ドブタミン副作用と管理法、発現頻度、対処方法

ドブタミン投与時に注意すべき副作用とその管理について解説します。不整脈や血圧変動などの循環器系副作用から、まれに報告されるミオクローヌスまで、医療従事者が知っておくべき情報を網羅的に紹介します。適切な副作用管理で安全な薬物療法を実現できるでしょうか。

ドブタミン副作用と対処

ドブタミン副作用の重要ポイント
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循環器系副作用

不整脈(頻脈・期外収縮)、血圧変動、動悸などが5%以上の高頻度で発現

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まれな重篤副作用

心停止、心室頻拍、心室細動、ストレス心筋症、ミオクローヌスなどが報告

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投与管理のポイント

継続的モニタリング、適切な用量調整、相互作用への注意が必須

ドブタミンの主な副作用と発現頻度

 

ドブタミン塩酸塩は急性循環不全における心収縮力増強剤として広く使用されていますが、使用に際しては複数の副作用に注意が必要です。副作用の発現頻度は、製品添付文書によると、循環器系の副作用が最も多く報告されています。
参考)医療用医薬品 : ドブタミン (ドブタミン点滴静注100mg…

最も高頻度で発現する副作用は不整脈で、特に頻脈や期外収縮が5%以上の確率で認められます。心エコー図検査における負荷に用いた場合、期外収縮が30%以上発現したとの報告もあり、この点は臨床上特に注意が必要です。その他の循環器系副作用として、過度の血圧上昇、動悸、胸部不快感、狭心痛、前胸部熱感、息切れなどが0.1~5%未満の頻度で報告されています。
参考)医療用医薬品 : ドブタミン (ドブタミン点滴静注液100m…

循環器系以外の副作用として、消化器症状(悪心、腹部痛等)、投与部位の症状(注射部位の発赤、腫脹等)が0.1~5%未満の頻度で発現します。また、頭痛、発疹、好酸球増多といった症状も同程度の頻度で報告されています。
参考)ドブタミン塩酸塩点滴静注液100mg「サワイ」の効能・副作用…

発現頻度 副作用の種類
5%以上 不整脈(頻脈・期外収縮等)
0.1~5%未満 過度の血圧上昇、動悸、胸部不快感、狭心痛、前胸部熱感、息切れ
0.1~5%未満 悪心、腹部痛、注射部位の発赤・腫脹
0.1~5%未満 頭痛、発疹、好酸球増多
頻度不明 血圧低下、血清カリウムの低下

ドブタミン投与時の重大な副作用

ドブタミンには、発現頻度は低いものの重篤な副作用が存在し、特に心エコー図検査における負荷に用いる場合には厳重な注意が必要です。重大な副作用として、心停止、心室頻拍、心室細動、心筋梗塞が報告されており、これらは致死的な転帰をたどる可能性があります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062283.pdf

ストレス心筋症も重要な副作用の一つです。負荷試験中に心室性期外収縮、ST上昇、壁運動異常(心室基部の過収縮と心尖部広範囲におよぶ収縮低下)等の異常所見を認めた場合は、速やかに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=2119404A1220

近年、ドブタミン誘発性ミオクローヌスという興味深い副作用が報告されています。これは筋肉の不随意的かつ突発的な収縮を特徴とし、特に腎機能障害を有する患者で多く発現することが明らかになっています。ある症例報告では、61歳女性が急性非代償性心不全と急性腎障害の治療でドブタミン投与を受けた際、投与開始26時間後に皮質性ミオクローヌスを発症し、投与中止後36時間で消失したことが記録されています。
参考)Dobutamine-Induced Myoclonus i…

参考リンク:ドブタミン誘発性ミオクローヌスの症例報告と文献レビュー
このリンクには、ドブタミン投与後に発現したミオクローヌスの詳細な症例分析と、腎機能障害患者における発現メカニズムについての考察が記載されています。

 

ドブタミン副作用の作用機序と薬理学的背景

ドブタミンの副作用は、その薬理学的作用機序と密接に関連しています。ドブタミンは合成カテコールアミンで、主に心筋のβ1受容体に直接作用して心収縮力を増強します。また、弱いβ2受容体刺激作用とα1受容体刺激作用も有しています。
参考)https://chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse3293.pdf

β1受容体刺激作用により、心筋収縮力の増強とともに心拍数の増加、心筋酸素消費量の増加が生じます。これが不整脈や頻脈といった副作用の主な原因となります。特に心筋梗塞のように冠動脈が閉塞した状態では、心筋細胞の壊死がすでに生じており、そこにドブタミンを使用すると心筋酸素消費量の増加により壊死を助長する場合があります。
参考)https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web20220912

ドブタミンの血行動態への影響も副作用発現に関与しています。本剤は心拍出量を増加させる一方で、末梢血管抵抗をわずかに下げる作用があります。しかし、その効果は患者の病態により異なり、敗血症性ショック患者では予測できない反応を示すことがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5764562/

ドブタミンの半減期は約2~3分と短いため、過量投与による血圧上昇は通常、減量あるいは投与中止により速やかに回復します。この薬物動態の特性は、副作用発現時の対処において重要なポイントとなります。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/jyunkan/JY-00070.pdf

参考リンク:ドブタミンの薬理作用の詳細解説
このリンクには、ドブタミンのβ刺激作用、α刺激作用、および心室収縮力増強メカニズムについての専門的な解説が記載されています。

 

ドブタミン使用時の禁忌と慎重投与が必要な患者

ドブタミンには複数の禁忌事項が設定されており、特に心エコー図検査における負荷に用いる場合には多くの制限があります。効能共通の禁忌として、肥大型閉塞性心筋症(特発性肥厚性大動脈弁下狭窄)の患者では、左室からの血液流出路の閉塞が増強され症状を悪化させるおそれがあるため投与禁忌です。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/14987901072004

