アステラス製薬は2019年7月、ピモジドを有効成分とする神経遮断剤「オーラップ錠1mg」「オーラップ錠3mg」「オーラップ細粒1%」の販売中止を発表しました。経過措置期間は2021年3月31日までとされ、それ以降は国内で入手不可能となっています。
参考)https://www.ygken.com/2021/03/2021331.html
発表では「諸般の事情」と記載されていますが、実際には複数の要因が重なっています。近年、定型抗精神病薬よりも安全性の高い非定型抗精神病薬が次々と上市され、オーラップの臨床での使用頻度が大幅に減少していました。特にアリピプラゾール(エビリファイ)とリスペリドン(リスパダール)が小児適応を取得したことで、オーラップの優位性は失われました。
参考)オーラップ錠1mg、オーラップ錠3mg、オーラップ細粒1%が…
また、ピモジドは心毒性や突然死との関連が指摘され、使用前および使用中に心電図モニタリングが必須という扱いづらさも抱えていました。QT延長を引き起こすリスクが高く、特に他剤との併用禁忌が非常に多いことも、臨床現場での使用を困難にしていた要因の一つです。
約半世紀にわたり精神科領域で使用されてきたオーラップですが、より安全で効果的な治療選択肢の登場により、その役割を終えたと言えるでしょう。後発品は存在せず、代替医薬品への切り替えが必須となりました。
オーラップは、ベルギーのヤンセン社で開発されたジフェニルブチルピペラジンを基本骨格とする定型抗精神病薬です。1960年代に合成され、ハロペリドールやトリフルペリドールに続く新規神経遮断剤として開発されました。
薬理学的には、ドパミンD2受容体の強力な遮断作用により、統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想など)を改善します。カタレプシー惹起作用、抗アポモルヒネ作用、抗アンフェタミン作用、条件回避反応の抑制作用などの定型的な神経遮断作用を示しますが、既存薬よりも作用持続時間が長く、鎮静作用や自律神経系への作用が比較的弱いという特徴がありました。
参考)オーラップ[ピモジド]作用機序、特徴、副作用
日本国内では1969年より臨床試験が開始され、1973年8月に統合失調症(当時は精神分裂病)の適応で承認を取得しました。その後1982年4月には小児の行動異常に対する適応が追加され、小児の発達障害診療において一定の地位を確立していました。特に小児適応を持つ抗精神病薬がオーラップしかなかった時期には、重要な治療選択肢でした。
定型抗精神病薬特有の問題として、D2受容体遮断作用による錐体外路症状(EPS)の発現リスクが高いことが知られています。パーキンソン症状、ジストニア、アカシジアなどの副作用が高頻度で出現し、患者のQOLを低下させる要因となっていました。
近畿大学薬学部の研究では、ピモジドの化学修飾により、ドパミンD2受容体遮断作用を低下させながらT型カルシウムチャネル阻害活性を維持した新規化合物の開発が報告されています。これは難治性疼痛治療への応用を目指したものであり、ピモジドの薬理作用の多様性を示しています。
参考)定型抗精神病薬「ピモジド」の化学修飾により新規難治性疼痛治療…
近畿大学によるピモジド誘導体の研究(難治性疼痛治療への応用可能性)
オーラップの大きな問題点の一つは、極めて多数の併用禁忌薬剤が存在することでした。これは主にCYP3A4阻害作用を持つ薬剤により血中濃度が上昇し、QT延長や心室性不整脈(torsades de pointes)などの重篤な心血管系副作用を引き起こすリスクがあるためです。
参考)https://www.takanohara-ch.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/01/di201701.pdf
主な併用禁忌薬剤には以下のカテゴリーが含まれます。
アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール):CYP3A4阻害によりピモジドの血中濃度が上昇します。イトラコナゾールとの併用ではAUCが2.8倍に上昇するという報告があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/joma/121/3/121_3_209/_pdf
マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン、エリスロマイシン):これらもCYP3A4を阻害し、ピモジドのクリアランスを低下させます。また、マクロライド系自体がKチャネル抑制作用を持ちQT延長を引き起こす可能性があるため、相加的なリスクがあります。
参考)抗菌薬と他剤との配合変化href="https://nihon-eccm.com/icu_round2017/%E6%8A%97%E8%8F%8C%E8%96%AC%E3%81%A8%E4%BB%96%E5%89%A4%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%85%8D%E5%90%88%E5%A4%89%E5%8C%96%E7%9B%B8%E4%BA%92%E4%BD%9C%E7%94%A8-%EF%BD%9E%E3%82%AA%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%BC/" target="_blank">https://nihon-eccm.com/icu_round2017/%E6%8A%97%E8%8F%8C%E8%96%AC%E3%81%A8%E4%BB%96%E5%89%A4%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%85%8D%E5%90%88%E5%A4%89%E5%8C%96%E7%9B%B8%E4%BA%92%E4%BD%9C%E7%94%A8-%EF%BD%9E%E3%82%AA%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%BC/amp;#038;相互作用 ~オウンゴール…
HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル、インジナビル、アタザナビル、ダルナビルなど):強力なCYP3A4阻害作用により、ピモジドの血中濃度が著しく上昇します。
SSRI/SNRI系抗うつ薬(パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、エスシタロプラム):これらの薬剤もCYP3A4阻害作用を持ち、併用禁忌とされています。
その他の抗精神病薬(スルトプリド):QT延長を起こすことが知られている薬剤との併用も禁忌です。
特に問題となったのは、添付文書に「QT延長を起こすことが知られている薬剤(スルトプリド等)」と記載されており、「等」の部分に具体的な薬剤名が明記されていなかったことです。実際にはH2遮断薬(ファモチジン、ラニチジンなど)、ニューキノロン系抗菌薬、他の抗精神病薬など、多数の薬剤がこのカテゴリーに含まれます。
薬局ヒヤリハット事例では、オーラップ服用中の患者にフルボキサミン、パロキセチン、レクサプロ、セルトラリンなどが処方された事例や、クラリスロマイシンなどの抗生剤が処方された事例が多数報告されています。また、ファモチジンとの併用事例では、添付文書に記載がなかったため、アステラス製薬への問い合わせによって初めて禁忌であることが判明したケースもありました。
薬剤性QT延長症候群とオーラップ(高の原中央病院DIニュース)
ピモジドによる最も重篤な副作用の一つがQT延長症候群です。QT時間は心電図のQ波からT波の終わりまでの時間を指し、心室筋の活動電位持続時間に相当します。この時間が延長すると心筋が電気的に不安定になり、torsades de pointes(TdP)と呼ばれる重症心室性不整脈を引き起こすリスクが高まります。
参考)https://square.umin.ac.jp/saspe/news/15.pdf
通常、QTc時間(心拍数で補正したQT時間)が男性で450ms以上、女性で460ms以上の場合にQT延長と判定されます。500msを超えるとTdP発生の危険性が著しく高まるとされています。TdPは基線の周囲をねじれながら振動するように見える心室頻拍で、眼前暗黒感や失神を引き起こし、時に心室細動に移行して突然死を招く可能性があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8237186/
ピモジドは通常臨床用量で20msec以上の著明なQTc延長を引き起こす可能性があり、抗精神病薬の静注剤すべてやセルチンドールと同様に、高リスク薬剤に分類されています。そのため、使用前および使用中には定期的な心電図モニタリングが必要とされていました。
参考)抗精神病薬によるQTc延長症候群 - 公益財団法人 住吉偕成…
QT延長のリスク因子には、薬剤性要因以外に、患者側の要因(女性、高齢者、低カリウム血症、低マグネシウム血症、徐脈、心疾患の既往など)も含まれます。これらの要因が重なると、さらにリスクが増大します。
参考)薬剤性QT延長症候群を来たす薬剤 - 救命救急センター 東京…
オーラップの添付文書には、「心電図異常(QT間隔の延長、T波の平低化や逆転、二峰性T波ないしU波の出現等)に続く突然死が報告されているので、特にQT部分の変化があれば中止すること」と明記されていました。この安全性上の懸念が、使用頻度の低下と最終的な販売中止につながった重要な要因の一つです。
参考)使用上の注意改訂情報(平成10年10月19日指示分)
薬剤誘発性QT延長症候群の解説(日本小児麻酔学会)
オーラップ販売中止に伴い、患者の病態に応じて適切な代替薬を選択する必要があります。適応症によって推奨される代替薬が異なるため、慎重な評価と切り替えが求められます。
統合失調症の場合
成人の統合失調症では、他の抗精神病薬への切り替えが推奨されます。特に非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬に比べて錐体外路症状のリスクが低く、陰性症状にも効果が期待できます。具体的な選択肢としては、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾールなどがあります。
参考)統合失調症の薬(抗精神病薬)一覧、統合失調症について
小児統合失調症(13-17歳)では、リスペリドンとアリピプラゾールが日本で保険適用となっています。米国ではルラシドン(ラツーダ)も小児統合失調症に承認されており、体重増加や代謝パラメーターへの影響が限定的という利点があります。
参考)非定型抗精神病薬「LATUDA(ルラシドン塩酸塩)」の米国に…
小児発達障害(自閉スペクトラム症に伴う易刺激性)の場合
