体位変換とは|褥瘡予防・目的・方法・注意点

自分で身体を動かせない患者さんに対して定期的に体勢を整える体位変換は、褥瘡予防や循環改善など重要な役割を持ちます。医療従事者が知っておくべき正しい方法や注意点について解説しましょう?

体位変換とは

体位変換の基本
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定義

自力で寝返りを打てない患者さんの体位を、看護師や介護職が定期的に変えるケア

頻度

基本的に2時間を超えない範囲で実施し、褥瘡予防マット使用時は4時間まで延長可能

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重要性

褥瘡予防、循環改善、呼吸機能維持など患者さんの健康状態を保つために不可欠

体位変換とは、自分自身で身動きが取れない患者さんや、身動きが不十分な患者さんに対し、医療従事者が定期的に体位を整えることを指します。長時間同じ姿勢でいることは、体の特定部位に圧力が集中し続けるため、様々な健康リスクを引き起こす可能性があります。knowledge.nurse-senka+1
健康な人間は一晩で20~30回の寝返りを打つとされていますが、自力で体位変換できない患者さんは、医療従事者による適切な介助が必要です。体位変換は単に体の向きを変えるという物理的な作業だけでなく、患者さんの安楽を確保し、合併症を予防する重要な役割を持っています。kango.mynavi+1
医療現場では日常的に行われるケアですが、一つひとつの動作にはアセスメントに基づいた計画と患者さんへの深い配慮が求められます。患者さんの状態によりリスクの程度が変わるため、体位変換の頻度や方法はその人に合わせて決定する必要があります。knowledge.nurse-senka+1

体位変換の目的と褥瘡予防

 

 

体位変換の最も重要な目的の一つが褥瘡の予防です。長時間同じ部分が圧迫されると血行不良が起こり、皮膚や皮下組織に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、最終的には組織が壊死する褥瘡が発生します。macnica+2
特に、骨が出っ張っているお尻や仙骨部、かかと、ひじ、後頭部などは、この圧力がかかりやすい場所です。褥瘡は患者さんに強い痛みや不快感を与えるだけでなく、感染症のリスクを高め、治癒に時間がかかる非常に厄介な状態です。macnica
定期的な体位変換によって圧力がかかる部位を分散させることは、褥瘡の発生を効果的に予防するために不可欠なケアとなります。長時間同じところの圧迫を避けるため、基本的に2時間を超えない範囲で体位変換を行うことが推奨されています。ただし、粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスなどの褥瘡予防マットを使用する場合、体位変換の間隔は4時間を超えない範囲で行ってもよいとされています。kango-oshigoto+2

体位変換の種類と方法

体位変換には主に仰臥位(仰向け)、側臥位(横向き)、腹臥位(うつ伏せ)などの基本的な体位があります。仰臥位から側臥位への変換は最も頻繁に行われる体位変換です。kango-roo+2
仰臥位から側臥位への基本的な手順は、まず患者さんの頭を支えながら枕を移動する方向へずらし、両腕を体の前で組んでもらいます。次に両ひざの後ろに手を入れてひざを曲げ、足裏を広げて置き安定させます。これにより支持基底面が小さくなり、摩擦力も小さくなるため患者さんを移動しやすくできます。kango-roo
側臥位は、比較的安楽な姿勢を保ちやすく、他の体位に比べて圧迫部位が限定されることから、褥瘡リスクの軽減や呼吸機能の改善を目的とした場面で重宝されています。特に「30度側臥位」は、骨の突き出しがない広い面積のお尻の筋肉で体重を受けることができ、褥瘡予防に効果的な体位として推奨されています。jspu+1
体位変換を行う際は上半身→下半身の順で移動し、首の下と腰の下から腕を差し込んで上半身をしっかりと支えることが重要です。患者さんの服だけをつかむと体に負担をかけてしまうため、肩と脇腹を持つようにします。kango-roo

体位変換におけるボディメカニクスの活用

ボディメカニクスとは、骨格、筋、内臓などの形態や筋力などの特性に基づき、体の各系統間の力学的な相互作用から起こる姿勢や動作を表します。身体的な特性を生かしたボディメカニクスに基づいて体を動かすと、体に負担をかけずに小さな力で最大の効果が上がり、様々な動作を円滑に行うことができます。kango-roo
体位変換においてボディメカニクスを活用する主な原理は、まず足幅を広くして支持基底面を広くすることです。立位の場合、患者に対して足を前後に開いた姿勢で立つと、重心線が支持基底面の内側を通り安定します。また、重心を低くすることで安定性が増します。kango-roo+1
ベッド上で体位変換を行う場合にも、患者に身体を小さく丸めてもらい、手前に引く力で体位変換ができます。身体を小さくまとめてもらってから「てこの原理」を使うことで、簡単に体位変換が可能になります。wiseman+2
不用意な姿勢で体位変換を行うと看護師自身の腰を痛める原因になるため、ボディメカニクスを重視して行う必要があります。また、患者にとっても負担がかからないように配慮することが重要です。kango-roo

体位変換における注意点とリスク管理

体位変換を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。まず、体位変換のときはベッドからの転落や摩擦・ずれをなくすため、できれば2人で行うことが推奨されています。このとき寝衣のしわによる圧迫をなくすよう整えます。jspu
事前に必ず声をかけ、患者さんの同意を得てから行うことで、恐怖感を抱かせないようにします。身体に触れるときは、手のひら全体で、両手・両腕で支えるようにします。kaigo-antenna
循環動態が悪い患者さんは褥瘡リスクの高い患者さんでもあり、予防を心がけることが必要です。10度ほどの側臥位やギャッチアップでも、持続した圧迫が同一部位にかかることを避けられます。治療上動かせない場合や、手術中も全身麻酔で長時間体位変換できずに寝たままの状態にある場合など、体位変換ができない状況も存在します。knowledge.nurse-senka+1
統一したケアが行えるように「体位変換スケジュール」を使用することも方法の一つです。同じ体位が続かないように、仰向け、横向きが交互になるように体の向きを変えましょう。患者さんの状態によりリスクの程度が変わるので、個々の状態に合わせた体位変換の頻度や方法を決定することが重要です。maruho+2

体位変換と循環・呼吸機能の改善

体位変換は褥瘡予防だけでなく、循環機能の改善や肺の拡張促進にも重要な役割を果たします。動きが制限されることによる拘縮、変形の予防や、循環障害の予防も目的の一つとなります。kango.mynavi+1
体位を変えることで肺の換気が促され、肺炎を予防したり、関節が固まってしまう拘縮を防いだりする効果も期待できます。安楽な姿勢を保つことは、身体的な苦痛を和らげるだけでなく、精神的な安定にも繋がります。kango.mynavi
血液循環の促進と呼吸機能の維持は、特に長期臥床患者さんにとって重要です。体位変換により廃用症候群の予防も可能となり、患者さんの全身状態の維持に貢献します。ycota+2
日常生活援助や長期臥床時の褥瘡予防および治療的ケアの目的で体位変換は行われ、援助の際はボディメカニクスを使い看護者が少ない力で十分に力を発揮するとともに、できるだけ患者自身のもつ力を活用し、患者がもっている機能の維持向上をはかります。いつも全介助をするのではなく、患者の自立度に応じて、半介助、部分介助と援助方法を変えていくことが大切です。kango-roo
参考リンク。
日本褥瘡学会では体位変換の具体的な方法と時間間隔について詳しいガイドラインを公開しています。

 

褥瘡の予防について|一般社団法人日本褥瘡学会

 

 




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