オピアト注射液の適応と医療従事者向け投与管理

オピアト注射液は医療用麻薬として疼痛管理に用いられる注射製剤です。アヘンアルカロイドとアトロピンを配合したこの薬剤の特性、適応症、投与方法、副作用、そして医療従事者が知っておくべき管理上の注意点について詳しく解説します。効果的な疼痛管理のためにどのように使い分けるべきでしょうか?

オピアト注射液の適応と投与管理

オピアト注射液の基本特性
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主成分構成

アヘンアルカロイド塩酸塩とアトロピン硫酸塩を配合した医療用麻薬注射剤

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主な適応

激しい疼痛時の鎮痛、鎮静、鎮痙を目的として使用

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投与経路

皮下注射による投与が基本で、通常成人1回10mg(0.5mL)を使用

オピアト注射液の成分と薬理作用

 

 

 

オピアト注射液は、日本薬局方に収載されている医療用麻薬注射剤で、アヘンアルカロイド塩酸塩を主成分として含有しています。1mL中にアヘンアルカロイド塩酸塩40mgとアトロピン硫酸塩0.3mgが配合されており、モヒアト注射液やパンアト注射液などの商品名でも知られています。この製剤の特徴は、けしの実から抽出されるアヘンアルカロイドであるモルヒネやコデインを含み、強力な鎮痛作用を発揮する点にあります。

 

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00017736.pdf

アヘンアルカロイドは中枢神経系に広く分布するμ(ミュー)受容体、κ(カッパ)受容体、δ(デルタ)受容体の3種類のオピオイド受容体に作用し、特にμ受容体への結合が鎮痛効果の主要なメカニズムとなっています。配合されているアトロピンは副交感神経遮断作用を持ち、消化管の蠕動運動を抑制することで、鎮痙作用を発揮します。

 

参考)https://municipal-hospital.ichinomiya.aichi.jp/data/media/ichinomiya-hp/page/medical/druginformation/dinews2018.3.pdf

モルヒネを中心とするアヘンアルカロイドの分子構造には、鎮痛作用の発現に必須とされるN-メチルフェニルピペリジン環(NMPP)が存在し、この構造が欠けると効果が著しく低下することが知られています。また、モルヒネの3位のフェノール性OH基をメチル化したコデインでは、依存形成能や鎮痛作用、呼吸抑制作用が弱まるという構造活性相関も明らかになっています。

 

参考)麻薬性鎮痛薬 - yakugaku lab

オピアト注射液の具体的な投与方法と用量

オピアト注射液の標準的な投与方法は、通常成人に対してアヘンアルカロイド塩酸塩として1回10mg(本剤0.5mL)を皮下注射することです。投与量は年齢や症状により適宜増減する必要があり、個々の患者の疼痛の程度、体重、腎機能などを考慮した慎重な用量調整が求められます。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00056467.pdf

投与経路としては皮下注射が基本ですが、一般的に薬効の発現速度は静注、筋注、皮下注の順で速く、持続時間は皮下注、筋注、静注の順で長いという特徴があります。持続皮下投与を行う場合、通常は同一部位から1日20mL程度までの投与が可能とされています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/2012iryo_tekisei_guide_027.pdf

注射剤の投与に際しては、急速静注によりアナフィラキシー、重篤な呼吸抑制、低血圧、末梢循環虚脱、心停止が起こるおそれがあるため、静注する場合には緩徐に行うことが推奨されています。また、経口投与が困難な場合や急速な用量調整が必要な場合に注射剤が選択されることが多く、経口剤が第一選択となるのが原則です。

 

参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/iryo_tekisei_guide2017b.pdf

投与間隔については、速放性製剤や持続静注・持続皮下注では24時間以上の間隔を原則とし、製剤の特性に応じた適切な投与スケジュールを組む必要があります。麻薬注射剤は投与制限があり、オピアト注射液の場合は14日分までの処方が認められています。

 

参考)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/files/R4kisairei_mayaku.pdf

オピアト注射液使用時の副作用と禁忌事項

オピアト注射液の使用に伴う主な副作用として、重篤なものには依存性、呼吸抑制、錯乱、せん妄、麻痺性イレウス、中毒性巨大結腸などがあげられます。特に炎症性腸疾患の患者に投与した場合、中毒性巨大結腸が出現する可能性があるため、注意深い観察が必要です。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00069003.pdf

その他の比較的頻度の高い副作用としては、眠気、めまい、不安、不穏、興奮、視調節障害、発汗、悪心、嘔吐、便秘、口渇、発疹、そう痒感、排尿障害、頭蓋内圧の亢進などが報告されています。また、投与部位の発赤、腫脹、硬結、疼痛といった局所反応も見られることがあります。​
眠気やめまいが起こることがあるため、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する必要があります。禁忌事項として、重篤な呼吸抑制のある患者や気管支喘息発作中の患者には投与してはならず、これらの患者では呼吸抑制の増強や気道分泌の妨げが生じるためです。​
過量投与時には、呼吸抑制、意識不明、痙攣、錯乱、血圧低下、重篤な脱力感、重篤なめまい、嗜眠、心拍数の減少、神経過敏、不安、縮瞳、皮膚冷感等を起こすことがあります。処置としては麻薬拮抗剤の投与を行いますが、患者に退薬症候や麻薬拮抗剤の副作用が発現しないよう慎重に投与し、麻薬拮抗剤の作用持続時間はモルヒネより短いため、継続的な患者モニタリングが必要です。​

