦悶、呼吸困難感、顔面紅潮などをきたし、それが悪循環となります。パニック状態になる、極度の不安に陥る、過度の緊張状態になるなどすると、突然胸の苦しさや息苦しさを感じ、息をいくら吸っても苦しさが治まらず、過呼吸となり、呼吸困難を感じるのです。​

過換気症候群とパニック障害の関係性

過換気症候群とパニック障害は症状に共通点が多く、しばしば混同されますが、根本的な病態や治療のポイントが異なります。過換気症候群は主に精神的なストレスや不安が引き金となり、過剰な呼吸によって二酸化炭素濃度が低下し、息苦しさ、動悸、手足のしびれなどの身体症状が起こります。発作が治まれば症状は消え、予期不安は少ないこともあります。

 

参考)https://ginza-rengadori.com/blog/post-909/

パニック障害は突然何のきっかけもなくパニック発作を起こし、それが繰り返される精神疾患のことを指します。パニック障害の診断基準は「繰り返されるパニック発作」と「予期不安や回避行動」が特徴です。パニック発作には動悸や心拍数の増加、発汗、体の震え、息切れや息苦しさ、息が詰まるような感覚(窒息感)、胸痛や胸の不快感、吐き気、めまいや気が遠くなる感覚、寒気やほてり、しびれやうずきなどの知覚異常、非現実感、コントロールを失う恐怖、死ぬことへの恐怖といった症状があり、13症状のうち4つ以上の症状が現れる場合をパニック発作と定義します。

 

参考)精神科 心療内科 パニック障害と過換気症候群の違いについて …

過換気症候群は心筋梗塞肺塞栓症といった身体の病気でもパニック障害やうつ病でもみられます。過換気症候群はより多くの疾患背景にまたがる概念となり、身体疾患としては急性心疾患(狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全)、急性呼吸不全(気管支喘息、肺炎、肺塞栓、気胸)、脳血管障害脳梗塞、脳出血)、敗血症、甲状腺機能亢進症、糖尿病性ケトアシドーシス、薬剤などがあり、精神疾患としてはパニック障害、不安障害、うつ病、統合失調症などがあります。​
過換気症候群とパニック発作には、呼吸困難感、動悸、振戦、知覚異常など共通する症状が多く、実際に過換気症候群とパニック症との合併(35~50%程度の一致率)も論じられています。過換気症候群はパニック発作の一部として生じることもあれば、単独で生じることもあります。適切に診断し、それぞれの特性に合わせた治療を行うことが、症状改善への近道となります。

 

参考)過換気症候群|一般のみなさまへ|日本女性心身医学会

過換気症候群の診断と鑑別診断

過換気症候群の診断基準は確立されておらず、除外診断が重要となります。診断において最も重要なのは、医師による詳細な問診です。医師は症状(息苦しさ、胸痛、手足のしびれなど)、症状の開始時期、発症状況(特定の場所、ストレス、疲労など)、発作の頻度や持続時間、発作のきっかけ、既往歴・家族歴、心理的要因(最近のストレスや悩み、不安の程度)、生活習慣(睡眠、食事、喫煙、飲酒、運動習慣)について丁寧に聞き取ります。

 

参考)https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2amp;pk=21

診断のための必要なステップは除外診断です。過換気症侯群では、糖尿病性ケトアシドーシス、肺塞栓、発作性上室性頻拍などの不整脈、心筋梗塞、ギラン・バレー症候群、中毒、アルコール離脱、麻薬離脱など多様な鑑別診断が考えられます。症状が初めてというケースでは、詳細な病歴聴取と身体診察が必要となります。

 

参考)過換気症候群(志賀隆)

特にSpO2が下がっている場合には、過換気症候群と診断してはなりません。またSpO2が正常でも他の病態の除外にはつながらない場合があります。若い患者で代償能が高ければ、過呼吸によって酸素化を保つことが可能であるからです。年齢が若く特に既往のない患者に、典型的な呼吸困難感、めまい、非典型的な胸痛、動悸、頻呼吸、しびれ、手足のテタニーなどが認められた場合に診断を考えます。特に、頻呼吸が収まってしばらく経ったときにバイタルサインや症状が軽快していれば、検査の実施を最小限にとどめることができます。​
鑑別診断として、過換気は呼吸器疾患(肺炎、間質性肺炎、肺血栓塞栓症、気管支喘息、気胸など)、心血管障害(うっ血性心不全、低血圧など)、代謝性疾患(糖尿病性ケトアシドーシスなど)といった多様な病態で認められるため、他疾患を鑑別する必要があります。過換気症候群の診断は、他の疾患を除外した上でなされるため、緊急時にはまず身体的な疾患の有無を確認することが最優先です。

 