小児期の自閉スペクトラム症(ASD)に伴う易刺激性の改善には、リスペリドン(商品名:リスパダール)またはアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)が推奨されます。これらは日本国内での臨床試験を通じてその有効性が確認されており、オンラベル使用が可能です。
参考)小児自閉スペクトラム症に対するリスペリドンとアリピプラゾール…
リスペリドンは原則として5歳以上18歳未満の患者に使用可能で、ドーパミンD2受容体およびセロトニン5-HT2受容体を遮断する作用により、陽性症状だけでなく陰性症状の改善にも効果が期待されます。5歳から12歳を対象とした臨床試験では、8週間の投与で有意な改善が認められました。
参考)小児統合失調症に対する薬物療法について、神奈川県厚木市の児童…
アリピプラゾールは6歳以上18歳未満の患者に使用可能で、ドーパミン部分作動薬(DSS)として独特の薬理作用を持ちます。2016年に小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の適応を取得しました。
参考)抗精神病薬「エビリファイ」 小児期の自閉スペクトラム症に伴う…
システマティックレビューによると、アリピプラゾールおよびリスペリドンは短期的なフォローアップにおいてASD症状の重症度を改善する可能性がありますが、体重増加、傾眠、錐体外路症状などの有害事象に注意が必要です。
CP換算(クロルプロマジン換算)による用量調整
抗精神病薬の切り替えには、CP換算(クロルプロマジン換算)が参考になります。日本臨床精神神経薬理学会の資料によると、オーラップ4mgがCP換算値として設定されています。これにより、他剤への切り替え時の初期用量を推定することができます。
ただし、CP換算はあくまで目安であり、個々の患者の状態、併存疾患、併用薬、年齢などを総合的に考慮して用量を調整する必要があります。特に小児や高齢者では、より慎重な用量設定が求められます。
日本臨床精神神経薬理学会:抗精神病薬の等価換算(CP換算)
オーラップの販売中止により、医療現場では様々な実務的対応が必要となっています。特に他剤の添付文書改訂や処方監査における注意点を理解しておくことが重要です。
参考)https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/27080/information/23-045A.pdf
添付文書における併用禁忌項目の改訂
オーラップが国内で販売中止となったことを受けて、多くの医薬品の添付文書から「オーラップ」の記載が削除されています。例えば、アゾール系抗真菌薬やSSRI/SNRI系抗うつ薬の併用禁忌欄から、オーラップの商品名が削除されました。
参考)https://med.nipro.co.jp/servlet/servlet.FileDownload?file=00P2x00000V3gx3EAB
医療従事者は、過去の資料を参照する際に、オーラップとの相互作用に関する情報が現在は適用されないことを認識しておく必要があります。一方で、ピモジドの一般名や成分に関する記載が残っている場合もあるため、注意が必要です。
経過措置期間後の在庫管理
2021年3月31日の経過措置期間満了後は、オーラップの新規処方は不可能となりました。医療機関や薬局に残存する在庫についても、適切に管理し、期限切れ後は廃棄する必要があります。
参考)https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/department/master/i-pharm/information/213.pdf
患者がオーラップを長期服用していた場合、経過措置期間中に計画的に代替薬へ切り替えることが推奨されていました。急な中止は症状悪化や離脱症状を引き起こす可能性があるため、段階的な減量と代替薬の導入が必要でした。
処方監査時の確認事項
現在、オーラップを含む処方箋が発行されることはありませんが、過去の処方歴を参照する際や、他院からの紹介時の情報提供書にオーラップが記載されている場合があります。その際は、現在使用している代替薬を確認し、適切な薬歴管理を行うことが重要です。
また、オーラップから代替薬に切り替えた患者では、副作用プロファイルが異なるため、新たな副作用の出現や既存症状の変化に注意深く観察する必要があります。特に錐体外路症状、体重増加、代謝異常、鎮静作用などの副作用について、定期的なモニタリングが推奨されます。
医薬品情報の更新
医療機関や薬局の医薬品情報システムでは、オーラップを「販売中止」として登録し、誤って処方や調剤が行われないようにする必要があります。また、相互作用チェックシステムについても、オーラップとの相互作用情報を更新または無効化する設定が必要です。
日本における小児への抗精神病薬処方動向の研究によると、オーラップの販売中止後は、主にアリピプラゾールとリスペリドンが処方されており、アリピプラゾールの処方割合が時間の経過とともに増加していることが報告されています。これは、アリピプラゾールの錐体外路症状発現リスクの低さや、体重増加などの代謝系副作用が比較的少ないという特性が評価されているためと考えられます。
参考)日本における小児に対する抗精神病薬処方の動向|医師向け医療ニ…
日本における小児に対する抗精神病薬処方の動向(CareNet)
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