セフジニル効果と適応疾患:作用機序から副作用まで医療従事者向け解説

セフジニル(セフゾン)の効果と作用機序、適応疾患、副作用について医療従事者向けに詳しく解説します。細菌感染症治療における第三世代セフェム系抗菌薬の特徴と臨床での使い分けをご存知ですか?

セフジニル効果と作用機序

セフジニルの主な効果と特徴
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殺菌的作用

細菌細胞壁合成を阻害し、ペニシリン結合蛋白(PBP)に作用することで強力な殺菌効果を発揮

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広範囲抗菌スペクトル

グラム陽性菌・陰性菌に広く効果を示し、特にブドウ球菌属やレンサ球菌属に強力な抗菌力

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β-ラクタマーゼ安定性

各種β-ラクタマーゼに対して高い安定性を有し、産生菌にも優れた抗菌力を維持

セフジニルの細菌細胞壁合成阻害メカニズム

 

 

セフジニル(一般名:Cefdinir、商品名:セフゾン)は、第三世代経口セフェム系抗生物質として、細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌的な抗菌作用を示します。その作用機序の核心は、ペニシリン結合蛋白(PBP)への選択的な結合にあります。細菌は自身を保護するための「細胞壁」を持っており、この細胞壁の主要成分であるペプチドグリカンの合成にPBPが不可欠な役割を果たしています。

 

参考)セフゾン(セフジニル)に含まれている成分や効果、副作用などに…

セフジニルは、菌種により異なりますが、特にPBPの1(1a、1bs)、2、および3に高い親和性を示します。このPBPへの結合により、ペプチドグリカン架橋酵素の働きが阻害され、細菌の細胞壁合成が停止します。人間の細胞には細胞壁が存在しないため、セフジニルは細菌にのみ選択的に作用し、ヒト細胞への影響を最小限に抑えることができます。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00056782.pdf

この作用機序により、セフジニルは静菌的ではなく殺菌的な効果を発揮します。細胞壁の合成が阻害された細菌は、浸透圧の変化に耐えられず、最終的に細胞の破壊と死滅に至ります。

 

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

セフジニルの抗菌スペクトルと適応菌種

セフジニルは、グラム陽性菌および陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトルを有しています。適応菌種としては、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス・ミラビリス、インフルエンザ菌などが挙げられます。

 

参考)https://www.ltl-pharma.com/common/pdf/product/cefzon/cefzon_cap_at.pdf

特筆すべきは、グラム陽性菌であるブドウ球菌属やレンサ球菌属に対して、従来の経口用セフェム剤よりも強力な抗菌力を示す点です。臨床試験データでは、呼吸器感染症(肺炎)において88.9%、皮膚感染症において89.4%の有効率が報告されています。

 

参考)https://www.data-index.co.jp/drugdata/pdf/6/300119_6132013C1074_1_08.pdf

また、セフジニルは各種細菌が産生するβ-ラクタマーゼに対して高い安定性を持っています。β-ラクタマーゼは多くの抗菌薬を分解する酵素ですが、セフジニルはこの酵素に対して安定であるため、β-ラクタマーゼ産生菌に対しても優れた抗菌力を維持します。

 

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062394.pdf

セフジニルの臨床効果と適応疾患別の有効性

セフジニルは、様々な部位の細菌感染症に対して承認されており、その適応症は多岐にわたります。呼吸器感染症では、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎に効果を示します。耳鼻科領域では中耳炎副鼻腔炎(蓄膿症)の治療に使用されます。

 

参考)セフゾン(セフジニル)の効果・副作用を医師が解説 - オンラ…

皮膚感染症においても、表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症などに有効性が認められています。泌尿器感染症では、膀胱炎腎盂腎炎の治療に用いられます。さらに、猩紅熱などの感染症にも適応があります。

 

参考)医療用医薬品 : セフジニル (セフジニル細粒小児用10%「…

国内の二重盲検比較試験では、肺炎に対して64/72例(88.9%)、複雑性尿路感染症に対して78/95例(82.1%)の有効率が示されており、高い臨床効果が実証されています。皮膚感染症における臨床試験でも、爪囲炎で95.5%、リンパ管・リンパ節炎で100%という高い有効率が報告されています。​

