免疫性血小板減少症(ITP)の治療において、最も重要な禁忌事項の一つが血小板輸血の適応判断です。特に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)やヘパリン起因性血小板減少症(HIT)においては、血小板輸血が血栓症状を増悪させるため絶対禁忌とされています。
TTPにおける血小板輸血禁忌の理由:
HITにおける注意点:
血液塗抹標本の確認は、血小板凝集、異常細胞、破砕赤血球の有無を確認する上で極めて重要です。破砕赤血球の確認は、止血治療に血小板輸血を使用可能(ITP)か、禁忌(TTP)かを判断する重要な材料となります。
血小板凝集が存在する場合は、採血不良やEDTA依存性血小板減少を考慮し、CBCの再検査、ヘパリンあるいはクエン酸採血での血小板数確認が必要です。
2025年3月に厚生労働省から発出された通知により、複数の抗がん剤で免疫性血小板減少症の副作用が新たに判明しています。これらの薬剤使用時には、定期的な血液検査による監視が不可欠です。
テセントリク(アテゾリズマブ):
タフィンラー・メキニスト:
これらの薬剤による血小板減少は、薬剤性免疫性血小板減少症として分類され、原因薬剤の中止により改善することが多いですが、重篤な出血症状を呈する場合があります。
監視すべき検査項目:
副腎皮質ステロイドは免疫性血小板減少症の第一選択治療薬ですが、以下の条件では禁忌または慎重な投与が必要です。
絶対禁忌条件:
相対的禁忌・慎重投与:
小児ITPガイドラインでは、粘膜出血のある新規診断ITP患者において、副腎皮質ステロイド治療が禁忌である場合、免疫グロブリン静注療法(IVIG)を推奨しています。
プレドニゾロン30mg/日以上投与時の注意点:
副作用管理のポイント:
免疫グロブリン静注療法(IVIG)は副腎皮質ステロイドと並ぶ免疫性血小板減少症の第一選択治療ですが、適応と制限を理解して使用する必要があります。
IVIG推奨例:
投与量と方法:
主な副作用:
慎重投与が必要な患者:
IVIGによる治療効果は一過性であることが多く、引き続いて副腎皮質ステロイドによる維持療法を実施することが一般的です。
無又は低ガンマグロブリン血症患者での使用実績:
39例中7例(17.9%)に副作用が認められ、投与回数当たりの発生頻度は8.9%でした。発熱、悪寒、嘔気等の副作用が主に報告されています。
小児の免疫性血小板減少症治療では、成人とは異なる治療目標と配慮が必要です。2022年の日本小児血液・がん学会ガイドラインでは、以下の点が強調されています。
治療目標の相違:
ファーストライン治療の選択:
セカンドライン治療:
特殊な状況での管理:
生活管理のポイント:
小児では成人に比べて自然寛解率が高いため、慎重な経過観察も重要な治療選択肢となります。出血症状が軽微または無症状の場合、積極的な治療介入よりも定期的な経過観察を選択することも多くあります。
緊急時の対応:
重症出血時には、血小板輸血、IVIG、メチルプレドニゾロンパルス療法などの緊急治療を迅速に実施する必要があります。特に頭蓋内出血や消化管出血などの生命に関わる出血では、血小板数20,000/μL以上を目標とした積極的な治療が推奨されます。
日本小児血液・がん学会の2022年小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン
原三信病院による特発性血小板減少性紫斑病の詳細な疾患ガイド