IL-6阻害薬を使用中でも、重篤な肺炎でCRPがほぼ正常値を示すことがあります。 theidaten(http://www.theidaten.jp/wp_new/20190302-68/)

現在、日本でRA(関節リウマチ)を中心とした炎症性疾患に使用できるIL-6阻害薬は、トシリズマブ(アクテムラ®)とサリルマブ(ケブザラ®)の2剤のみです。 どちらもIL-6の受容体(IL-6受容体α)に対するモノクローナル抗体製剤であり、IL-6シグナルを受容体レベルでブロックする点は共通しています。 ryumachi-jp(https://www.ryumachi-jp.com/pdf/tebiki_il-6_240710.pdf)
ただし、構造には明確な違いがあります。つまり「同じIL-6受容体を狙う薬」でも別物です。
| 項目 | トシリズマブ(アクテムラ®) | サリルマブ(ケブザラ®) |
|---|---|---|
| 製造元 | 中外製薬(ロシュグループ) | サノフィ |
| 抗体の種類 | ヒト化抗体(ヒト化率 約90%) | 完全ヒト型抗体(100%) |
| 投与形態 | 点滴静注 or 皮下注 | 皮下注のみ |
| 点滴の場合の投与間隔 | 4週に1回 | —(皮下注のみ) |
| 皮下注の場合の投与間隔 | 1〜2週に1回 | 2週に1回 |
| IL-6Rへの親和性 | 基準値 | トシリズマブの約20倍 |
| IL-6シグナル阻害効力 | 基準値 | トシリズマブの約4倍 |
| 発売年(日本) | 2008年 | 2018年 |
サリルマブはIL-6受容体への親和性がトシリズマブの約20倍、IL-6シグナル阻害効力は約4倍という報告があります。 これは使えそうな情報ですね。 showa-u-rheum(http://showa-u-rheum.com/2025/07/5527/)
ただし、ANSWERコホートの実臨床データでは、中等度〜高疾患活動性患者における48週時点の薬剤継続率は3群(サリルマブ皮下注・トシリズマブ皮下注・トシリズマブ点滴)で有意差がなく、2剤の優劣は明確ではありません。 「親和性が高い=必ず優れている」ではないということですね。 showa-u-rheum(http://showa-u-rheum.com/2025/07/5527/)
以下に各薬剤の用法・用量をまとめます。
投与間隔の短縮・延長は疾患活動性に応じて調整が可能で、状況によっては柔軟に対応できます。 ike-seikei(https://ike-seikei.jp/il6inhibitor/)
参考リンク(各薬剤の添付文書・適正使用ガイドを確認する際に有用)。
アクテムラ® 適正使用ガイド(PMDA)— 投与量・投与間隔・安全管理に関する詳細情報
IL-6阻害薬は関節リウマチの治療薬として広く知られていますが、適応疾患はそれだけではありません。これが基本です。
トシリズマブ(アクテムラ®)が日本で承認されている主な適応疾患は以下のとおりです。 note(https://note.com/dr_kogen/n/n8a66eb382b89)
サリルマブ(ケブザラ®)の適応は現時点では関節リウマチのみです。 rheum-tomoni(https://rheum-tomoni.com/il-6%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%88%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%96%E3%82%B6%E3%83%A9%EF%BC%89/)
成人スティル病やキャッスルマン病は希少疾患ですが、いずれもIL-6の過剰産生が病態の中心にある疾患であり、IL-6阻害薬が高い効果を示します。 関節リウマチ以外の炎症性疾患を診療する内科医・膠原病科医も、この一覧を把握しておくことが重要です。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054586)
また、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与後の免疫関連有害事象(irAE)に対して、IL-6R阻害薬(トシリズマブまたはサリルマブ)を使用した後ろ向き解析では、抗腫瘍免疫を減弱させることなくirAEを治療できる可能性が示されています。 がん治療の現場でもIL-6阻害薬の活用が広がっていますね。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/56733)
参考リンク(適応疾患別の解説・エビデンスが参照できる)。
生物学的製剤シリーズ②IL-6阻害薬のすべて(こげん先生の診療ノート)— 適応疾患一覧とシグナル伝達の仕組みを図解
「生物学的製剤はMTX(メトトレキサート)と必ず併用しなければ効果が出ない」と考えている医療従事者は少なくありません。意外ですね。
複数の大規模臨床試験により、IL-6阻害薬はMTXを併用しなくても単剤で十分な効果があることが証明されています。 さらにMTX併用例と単剤例で同等の効果が示されており、これはTNF阻害薬との大きな違いです。TNF阻害薬の多くはMTX非併用時に免疫原性(中和抗体の産生)が問題になりやすいのに対し、IL-6阻害薬では単剤でも治療効果が維持されやすいとされています。 forestclinic(https://forestclinic.jp/il-6/)
つまり、MTX不耐例や禁忌症例でもIL-6阻害薬は選択しやすい薬です。