セフジニル効果における用法・用量と投与上の注意

成人におけるセフジニルの標準的な用法・用量は、1回100mg(力価)を1日3回経口投与です。年齢や症状に応じて適宜増減することが可能ですが、耐性菌の発現を防ぐため、原則として感受性を確認し、必要最小限の期間の投与にとどめることが重要です。

 

参考)https://medical.nihon-generic.co.jp/uploadfiles/materials/CEFGX_TOUYORYO.pdf

小児に対しては、体重あたり1日量9~18mg(力価)/kgを3回に分割して経口投与します。咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎への使用にあたっては、「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、抗菌薬投与の必要性を慎重に判断する必要があります。

 

参考)https://www.ltl-pharma.com/common/pdf/product/cefzon/cefzon_guide.pdf

高度の腎障害のある患者では、血中濃度が持続するため、腎障害の程度に応じて投与量を減量し、投与間隔をあける必要があります。経口摂取の不良な患者や非経口栄養の患者では、ビタミンK欠乏症状が現れることがあるため、観察を十分に行うことが求められます。

 

参考)セフジニル (Cefdinir):抗菌薬インターネットブック

セフゾン適正使用ハンディガイド - 投与方法と抗微生物薬適正使用に関する詳細情報

セフジニル治療における特殊な臨床状況での効果

妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与については、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。セフェム系抗生物質は比較的安全性が高いとされており、セフジニルも妊婦に比較的安心して使用できる抗菌薬と考えられています。海外では米国食品医薬品局(FDA)によりPregnancy Category B(2018年時点)に分類されており、動物実験では胎児への危険性が示されていません。

 

参考)https://www.ltl-pharma.com/common/pdf/product/cefzon/cefzon_faq.pdf

授乳中の母親が服用した場合、乳児への影響は少ないと考えられていますが、慎重な判断が必要です。鉄添加粉ミルク摂取直後にセフジニル細粒を服用した外国データでは、吸収にほとんど影響がみられなかったとの報告があります。ただし、貧血治療用の鉄剤は鉄含有量が多く、同時投与ではセフジニルの吸収が10分の1程度に低下するため、併用は避けることが望まれます。

 

参考)抗菌薬『セフゾン』の副作用・ジェネリック、妊娠中の服用につい…

小児等に対する安全性については、細粒小児用製剤が広く使用されており、体重別の投与量が詳細に設定されています。高齢者においては、生理機能が低下していることが多く、副作用が発現しやすいため、次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与することが必要です。

 

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/kouseibussitu/JY-13132.pdf

セフジニル副作用と安全性管理

セフジニルの重大な副作用と発現頻度

セフジニルの重大な副作用として、ショック(0.1%未満)が報告されています。不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴、発汗等が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。アナフィラキシー(0.1%未満)も重要な副作用であり、呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹等の症状が出現することがあります。

 

参考)セフジニル錠100mg「サワイ」の効能・副作用|ケアネット医…

皮膚障害として、中毒性表皮壊死融解症(TEN)および皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(各0.1%未満)があらわれることがあります。発熱、頭痛、関節痛、皮膚紅斑・皮膚水疱や粘膜紅斑・粘膜水疱、皮膚緊張感・皮膚灼熱感・皮膚疼痛等が認められた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うことが必要です。

 

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=55887

血液障害として溶血性貧血が、消化器系障害として偽膜性大腸炎が報告されており、これらの副作用にも注意が必要です。
間質性肺炎やPIE症候群、腎障害、劇症肝炎、肝機能障害なども重大な副作用として添付文書に記載されています。

 

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=62394

セフジニルの一般的副作用と対処法

セフジニルの臨床試験における副作用発現率は比較的低く、肺炎の試験では102例中5例(4.9%)、複雑性尿路感染症では147例中7例(4.8%)、皮膚感染症では142例中9例(6.3%)でした。最も頻度の高い副作用は胃部不快感で、皮膚感染症の試験では4例に認められました。​
消化器系の副作用として、下痢、腹痛、軟便、食欲不振などが報告されています。第三世代セフェム系抗菌薬全般に共通する副作用として、下痢の発現頻度は1~3%程度とされています。皮膚系の副作用として、発疹、皮膚炎(各2例)なども報告されています。

