循環改善薬の種類と一覧:効果と使い分け

循環改善薬には脳循環改善薬、循環器疾患治療薬、循環作動薬など多岐にわたる種類があります。各薬剤の特徴と適切な使い分けを理解していますか?

循環改善薬の種類と一覧

循環改善薬の主要分類
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脳循環改善薬

脳梗塞後遺症や慢性脳循環障害の改善に使用される薬剤群

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循環器疾患治療薬

高血圧、心不全、不整脈などの循環器疾患に対する治療薬

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循環作動薬

急性期の循環動態管理に使用される強心薬や昇圧薬

脳循環改善薬の種類と効果

脳循環・代謝改善薬は、脳血管障害の後遺症や慢性脳循環障害の改善を目的として使用される薬剤群です。これらの薬剤は、脳血流の改善や脳代謝の活性化を通じて、様々な神経症状の改善を図ります。

 

主要な脳循環改善薬として以下が挙げられます。
ニセルゴリン(サアミオン錠等)

  • 脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害による意欲低下の改善に使用
  • α-アドレナリン受容体遮断作用により血管拡張効果を示す
  • 認知機能の改善効果も報告されている

アマンタジン(シンメトレル錠等)

  • 脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善に適応
  • ドパミン放出促進作用により、運動機能の改善も期待される
  • パーキンソン病治療薬としても使用される

イブジラスト(ケタスカプセル等)

  • 脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害によるめまいの改善
  • ホスホジエステラーゼ阻害作用により血管拡張効果を発揮
  • 抗炎症作用も有する

エダラボン(ラジカット注等)

  • 脳梗塞急性期に使用される唯一の脳保護薬
  • フリーラジカル消去作用により脳細胞の酸化的損傷を防ぐ
  • 発症から48時間以内の投与が推奨される

これらの薬剤は、症状や病期に応じて適切に選択する必要があります。急性期にはエダラボンが、慢性期には症状に応じてニセルゴリンやアマンタジンが選択されることが多いです。

 

循環器疾患治療薬の分類と一覧

循環器疾患治療薬は、高血圧、心不全、不整脈、虚血性心疾患など幅広い循環器疾患の治療に使用されます。主要な分類とその代表的な薬剤を以下に示します。
カルシウム拮抗薬

  • ジヒドロピリジン系:ニフェジピン(アダラート)、アムロジピン(ノルバスク)
  • 非ジヒドロピリジン系:ベラパミル(ワソラン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)
  • 血管平滑筋のカルシウムチャネルを遮断し血管拡張作用を示す
  • グレープフルーツジュースとの相互作用に注意が必要

ACE阻害薬とARB

  • ACE阻害薬:エナラプリル、カプトプリルなど
  • ARB:バルサルタン、テルミサルタンなど
  • レニン-アンジオテンシン系を阻害し降圧効果を示す
  • 心不全の予後改善効果も確認されている

β遮断薬

  • 選択的β1遮断薬:メトプロロール、ビソプロロール
  • 非選択的β遮断薬:プロプラノロール、カルベジロール
  • 心拍数の減少と心筋収縮力の抑制により心負荷を軽減
  • 心不全、不整脈、虚血性心疾患に適応

利尿薬

硝酸薬

  • 硝酸イソソルビド、ニトログリセリンなど
  • 静脈系の拡張により前負荷を軽減
  • 狭心症の治療に広く使用される

これらの薬剤は、患者の病態に応じて単独または併用療法として使用され、循環器疾患の包括的な管理に重要な役割を果たしています。

 

循環作動薬の使い分けと一覧

循環作動薬は、主に周術期管理や集中治療において、急性期の循環動態の安定化を目的として使用される薬剤群です。これらの薬剤は、その作用機序や効果の違いにより適切に使い分ける必要があります。

 

強心薬(陽性変力作用薬)

  • ドブタミン塩酸塩:β1受容体刺激により心収縮力を増強
  • オルプリノン塩酸塩:PDE阻害作用により心収縮力増強と血管拡張効果
  • ドパミン塩酸塩:低用量では腎血流改善、高用量では昇圧効果
  • ジゴキシン:Na-K-ATPase阻害により心収縮力を増強