具体的な場面として、高齢者・腎機能低下例・間質性肺炎合併例など、MTX使用が難しい患者への生物学的製剤導入において、IL-6阻害薬は有力な選択肢となります。 2024年改訂の「関節リウマチ(RA)に対するIL-6阻害薬使用の手引き」でも、この点が明記されています。 azuma-rheumatology-clinic(https://www.azuma-rheumatology-clinic.jp/features/biological-products/)
また、寛解・低疾患活動性が維持できている場合、IL-6阻害薬の減量・投与間隔延長を条件付きで推奨するガイドラインの記載もあります。 投与継続の最適化という観点でも、単剤使用・減量戦略は今後ますます重要なテーマになるでしょう。 imed3.med.osaka-u.ac(http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu02-6.html)
参考リンク(RA診療ガイドラインと減量推奨の根拠として参照可能)。
関節リウマチに対するIL-6阻害薬使用の手引き2024年改訂版(日本リウマチ学会)— 単剤使用・減量に関する推奨が収載
IL-6阻害薬で最も注意すべき副作用の一つが、感染症の症状・検査値マスクです。重篤な感染症を見逃すと生命に関わります。
IL-6は肝臓でのCRP産生を直接誘導するサイトカインです。そのため、IL-6受容体をブロックするIL-6阻害薬を投与中の患者では、重篤な肺炎や菌血症が起きていてもCRPがほぼ正常値を示すことがあります。 「CRPが陰性だから安心」ではありません。 theidaten(http://www.theidaten.jp/wp_new/20190302-68/)
臨床現場での具体的な報告として、トシリズマブ使用中にニューモシスチス肺炎やクリプトコッカス症を発症した症例でも、感染初期にCRP上昇が乏しかった事例があります。 発熱・CRP上昇という感染症の2大サインが揃わないまま病態が進行するため、臨床症状(咳・痰・呼吸苦・腹痛・嘔吐)からの総合的な判断が必要です。 rheumatoid-arthritis-miyamoto(https://rheumatoid-arthritis-miyamoto.jp/blog/wp-content/uploads/2023/08/dc95add673bc603500c0b4c6107cdb54.pdf)
一方で、IL-6阻害薬投与中でも白血球増加・咳・痰といった所見は出現することが多く、これらのサインに慣れることが感染症の早期発見につながります。 lifescience.co(https://www.lifescience.co.jp/cr/zadankai/1002/2.html)
その他の主な副作用は以下のとおりです。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054586)
感染症マスクのリスクを踏まえ、患者への「発熱・嘔吐・腹痛・ひどい咳・下痢は我慢しないよう」な患者指導を徹底することが、重篤化を防ぐ最初の一手です。 rheumatoid-arthritis-miyamoto(https://rheumatoid-arthritis-miyamoto.jp/blog/wp-content/uploads/2023/08/dc95add673bc603500c0b4c6107cdb54.pdf)
参考リンク(感染症マスク事例・臨床的注意点の詳細が読める)。
1ページで読む『生物学的製剤およびJAK阻害薬と感染症』(The IDATEN)— CRP/ESRがマスクされるメカニズムと鑑別のポイントを解説
IL-6阻害薬は関節リウマチや膠原病だけでなく、がん治療の副作用管理という全く異なるフィールドでも注目されています。これは多くのリウマチ・内科医が見落としやすい視点です。
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が引き起こすirAEに対し、トシリズマブまたはサリルマブを使用した92例の後ろ向き解析では、irAEの臨床的改善率が高く、かつICIの抗腫瘍効果を妨げなかったと報告されています。 IL-6R阻害薬投与中止に至った有害事象は全体の7%にとどまっており、安全に使用できた症例が多数です。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/56733)
また、COVID-19重症例(サイトカインストーム)においても、トシリズマブは28日以内死亡リスクの低減効果が示されており、対照群に対する優越性の事後確率は99.9%という高い確信度のデータがあります。 これは使えそうです。 medicalonline(https://www.medicalonline.jp/review/detail?id=2159)
つまり、IL-6阻害薬は「慢性炎症の抑制」にとどまらず、「急性サイトカイン過剰反応」への対処という新しい使われ方が広がっているということですね。
今後は以下のような領域での活用が期待されます。
interprotein(http://www.interprotein.com/jp/il6.html)
リウマチ科・膠原病科の医師だけでなく、腫瘍内科・感染症科・集中治療科の医師もIL-6阻害薬の一覧と適応を把握しておくことが、今後の臨床現場では求められます。関連する他科との情報共有・コンサルテーション体制を整えておくと、いざという場面で迅速に動けます。
参考リンク(irAEへのIL-6阻害薬使用の根拠と抗腫瘍効果への影響が確認できる)。
irAEに対するIL-6R阻害薬の有効性とICIの効果への影響(CareNet.com)— 92例の後ろ向き解析結果の要約