 

参考)【薬剤師向け】内服抗菌薬の種類とそれぞれの特徴、使用上の注意…

セフジニルを服用すると尿が赤くなることがありますが、これはセフジニルの成分が尿に排泄されているだけであり、健康上の問題はありません。症状が良くなっても自己判断での服用中止は避けるべきです。抗生物質が効きにくくなる「薬剤耐性菌」の発生を防ぐため、処方された期間は必ず服用を継続することが重要です。​
セフジニル錠の効能・副作用詳細 - 医療従事者向け包括的情報

セフジニル投与時の禁忌と慎重投与対象

セフジニルの絶対的禁忌は、本剤の成分によるショックの既往歴のある患者です。また、本剤の成分またはセフェム系抗生物質に対して過敏症の既往歴のある患者は原則禁忌とされています。​
慎重投与の対象となる患者は複数あります。
ペニシリン系抗生物質に対して過敏症の既往歴のある患者では、交差過敏反応の可能性があるため注意が必要です。本人または両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を持つ患者も慎重投与の対象となります。​
高度の腎障害のある患者では、血中濃度が持続するため、腎障害の程度に応じて投与量を減量し、投与間隔をあける必要があります。経口摂取の不良な患者または非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者では、ビタミンK欠乏症状があらわれることがあるので、観察を十分に行うことが求められます。高齢者も慎重投与の対象であり、生理機能の低下により副作用が発現しやすいため、注意深い観察が必要です。​

セフジニルの相互作用と併用注意薬剤

セフジニルと併用注意とされている主要な薬剤は鉄剤です。貧血治療用の鉄剤は鉄含有量が多く、セフジニルと同時投与すると、セフジニルの吸収が約10分の1程度に低下することが報告されています。このため、鉄剤との併用は避けることが望まれます。​
鉄添加粉ミルクとの併用については、外国のデータでは鉄添加粉ミルク摂取直後にセフジニル細粒を服用した場合、吸収にほとんど影響がみられなかったと報告されています。しかし、貧血治療用の鉄剤とは鉄含有量が大きく異なるため、鉄剤との同時投与は避ける必要があります。​
その他、セフェム系抗生物質全般に共通する相互作用として、アルコールとの併用によるジスルフィラム様反応(Antabuse作用)が知られていますが、セフジニルではこの作用は報告されていません。ただし、他の一般用医薬品や食品との相互作用の可能性も考慮し、使用中の薬剤については医師や薬剤師に相談することが重要です。

 

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

セフジニル使用における耐性菌対策と適正使用

セフジニルの使用にあたっては、耐性菌の発現を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめることが重要です。「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、特に咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎への使用にあたっては、抗菌薬投与の必要性を慎重に判断した上で投与を決定すべきです。​
セフジニルは各種β-ラクタマーゼに対して安定性を示しますが、すべての耐性菌に有効というわけではありません。感受性試験を行い、本剤に感性のある菌種であることを確認することが望ましい対応です。

 

参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=6132013C1112

患者への服薬指導においては、症状が改善しても自己判断で服用を中止せず、処方された期間は必ず継続して服用することの重要性を説明する必要があります。中途半端な投与は耐性菌の選択と増殖を促進し、将来的な治療選択肢を狭める可能性があります。​
セフジニルの保管については、光や湿気を避けて涼しい所に保存することが推奨されています。特に細粒製剤を使用する場合は、作り置きはせず、必ず服用直前に混ぜることが重要です。

 

参考)https://med.sawai.co.jp/request/mate_attachement.php?attachment_file=02dfef5e-9b0d-452b-9fd9-be66eb21619c0000000006FA8A24.pdf

医薬品の適正使用に関する厚生労働省ガイドライン - 抗菌薬の適正使用推進