オピアト注射液と他のオピオイド製剤との使い分け

医療従事者が疼痛管理を行う際、オピアト注射液を含む複数のオピオイド製剤の特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。現在、臨床で使用される主なオピオイド鎮痛薬には、モルヒネ、オキシコドンフェンタニルヒドロモルフォンなどがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。

 

参考)モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬 その種類・使用法・副作用を知…

モルヒネ製剤は200年の歴史を持ち、多くの研究成果により安心して使用できる基本的なオピオイドです。注射剤としてはモルヒネ塩酸塩注射液、アンペック注、プレペノン注などがあり、皮下注や静脈内投与が可能です。モルヒネの半減期は0.8〜2.2時間(皮下注)で、効果発現は比較的速やかです。

 

参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/2012iryo_tekisei_guide.pdf

オキシコドン注射剤(オキファスト注)は、腎機能障害を気にしなくてよいため注射薬としては第一選択となることが多く、内服困難時や速やかなタイトレーションが必要なときに有用です。持続注射内投与では10分、持続皮下投与では20分で効果が発現し、半減期は3〜5時間です。便秘の頻度はモルヒネと同程度に高いですが、腎機能への影響が少ない点が利点です。

 

参考)医療用医薬品 : オキシコドン (オキシコドン注射液10mg…

フェンタニル注射剤は、モルヒネの鎮痛効果の100倍もあるとされる強力な合成麻薬で、他のオピオイドに比べて副作用が出にくい特徴があります。投与直後〜5分で効果が発現し、半減期は3.6時間です。ただし、濃度が薄く持続皮下注での投与量に限界があるため、高用量が必要な場合はモルヒネ注やオキファストに変更されることもあります。便秘の頻度が低く、腎機能障害患者にも使用しやすい点が優れていますが、呼吸困難感への効果はモルヒネに劣ります。​
オピアト注射液は、アヘンアルカロイドとアトロピンの配合により、鎮痛作用に加えて鎮痙作用を併せ持つため、消化管の痙攣を伴う疼痛に対して特に有効です。しかし、現在の臨床では単一成分のオピオイド製剤が主流となっており、オピアト注射液の使用頻度は相対的に低下しています。​

オピアト注射液の医療機関における適正管理と保管方法

オピアト注射液は麻薬及び向精神薬取締法により厳格に管理が定められている医療用麻薬です。麻薬取扱者(麻薬管理者)は、所有または管理する麻薬をその麻薬業務所内で保管しなければならず、保管は麻薬以外の医薬品(覚醒剤を除く)と区別し、鍵をかけた堅固な設備内に貯蔵して行う必要があります。

 

参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/mayaku_kanri_01.pdf

具体的には、麻薬は必ず鍵のかかる重量金庫内にて保管しなければならず、スチール棚などへの保管は認められていません。金庫内に余裕がない場合は、あらかじめ新たな麻薬金庫を設置しておく必要があり、日頃から在庫麻薬をチェックし、期限切れの麻薬は早めに廃棄することが推奨されています。

 

参考)https://www.pref.ehime.jp/uploaded/attachment/149869.pdf

麻薬注射剤の場合、麻薬管理者が施用量や残余量を確認して麻薬帳簿に記載する必要があります。麻薬注射剤の施用残液およびIVH(中心静脈への点滴注射)に麻薬注射剤を注入して用いたものの残液については、都道府県知事への届出が必要となります。

 

参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/iryo_tekisei_guide2017_09.pdf

入院患者に麻薬を交付する場合、患者が自己管理できる場合は必要最小限の麻薬を保管させることができますが、病状等からみて患者が服薬管理できないと認めるときは、麻薬管理者は交付した麻薬を病棟看護師詰所等で保管・管理するよう指示する必要があります。患者が麻薬を保管する際には看護師詰所等で保管する場合のような麻薬保管庫等の設備は必要ありませんが、麻薬管理者は紛失等の防止を図るため、患者に対して保管方法を助言するなど注意喚起に努め、服用状況等を随時聴取し、施用記録等に記載することが求められます。

 

参考)https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/289/mayakumanual-hspkai.pdf

なお、入院患者が交付された麻薬を不注意で紛失等した場合には、麻薬管理者は麻薬事故届を提出する必要はありませんが、紛失等した状況を患者から聴取して原因を把握する必要があります。一方、医療機関での管理下にある麻薬の紛失や盗難については、速やかに所轄の保健所や都道府県に報告し、必要な届出を行わなければなりません。​
麻薬の在庫管理については、定期的な棚卸しを実施し、麻薬帳簿の記録と実在庫が一致していることを確認する必要があります。不一致が発見された場合は、直ちに原因を調査し、必要に応じて麻薬事故届を提出することが法的に義務付けられています。​
厚生労働省「医療用麻薬適正使用ガイダンス」では、医療従事者向けに麻薬の使用方法、管理方法、記録の付け方などが詳しく解説されており、オピアト注射液を含む医療用麻薬を取り扱う全ての医療従事者が参照すべき基本文書となっています。

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