クリンダマイシンの投与で最も頻繁に観察される副作用は消化器症状であり、下痢の発現頻度は10~20%、腹痛は5~10%、悪心は3~8%と報告されています。これらの症状は多くの場合、薬剤投与中止により自然に軽快します。クリンダマイシンリン酸エステルゲルの局所投与においても、消化器系の副作用として吐き気や嘔吐が発現する可能性があることが知られています。qlife+2
高用量投与ではさらに消化器症状が増悪する傾向があり、600mgの高用量群では下痢の持続期間が平均5日間、腹痛の持続期間が7日間に達したのに対し、300mgの低用量群ではそれぞれ3日間と4日間であったという研究結果があります。統計解析の結果、高用量投与は消化器症状の延長に有意な影響を与えることが示されています。pmc.ncbi.nlm.nih
クリンダマイシンは抗菌薬関連下痢症の中でも、偽膜性大腸炎を引き起こすリスクが最も高い薬剤として広く知られています。この重篤な副作用の発生機序は、抗菌薬投与により正常な腸内細菌叢が破壊され、多くの抗菌薬に耐性を持つClostridioides difficile(クロストリジウム・ディフィシル)が異常増殖することで始まります。igakukotohajime+2
C. difficileが産生する毒素が腸管粘膜を直接傷害し、腸粘膜にフィブリン析出や好中球浸潤を伴う斑状の上皮壊死を引き起こします。病態が進行すると、ムチン、フィブリン、白血球、細胞破片の集積により形成された偽膜に覆われたびまん性の上皮壊死と潰瘍を呈するようになります。クリンダマイシンの投与経路にかかわらず(経口、静注、筋注)偽膜性大腸炎は発症する可能性があり、さらに抗菌薬投与中止後に発症するケースも報告されています。jaam+2
偽膜性大腸炎の詳細な病態生理と臨床像について
症状としては高熱、白血球増多に加えて、腹痛、下痢、血便などの腸炎症状が認められ、特にS状結腸と直腸に好発します。治療にはメトロニダゾールまたはバンコマイシンの経口投与が有効ですが、芽胞が残存すると再燃のリスクがあります。msdmanuals+1
クリンダマイシンの重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis)、急性汎発性発疹性膿疱症、剥脱性皮膚炎が報告されています。これらの皮膚障害は頻度不明とされていますが、発現した場合には生命を脅かす可能性があります。qlife+3
皮膚粘膜眼症候群では、発熱、皮膚・粘膜が赤く腫れて発疹や水ぶくれができる、眼球結膜の充血といった初期症状が観察されます。中毒性表皮壊死融解症に進展すると、広範囲の表皮剥離を伴う重症例となります。これらの症状が発現した場合には、直ちに薬剤投与を中止し、適切な処置を行うことが必須です。medical.itp+3
急性汎発性発疹性膿疱症は比較的新しく追加された重大な副作用項目であり、クリンダマイシンリン酸エステル注射剤の添付文書改訂において追記されました。局所投与のゲル剤においても、そう痒が5%以上、発赤や刺激感が0.1~5%未満の頻度で発現することが報告されています。pmda+2
クリンダマイシンの投与により、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少といった血液学的異常が発現する可能性があります。これらの副作用の頻度は不明とされていますが、全身倦怠感、頭重・頭痛、めまいなどの初期症状に注意を払う必要があります。好酸球増多、白血球減少、顆粒球減少も報告されており、定期的な血液検査によるモニタリングが推奨されます。ubie+2
肝機能障害と黄疸についても重大な副作用として添付文書に記載されており、AST、ALT、Al-Pなどの肝酵素の上昇を伴います。急性腎障害も頻度不明ながら報告されており、BUN上昇、クレアチニン上昇、窒素血症、乏尿、蛋白尿などの腎機能マーカーの変動に留意が必要です。carenet+1
間質性肺炎やPIE症候群(好酸球性肺浸潤症候群)といった呼吸器系の重篤な副作用も発現する可能性があり、発熱、咳嗽、呼吸困難などの症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、適切な診断と治療を行うことが重要です。qlife+2
クリンダマイシンは本剤の成分またはリンコマイシン系抗生物質に対して過敏症の既往歴がある患者には禁忌です。また、限局性腸炎、潰瘍性大腸炎、抗菌薬関連大腸炎の既往がある患者には慎重投与が必要であり、偽膜性大腸炎のリスクが高まります。高齢者および衰弱患者は特に注意を要する対象であり、偽膜性大腸炎発症後に電解質失調や低蛋白血症に陥り、予後不良となる危険性があります。med.nipro+2
薬物相互作用については、クリンダマイシンとメトロニダゾールの併用により末梢神経障害や中枢神経障害のリスクが増大することが報告されています。手足のしびれや異常感覚、めまいや意識の混濁といった神経系の問題は患者の日常生活に大きな支障をきたすため、併用は避けるべきです。kobe-kishida-clinic
Clostridioides difficile感染症診療ガイドライン2022(日本感染症学会)
リネゾリドとの併用もMAO阻害作用の相乗効果により、セロトニン症候群や高血圧クリーゼといった生命に関わる副作用が発現する可能性があり、絶対に避けなければなりません。クリンダマイシンの適正使用においては、患者背景の詳細な評価、適切な投与量と投与期間の設定、副作用の早期発見と対処が極めて重要です。mdpi+2
院内感染対策の観点からも、C. difficile感染のリスクを低減するための感染管理が必要とされ、クリンダマイシン投与患者の管理には十分な注意を払うべきです。kameda+1