昇圧薬

  • エチレフリン塩酸塩:α・β受容体刺激により昇圧効果
  • エフェドリン塩酸塩:ノルアドレナリン放出促進により昇圧
  • ノルアドレナリン:α1受容体刺激による強力な血管収縮作用

抗不整脈薬

  • ジソピラミド:Naチャネル遮断によりClass Iaの抗不整脈効果
  • シベンゾリンコハク酸塩:Class Iaの抗不整脈薬
  • ジルチアゼム塩酸塩:Caチャネル遮断により上室性不整脈に有効

循環作動薬の選択には、患者の循環動態、基礎疾患、他の使用薬剤との相互作用を十分に考慮する必要があります。特に重症患者では、血行動態モニタリングを行いながら慎重に投与量を調整することが重要です。

 

漢方による循環改善の選択肢

漢方薬は、西洋医学的治療と併用することで、循環改善に有効な選択肢となる場合があります。特に血流改善や体質改善の観点から、循環器疾患の補完的治療として注目されています。

 

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

  • 瘀血(血液の流れが滞った状態)の改善に使用される代表的な漢方薬
  • 主要構成生薬:桃仁、牡丹皮、桂皮、茯苓、芍薬
  • 血液循環改善と血行障害・うっ血の改善効果
  • ホルモンバランスの調整効果も報告
  • 下肢静脈瘤における倦怠感や痺れの改善に期待

五苓散(ごれいさん)

  • 水分代謝の調節により循環改善に寄与
  • 体内の水分バランスを整えることで浮腫の改善
  • 利水作用により心負荷の軽減効果

当帰芍薬散

  • 血虚(血液不足状態)の改善
  • 冷え性や月経不順を伴う循環障害に適応
  • 女性の循環器症状に特に有効

加味逍遙散

  • 気血の巡りを改善
  • ストレス関連の循環器症状に適用
  • 自律神経のバランス調整効果

漢方薬による循環改善治療では、患者の体質(証)を正確に判断し、適切な処方を選択することが重要です。また、西洋薬との併用時には相互作用にも注意が必要です。

 

日本東洋医学会の治療指針に関する詳細情報
https://www.jsom.or.jp/

循環改善薬の適正使用のポイント

循環改善薬の適正使用には、薬剤の特性を理解し、患者の病態に応じた適切な選択と管理が不可欠です。以下に重要なポイントを示します。
薬剤選択の基本原則

  • 患者の基礎疾患と現在の循環動態を正確に評価
  • 急性期か慢性期かの病期による薬剤選択の違い
  • 併用薬との相互作用の確認
  • 患者の年齢、腎機能、肝機能の考慮
  • アレルギー歴や副作用歴の確認

モニタリングと副作用管理

  • 血圧、心拍数、心電図の定期的なモニタリング
  • 脳循環改善薬では神経症状の改善度評価
  • カルシウム拮抗薬では歯肉増殖や浮腫の確認
  • 循環作動薬では不整脈や心筋虚血の監視
  • 腎機能や電解質バランスの定期チェック

患者教育と服薬指導

  • 薬剤の効果発現時期と継続の重要性の説明
  • 副作用の早期発見のための症状説明
  • グレープフルーツジュースなどの食品相互作用の指導
  • 急に中止することの危険性の説明
  • 定期受診の重要性の強調

多職種連携の重要性

  • 医師、薬剤師、看護師、理学療法士の連携
  • 循環器専門医との連携体制の構築
  • 薬剤師による服薬指導と副作用モニタリング
  • 看護師による日常生活指導と症状観察
  • リハビリテーション効果との相乗作用の活用

循環改善薬は、適切に使用することで患者のQOL向上と予後改善に大きく貢献します。しかし、不適切な使用は重篤な副作用や治療効果の減弱を招く可能性があるため、常に最新のエビデンスに基づいた治療選択と継続的な患者管理が求められます。

 

日本循環器学会のガイドライン情報
https://www.j-circ.or.jp/