副腎皮質は、腎臓の上部に位置する副腎の外層部分を占める内分泌組織で、副腎全体の80~90%を構成しています。副腎皮質は、機能的に球状層・束状層・網状層の3つの層構造を呈しており、それぞれ異なるホルモンを産生しています。
参考)https://www.med.kyushu-u.ac.jp/news/research/detail/1514/
球状層では主にミネラルコルチコイドのアルドステロンが分泌され、腎臓でのナトリウムとカリウムの電解質バランスを調節します。束状層では糖質コルチコイドのコルチゾールが産生され、血糖値の維持や抗炎症作用を担っています。網状層では副腎アンドロゲンが合成され、特に女性では重要な男性ホルモン源となります。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/3714/
副腎皮質から分泌される主要なステロイドホルモンには、糖質コルチコイド、電解質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)、アンドロゲンの3種類があります。これらのホルモンはすべてコレステロールを原料として合成される脂溶性のステロイドホルモンです。
参考)https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/cholesterol.html
**糖質コルチコイド(主にコルチゾール)**は、糖質・脂質・タンパク質代謝の調節を行い、血糖上昇作用と抗炎症・抗アレルギー作用を有します。また、ストレスから体を守る重要な役割を果たし、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
参考)https://www.diagnostics.jp.tosohbioscience.com/immunoassay/aia-reagents/a-z/c/corp/cort
**電解質コルチコイド(主にアルドステロン)**は、腎臓の尿細管においてナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促進し、体液量と血圧の調節を行います。副腎アンドロゲンは、主にデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)とアンドロステンジオンで構成され、テストステロンやジヒドロテストステロンに変換されて生理活性を示します。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/10-%E5%86%85%E5%88%86%E6%B3%8C%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E4%BB%A3%E8%AC%9D%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%89%AF%E8%85%8E%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%89%AF%E8%85%8E%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、コルチゾールの過剰分泌により様々な症状を呈する疾患です。原因として、下垂体腫瘍による下垂体性(80~85%)、副腎腫瘍による副腎性、薬剤性に分類されます。
参考)https://www.elly-ah.com/original37
主な症状には以下があります。
参考)https://kyoto.hosp.go.jp/html/guide/medicalinfo/endocrinology/description_02.html
診断には血液検査でのコルチゾール値測定、デキサメサゾン抑制試験、CT・MRI検査による画像診断が重要です。特に、コルチゾールとACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の同時測定により、下垂体性か副腎性かの鑑別が可能になります。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/177.html
副腎皮質機能低下症は、副腎皮質ホルモンの分泌不全により生じる疾患で、原発性(アジソン病)と続発性に分類されます。アジソン病では、副腎皮質の破壊により全ての副腎皮質ホルモンが低下します。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/wgrev45u0
特徴的な症状として以下が挙げられます。
診断確定にはACTH刺激試験が重要で、ACTH投与前後でのコルチゾール値の変化を測定します。原発性では内因性ACTH濃度が高値を示し、続発性では低値となります。急性増悪時には副腎クリーゼと呼ばれる生命危険状態となるため、早期診断と適切な治療が不可欠です。
参考)https://www.shouman.jp/disease/instructions/05_19_042/
副腎皮質ホルモン、特にコルチゾールとACTHは著明な日内変動を示すため、測定時間が診断精度に大きく影響します。これらのホルモンは早朝に最高値を示し、夜間に最低値となる生理的リズムを持っています。
参考)https://data.medience.co.jp/guide/guide-03050009.html
コルチゾールの日内変動は、視床下部-下垂体-副腎皮質系の制御機構により調節されており、その変動幅はピーク値の75%にも達します。このため、正確な診断のためには、早朝空腹時、安静臥位での採血が推奨されています。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/33.html
血中コルチゾールの日内変動を補う検査として、24時間蓄尿による尿中遊離コルチゾール測定が有用です。この検査では、血中の遊離型コルチゾールがそのまま尿中に排泄される特性を利用し、一日の総分泌量を評価できます。
治療薬として使用される副腎皮質ステロイドは、作用時間により短時間型、中間型、長時間型に分類されます。これらの薬剤は、副腎疾患の補充療法のほか、抗炎症薬や免疫抑制薬として幅広い疾患に使用されています。
参考)https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/fukujinhishitsusteroid/
短時間型にはヒドロコルチゾン(商品名:コートリル)があり、生理的なコルチゾール補充に最も適しています。中間型のプレドニゾロン(プレドニン)やメチルプレドニゾロン(メドロール)は、抗炎症作用が強く、関節リウマチや気管支喘息などの治療に用いられます。
適応疾患は多岐にわたり、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)、呼吸器疾患(気管支喘息、サルコイドーシス)、消化器疾患(潰瘍性大腸炎)、腎疾患(ネフローゼ症候群)、血液疾患(急性リンパ性白血病)、アレルギー疾患(アナフィラキシーショック)などが含まれます。
参考)https://www.pharm.or.jp/words/word00940.html
副腎皮質ステロイド治療では、副作用として感染症のリスク増加、骨密度低下、糖尿病の誘発や悪化などが知られており、定期的な監視と適切な使用量の調整が重要です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a8b1747af68faa9b726c345f2d68b20ef0e8e549