心電図モニタを使用した際の診療報酬算定は、D220呼吸心拍監視として行われます。この算定は、重篤な心機能障害もしくは呼吸機能障害を有する患者、またはそのおそれのある患者に対して常時監視を行っている場合に限定されます。心電図モニタ単独での算定項目は存在せず、カルジオスコープ(ハートスコープ)やカルジオタコスコープとして呼吸心拍監視の枠組みで算定することになります。
参考)エラー
呼吸心拍監視の算定においては、心電曲線と心拍数のいずれも観察した場合に算定できるという要件があります。呼吸曲線を同時に観察した場合でも、その費用は所定点数に含まれるため、別途算定はできません。また、同一日に複数の監視方法(呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープなど)を行った場合は、主たるもののみを算定するルールとなっています。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_3%2Fd220.html
外来で心電図モニタを装着するケースでは、2時間程度のモニタリングであっても呼吸心拍監視として算定可能です。ただし、入院中の患者については、D208心電図検査の「1」四肢単極誘導及び胸部誘導を含む最低12誘導(130点)といった別の算定方法を検討する必要があります。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_1%2Fd208.html
呼吸心拍監視として算定する際の診療報酬点数は、実施時間や日数によって異なります。算定開始日については診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄への記載が義務付けられており、これにより算定期間の管理が行われます。
参考)呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ(ハート…
診療報酬の算定においては、7日を超えた場合の特別な取り扱いがあり、検査に要した時間にかかわらず一定の上限点数が適用されます。また、呼吸心拍監視装置の装着を中止した後30日以内に再装着が必要となった場合は、日数の起算日が最初に装着した日となるため注意が必要です。検査を中止している期間についても実施日数の計算に含まれるという規定があります。
人工呼吸を同一日に行った場合は、呼吸心拍監視に係る費用がJ045人工呼吸の所定点数に含まれるため、別途算定できません。同様に、マスクまたは気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔と同一日に行われた場合も、麻酔の費用に含まれます。
特定診療報酬算定医療機器として、心電図モニタは厚生労働省により定義されており、算定要件を満たし、薬事承認または認証された医療機器である必要があります。医療機関においては、この要件を満たす機器を使用しているか確認することが重要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000205732.pdf
呼吸心拍監視として心電図モニタを算定する際には、診療録への記載が算定の必須条件となっています。具体的には、観察した呼吸曲線、心電曲線、心拍数のそれぞれの観察結果の要点を診療録に記載した場合に限り算定できます。この記載がない場合、たとえモニタリングを実施していても保険請求が認められず、査定の対象となります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/shidou_kansa_09.pdf
診療録への記載内容としては、モニタ装着の必要性の判断根拠、アラーム設定の内容、観察した波形の特徴や異常所見の有無などが含まれることが望ましいとされています。特に不整脈や心拍数の異常が認められた場合は、その時刻や波形の特徴、対応した処置などを詳細に記録する必要があります。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000144769.pdf
実際の臨床現場では、心電図モニタを装着したものの、観察結果の要点を診療録に記載していないために算定できないというケースが見受けられます。また、患者の状態が改善してもそのまま継続して装着し続けている場合や、アラーム設定を変更していない状況も問題視されています。適切な算定を行うためには、定期的にモニタリングの必要性を評価し、その判断と観察結果を診療録に記録することが不可欠です。
心電図モニタの保険請求では、複数の検査や処置を同時に行う場合の算定ルールに注意が必要です。呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ、カルジオタコスコープを同一日に行った場合は主たるもののみの算定となるため、重複請求を避けなければなりません。
外来でのモニタリングにおいては、酸素飽和度測定を同時に行った場合、経皮的動脈血酸素飽和度測定を別途算定できるかという疑問が生じることがあります。この場合、呼吸心拍監視と経皮的動脈血酸素飽和度測定は別の検査項目として算定可能ですが、適切な算定のためには各検査の実施目的と結果を明確に記録する必要があります。
参考)301 Moved Permanently
透析中に心電図モニタを4時間ほど装着した場合の算定についても、呼吸心拍監視として算定することが基本となります。ただし、透析中の管理として必要な範囲内での監視であれば、透析の基本料に含まれる可能性もあるため、実施の目的と医学的必要性を明確にする必要があります。
参考)301 Moved Permanently
令和4年度診療報酬改定では、看護必要度の項目から「心電図モニター管理」が削除されるなど、評価基準の見直しが行われました。これにより、急性期病棟における心電図モニタの使用と診療報酬の関係に変化が生じています。医療機関においては、改定内容を把握し、適切な算定を行うための体制整備が求められています。
参考)心電図モニター管理などを看護必要度項目から削除すべきか、支払…
心電図モニタの算定を適切に行うためには、医療安全の観点からも正しい使用・管理方法の周知が重要です。日本看護協会が作成した「一般病棟における心電図モニタの安全使用確認ガイド」では、モニタ装着の必要性とアラーム設定、アラームの基本設定(音・画面表示)、電極の管理と電波環境の把握、アラーム鳴動時の適切な対応体制、モニタの使用に関する教育・トレーニング、モニタ機器の点検という6つのテーマが示されています。
モニタ装着の必要性については、医師の診療に基づきモニタリングが必要と判断されて装着することが基本となります。緊急時には看護判断によって装着する場合もありますが、その場合でも速やかに医師に報告し、指示を受けることが求められます。アラーム項目やアラーム範囲の決定については、医療チームにおいて役割分担を明確にし、個々の患者について装着の必要性を共有できる体制を整備することが望まれます。
医用テレメータを使用する場合は、電波管理も重要な課題となります。心電図モニタを管理している患者が電波の届かない場所へ行く可能性がある場合は、患者の所在をはっきりさせることが必要です。無線式心電図モニタの送受信機に関連した医療事故も報告されており、機器の管理が適切になされることの重要性が指摘されています。
参考)https://www.emcc-info.net/medical_emc/practical_guide/case_study_for_radio_medical_telemetry_2025.pdf
心電図モニタ機器の定期点検についても、保守点検の計画を立て、点検結果を記録することが求められます。多様な医療機器が使用されている中で、心電図モニタは人工呼吸器や輸液ポンプのような生命維持に直結するものではないため、保守点検の優先順位が低くなりがちですが、安全に使用するためには定期点検が欠かせません。添付文書を参考に点検計画を立て、不具合があった時の対応を明確にしておくことが望まれます。
厚生労働省の診療報酬点数表の解説資料
https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_3%2Fd220.html
呼吸心拍監視の算定要件や診療録記載の詳細が記載されており、実務上の参考資料として活用できます。
日本看護協会の心電図モニタ安全使用ガイド
https://www.pmda.go.jp/files/000144769.pdf
一般病棟における心電図モニタの安全使用確認ガイドとして、6つのテーマごとに確認ポイント、解説、対応例が示されています。
厚生労働省の特定診療報酬算定医療機器の定義資料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000205732.pdf
心電図モニタを含む特定診療報酬算定医療機器の定義や要件について詳細に記載されています。