心エコー図検査における負荷では、さらに多くの禁忌が設定されています。急性心筋梗塞後早期の患者では、致死的な心破裂の報告があるため投与は禁忌です。また、不安定狭心症、左冠動脈主幹部狭窄、重症心不全、重症の頻拍性不整脈、急性の心膜炎・心筋炎・心内膜炎、大動脈解離等の重篤な血管病変、コントロール不良の高血圧症、褐色細胞腫、高度な伝導障害、心室充満の障害、循環血液量減少症の患者にも投与は禁忌とされています。
参考)https://med.sawai.co.jp/file/pr7_182_1.pdf

慎重投与が必要な患者として、重篤な冠動脈疾患のある患者では、複数の冠動脈主枝に高度の閉塞性変化がある場合、本剤投与時の冠血流増加が少なく心筋局所灌流が不均一になることがあります。高血圧症の患者では過度の昇圧を来すおそれがあり、心房細動のある患者では房室伝導を促進する作用により心拍数を増加させるおそれがあります。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/jyunkan/JY-13213.pdf

小児等への投与では、低出生体重児、新生児、乳児、幼児または小児に投与する場合には、観察を十分に行い少量より慎重に開始する必要があります。開心術後に心拍数が多い小児等に投与し、過度の頻拍を来したとの報告があるためです。​

ドブタミンの独自視点:長期使用における耐性と離脱症候群

ドブタミンの臨床使用において、あまり知られていない重要な側面が耐性の形成と離脱時の問題です。添付文書には、72時間以上投与すると耐性がみられることがあり、増量の必要な場合があると記載されています。この耐性形成は、β受容体のダウンレギュレーションや脱感作によるものと考えられています。​
長期間ドブタミンを使用している心不全患者では、減量時に「LOS症状」(Low Output Syndrome:低心拍出量症候群)に注意が必要です。ドブタミンを使用しているということは、弱くなった心筋を薬の力で強めて動かしており、血圧も上げている状態です。そのため、ドブタミンを減量すると心筋収縮力が低下し、血圧が下がり、低心拍出量症候群の症状が出現する可能性があります。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/9047/

また、ドブタミンの血中濃度は投与量に依存し、通常用量(1~5μg/kg/min)では定常状態血中濃度は約25ng/mLに達します。半減期が約3.58分と非常に短いため、投与中止後は速やかに血中から消失しますが、この急激な薬理作用の消失が離脱症状を引き起こす可能性があります。​
心原性ショックの治療において、ドブタミンとミルリノンの比較研究では、両者の間に主要複合アウトカムや重要な副次的アウトカムに差はみられませんでしたが、サンプルサイズの問題や検出力不足の可能性が指摘されています。このような比較データの蓄積は、将来的により安全な強心薬の選択に役立つ可能性があります。
参考)心原性ショックにおけるミルリノンとドブタミンの治療効果の比較…

ドブタミン副作用の適切な管理と対処方法

ドブタミン投与時の副作用管理には、適切なモニタリングと迅速な対応が不可欠です。投与前には体液減少の是正、呼吸管理等の必要な処置を行い、投与中は血圧、心拍数、心電図および尿量、また可能な限り肺動脈楔入圧および心拍出量等、患者の状態を継続的に観察する必要があります。​
過度の心拍数増加や収縮期血圧上昇が現れた場合には、過量投与の可能性があるため、減量するなど適切な処置を行います。ドブタミンは通常、末梢血管収縮作用を示さないため、過度の血圧低下を伴う急性循環不全患者においては、末梢血管収縮剤を投与するなど他の適切な処置を考慮することも重要です。​
過量投与時の症状として、食欲不振、悪心、嘔吐、動悸、息切れ、胸痛等に加え、陽性変力作用および変時作用による血圧上昇、頻拍性不整脈、心筋虚血、心室細動、血管拡張による低血圧等が生じるおそれがあります。ドブタミン塩酸塩の半減期は短いため、通常、血圧上昇は減量あるいは投与中止により回復しますが、回復しない場合には短時間型α遮断薬の投与を考慮します。重症の心室性頻拍性不整脈には、プロプラノロール塩酸塩あるいはリドカインの投与も考慮する必要があります。​
相互作用にも注意が必要です。β遮断剤との併用では、本剤の効果の減弱、末梢血管抵抗の上昇等が起こるおそれがあります。これは、本剤のβ受容体刺激作用が遮断され、α受容体刺激作用が顕在化するためです。特にβ遮断剤の投与を受けている患者および最近にβ遮断剤の投与を受けていた患者では注意が必要です。
参考)https://www.carenet.com/drugs/materials/pdf/672173_2119404G3056_3_01.pdf

  • 継続的な心電図モニタリングと血圧測定の実施
  • 不整脈発現時の速やかな減量または投与中止
  • 腎機能障害患者でのミオクローヌス発現の監視
  • β遮断剤との相互作用への注意
  • 長期投与時の耐性形成への対応

参考リンク:厚生労働省によるドブタミン塩酸塩製剤の使用に当たっての留意事項
このリンクには、心エコー図検査における負荷使用時の警告、禁忌、効能・効果に関連する使用上の注意など、医療従事者が知っておくべき重要な情報が記載されています。

 

血管外漏出にも注意が必要で、注射部位を中心に発赤、腫脹または壊死を起こすことがあるため慎重に投与する必要があります。特に新生児・乳幼児、高齢者等の重篤な心疾患患者では、水分摂取量が過剰にならないように十分注意し、必要に応じ高濃度製剤の使用も考慮します。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071577.pdf