アピキサバンとエドキサバンの違い

非弁膜症性心房細動や静脈血栓塞栓症の治療に用いられる直接経口抗凝固薬(DOAC)の中で、第Xa因子阻害薬のアピキサバンとエドキサバンにはどのような違いがあるのか?

アピキサバンとエドキサバンの違い

両薬剤の主な違い
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服用回数

アピキサバンは1日2回投与、エドキサバンは1日1回投与という用法の違いがあります

半減期

アピキサバンの半減期は8~15時間、エドキサバンは10~14時間と若干の差があります

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腎排泄率

アピキサバンは約25%、エドキサバンは50%と腎機能への依存度が異なります

アピキサバン(商品名:エリキュース)とエドキサバン(商品名:リクシアナ)は、どちらも第Xa因子を選択的に阻害する直接経口抗凝固薬(DOAC)に分類されます。両薬剤は外因性および内因性血液凝固経路の合流点である第Xa因子を直接阻害し、プロトロンビンからトロンビンへの変換を抑制することで抗血栓作用を発揮します。非弁膜症性心房細動(NVAF)における脳卒中予防、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)などの静脈血栓塞栓症(VTE)の治療および再発予防に適応を持ちますが、薬物動態や用法用量、減量基準などに重要な違いがあります。nms+5

アピキサバンとエドキサバンの薬物動態の特徴

 

 

アピキサバンは経口投与後1~4時間で最高血中濃度に達し、半減期は8~15時間です。生物学的利用率は約49%で、主に肝臓の薬物代謝酵素CYP3A4によって代謝され、腎排泄率は約25%と比較的低い特徴があります。蛋白結合率は87%で、食事の影響を受けにくく、1日2回投与により安定した血中濃度を維持できます。一方、エドキサバンは経口投与後1~2時間で最高血中濃度に達し、半減期は10~14時間とアピキサバンよりやや長い傾向があります。生物学的利用率は約62%で、主にCYP3A4によって代謝されますが、腎排泄率は約50%とアピキサバンより高く、腎機能の影響を受けやすい特性があります。蛋白結合率は40~59%とアピキサバンより低く、1日1回投与で抗凝固作用を発揮します。pharmacist.m3+7

アピキサバンとエドキサバンの用法・用量の違い

アピキサバンは非弁膜症性心房細動に対して通常1回5mgを1日2回投与しますが、減量基準として年齢≧80歳、体重≦60kg、血清クレアチニン≧1.5mg/dLのうち2つ以上に該当する場合は1回2.5mg 1日2回へ減量します。VTE治療では初回7日間は1回10mg 1日2回、その後は1回5mg 1日2回投与となります。エドキサバンは非弁膜症性心房細動に対して通常1回60mgを1日1回投与し、減量基準として体重≦60kg、クレアチニンクリアランス(CrCl)15~50mL/分、P糖蛋白阻害薬併用のいずれかに該当する場合は1回30mgへ減量します。VTE治療でも同様に60mgまたは30mgの1日1回投与が基本となりますが、他の抗凝固薬による初期治療後に開始する必要があります。投与回数の違いは患者の服薬アドヒアランスに影響する可能性があり、1日1回投与のエドキサバンは服薬コンプライアンスの向上に有利とされる一方、1日2回投与のアピキサバンは血中濃度をより安定的に維持できる利点があります。kobe-kishida-clinic+6

アピキサバンとエドキサバンの腎機能別の使い分け

腎機能低下患者において、両薬剤の選択は腎排泄率の違いから慎重に検討する必要があります。アピキサバンは腎排泄率が約25%と低いため、腎機能障害のある患者にも比較的使用しやすい薬剤とされています。中等度から高度の腎機能障害患者でも適切な減量により使用可能で、透析患者への使用も検討されることがあります。エドキサバンは腎排泄率が50%と高いため、腎機能低下時には血中濃度が上昇しやすく、慎重な用量調整が必要です。CrCl 15~50mL/分では30mgへの減量が必須であり、15mL/分未満では投与禁忌となります。興味深いことに、エドキサバンはCrCl 95mL/分以上の高度腎機能正常例では相対的有効性が低下する傾向が報告されており、米国FDAはCrCl 95mL/分以上では使用を推奨していません。これは腎排泄率が高いため腎機能が良好すぎると薬剤のクリアランスが亢進し、十分な血中濃度が維持されにくくなるためと考えられています。ebm-library+6

アピキサバンとエドキサバンの薬物相互作用の比較

薬物相互作用に関して、両薬剤とも主にCYP3A4で代謝され、P糖蛋白(P-gp)の基質であるため、これらを阻害または誘導する薬剤との併用に注意が必要です。アピキサバンは併用禁忌薬がなく、CYP3A4とP-gpの強力な阻害薬との併用時には減量を考慮しますが、比較的薬物相互作用が少ない特徴があります。エドキサバンも併用禁忌薬はありませんが、P-gp阻害薬(キニジン、ベラパミル、シクロスポリンなど)との併用時には30mgへの減量が推奨されます。リバーロキサバンやダビガトランと比較して、アピキサバンとエドキサバンは薬物相互作用のリスクが低く、併用禁忌薬がない点で使いやすい薬剤といえます。また、食事の影響についても両薬剤とも臨床的に意味のある影響は受けないため、食事のタイミングに関わらず投与可能です。kanri.nkdesk+6

アピキサバンとエドキサバンの有効性・安全性の比較データ

日本の病院管理データベースを用いた研究では、VTE患者におけるエドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンの3剤を比較したところ、VTE再発予防において3剤間で有意差は認められませんでした。頭蓋内出血および消化管出血の複合評価においても、3剤間で安全性に有意差はなく、日常診療下では同等の有効性と安全性を有すると考えられています。メタ解析の結果では、アピキサバンが有効性・安全性の両面で最も良好な成績を示す傾向がありますが、エドキサバンを対象にした研究が少なく結果にばらつきがあるため解釈には注意が必要です。非弁膜症性心房細動患者を対象とした大規模臨床試験では、両薬剤ともワルファリンと比較して脳出血のリスクを低減しつつ、同等以上の血栓塞栓症予防効果を示しました。消化管出血のリスクはワルファリンより高い傾向がありますが、全体の安全性プロファイルは良好とされています。mdv+5

アピキサバンとエドキサバンの臨床現場での選択基準

臨床現場における両薬剤の選択は、患者の腎機能、年齢、体重、服薬アドヒアランス、併用薬などを総合的に考慮して決定されます。アピキサバンは腎排泄率が低いため、中等度以上の腎機能障害患者や高齢者に適しており、1日2回投与により血中濃度を安定的に維持できる利点があります。体重60kg以下の小柄な患者や80歳以上の高齢者では減量基準が設定されており、日本人患者に配慮した用量設定となっています。エドキサバンは1日1回投与により服薬コンプライアンスの向上が期待でき、P-gp阻害薬併用時の減量基準が明確で使いやすい特徴があります。ただし、腎排泄率が高いため腎機能低下例では注意が必要で、高度腎機能正常例では効果が減弱する可能性があるため、CrCl 50~95mL/分程度の患者に最も適していると考えられます。OD錠(口腔内崩壊錠)が利用可能な点も、嚥下困難のある患者にとってエドキサバンの利点となります。薬物血漿濃度のモニタリング研究では、1日1回投与のエドキサバンでもピークとトラフ間での凝固活性マーカーの変動が少なく、1日2回投与のアピキサバンと同様に正常範囲内に維持されることが示されています。note+7
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