参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_18426

過換気症候群の治療法と対処方法

過換気症候群の患者は強い不安を感じていることが多く、その結果、症状がさらに悪化し悪循環に陥りやすい状態になります。しかし、過換気症候群で命を落とすことはないので、まずは安心できるようにすることが重要です。過換気症候群の治療は主に呼吸法の指導、支持的カウンセリング、薬物療法で行われます。

 

参考)過換気症候群の原因や症状、検査、治療について - 日ノ出町呼…

呼吸法の指導が治療の基本であり、適切な呼吸法を習得することが重要です。患者はゆっくりと深い呼吸を意識するよう指導され、横隔膜を使った腹式呼吸を日常的に練習し、呼吸をコントロールする技術を身につけます。これによりストレスの多い状況でも落ち着いて対処できるようになります。発作への簡便な対処としては、ゆっくり呼吸をしたり、少しの間呼吸を止めたりして、心身を落ち着けるといったものがあります。
参考)治療を開始してから治るまでの流れが知りたいです。 |過換気症…

支持的カウンセリングは患者が安心感を得るために行われます。医師やカウンセラーは患者の話を聞き、不安を軽減するよう働きかけます。精神療法や心理療法も併用する場合があります。治療の基本は過換気の発作などの症状に対処しつつ、病気を引き起こしているストレス要因を取り除いていくことです。​
薬物療法として、簡便な対処では不十分な場合には抗うつ剤や抗不安剤を用いた薬物治療を行います。過換気発作が頻繁に起こる人には、予防的に抗不安薬を毎日服用することが必要です。治療開始後は呼吸の練習や服薬を並行して行いつつ、過換気症候群を引き起こしているストレスの原因への対処に努め、症状が出る頻度が減るかどうか経過を見ます。症状が治まったら、薬を少しずつ減らして最終的には中止し、再発しないか様子を見ます。
参考)http://cl-tanaka.com/topics/kokyuki/%E9%81%8E%E6%8F%9B%E6%B0%97%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4/

発作時の正しい対処法としては、まず落ち着かせることが重要です。静かな環境を用意し、吐く時間を長くするように伝えます。口をすぼめて、ろうそくの火を吹き消すように呼吸をさせると、ゆっくり吐きやすくなります。また、声掛けをしながら背中を手でゆっくりとトントンと優しく叩いて、呼吸のリズムをとるようにすると、ゆっくりと呼吸がしやすくなります。大丈夫と伝えて安心させることも重要で、不安は過換気症候群の症状を増悪させるため、看護師は患者に安心させるような声掛けをします。

 

参考)過換気症候群の看護|原因・症状や治療法からみる正しい6つの対…

過換気症候群の予防と再発防止策

過換気症候群の再発予防には適切な呼吸法の習得と日常的な実践が重要です。毎日数分でも良いので、意識的に腹式呼吸を行う習慣をつけることが推奨されます。特にストレスや不安を感じやすい状況の前に、意識して呼吸を整える練習をすることが有効です。普段からリラックスした状態で呼吸法を練習しておくことで、発作時にも落ち着いて対処できるようになります。

 

参考)過換気症候群(Hyperventilation syndro…

生活習慣の改善も再発予防に重要な役割を果たします。7-8時間の質の良い睡眠をとり、バランスの取れた栄養摂取を心がけ、週3-4回の適度な運動を行い、アルコールやカフェインの摂取量を適正化することが推奨されます。これらの生活習慣の改善は全体的な健康状態を向上させ、過換気症候群の再発リスクの低減が期待できます。​
ストレス管理も予防に不可欠です。ストレス源の特定を行い、どのような状況や出来事が自分にとってストレスになるのかを把握することから始めます。運動、趣味、音楽鑑賞、読書、友人との会話など、自分がリラックスできたり気分転換になったりする方法を見つけ、日常生活に意識的に取り入れます。筋弛緩法(体の各部位の筋肉を順番に緊張させてから緩める方法)や瞑想、マインドフルネスなどは、日頃から実践することでリラックス状態に入りやすくなり、ストレス耐性を高める効果が期待できます。

 

参考)過換気症候群の治療法とは?発作時の対処と根本改善の方法|コラ…

環境調整と適切な支援体制の構築も再発予防に重要です。ストレスの少ない職場環境の整備、家庭内のコミュニケーション改善、リラックスできる空間の確保といった環境調整のポイントがあります。また、家族や友人の理解と協力、専門家によるフォローアップ、サポートグループへの参加といった支援体制の構築が含まれます。これらの要素を整えることで再発のリスクを低減し、より安定した状態を維持できる可能性が高まります。​
日本呼吸器学会の過換気症候群の診断・治療に関する公式ガイドライン
済生会の過換気症候群の症状・原因・治療に関する詳細な解説
過換気症候群の病態生理と臨床的視点に関する学術論文

ダカーポ 1982年6月20日号六本全書の三面記事的読み方 阪神駄目虎史全データ 週刊スリラー 国鉄民営化 お手紙 過換気症候群