中脳は脳幹の最上部に位置する長さ約2cmの構造で、大脳と橋の間に存在します。MRI画像では、中脳は複数の重要な解剖学的構造から構成されており、それぞれが特徴的な信号強度を示します。xn--o1qq22cjlllou16giuj+2
中脳の主要構造には以下が含まれます。
MRI矢状断では、中脳被蓋の前後径を計測することが可能で、正常では10mm以上とされています。中脳被蓋が9mm以下の場合は有意な萎縮と判断され、進行性核上性麻痺(PSP)などの変性疾患の診断に有用です。xn--o1qq22cjlllou16giuj+1
医療施設における中脳を含む脳MRI撮像では、複数の撮像シーケンスを組み合わせた包括的なプロトコルが推奨されています。標準的な撮像時間は30分以内で、日常診療で使用される基本的なシーケンスには以下が含まれます。amed+1
T1強調画像の特徴と用途。
T2強調画像の特徴。
FLAIR画像(Fluid Attenuated Inversion Recovery)。
拡散強調画像(DWI)の重要性。
3テスラMRIでは、より高解像度な画像が得られ、中脳黒質のneuromelanin-related contrast(NRC)を描出することも可能です。これはパーキンソン病の診断において、黒質のドパミン神経細胞の減少を評価する上で有用な情報を提供します。jstage.jst+1
多施設共同研究においては、撮像プロトコルの標準化が重要であり、日本では精神神経疾患の研究のために統一された計測・解析プロトコルが開発されています。hbm.brainminds-beyond+1
中脳梗塞は脳幹梗塞の中でも特徴的な神経症状を呈する疾患で、MRIによる早期診断が極めて重要です。中脳の血管支配を理解することが、画像所見と臨床症状を結びつける鍵となります。xn--o1qq22cjlllou16giuj+2
急性期中脳梗塞のMRI所見。
中脳梗塞の診断において、拡散強調画像(DWI)は発症後数時間以内に病変を検出できる最も感度の高い撮像法です。従来のT1強調画像やT2強調画像では、急性期の脳梗塞は数時間以上経過しないと明瞭な所見を呈しませんが、拡散強調画像では発症直後から高信号として描出されます。midori-hp
中脳の血管支配と梗塞パターン。
中脳への血液供給は主に後大脳動脈や上小脳動脈からの穿通枝によって行われます。梗塞の部位によって特徴的な神経症状が出現します:kachigawanouge+1
MRI画像での評価ポイント。
中脳梗塞の範囲と重症度を評価する際、矢状断と冠状断の画像が特に有用です。完全な動眼神経麻痺を呈した症例では、第三脳室直下からほぼ中脳全体に及ぶ病変が確認されますが、pupil sparing型(瞳孔温存型)では中脳上部を含まない限局的な病変パターンを示すことが報告されています。webview.isho
注意すべき正常所見として、中脳被蓋腹側に左右対称な結節状のDWI高信号が見られることがありますが、これは上小脳脚交叉という正常な神経線維の交叉部であり、ADCマップで有意な低信号を伴わないことから真の梗塞と鑑別可能です。xn--o1qq22cjlllou16giuj
中脳黒質は運動調節において中心的な役割を果たすドパミン産生領域であり、パーキンソン病(PD)などの運動障害疾患の診断において重要な評価対象です。neurology-jp+1
黒質のneuromelanin-related contrast(NRC)画像。
3テスラMRI装置を用いた特殊な撮像法により、黒質内に存在する神経メラニンを高信号域として描出することが可能です。正常者では黒質緻密部に明瞭な高信号域が両側性に確認されますが、パーキンソン病患者では黒質のドパミン神経細胞が脱落するため、この高信号域が減少または消失します。jstage.jst+2
パーキンソン病と健常高齢者での黒質変化の違い。
中脳黒質緻密部においてパーキンソン病では腹外側部でのドパミン神経脱落が強いのに対し、健常高齢者では背側部でのドパミン神経脱落が相対的に強いという特徴的な分布パターンが報告されています。この局在の違いが、MRI画像による両者の鑑別に寄与する可能性があります。jstage.jst+1
定量評価の方法。
黒質のNRCを半定量的に評価する際には、フリーソフトウェアであるImageJなどを用いて、黒質内の高信号域のピクセル数を自動計測します。この方法により、パーキンソン病患者と正常者の間で統計学的な比較が可能となり、診断の客観性が向上します。neurology-jp
進行性核上性麻痺(PSP)の画像所見。
パーキンソン病と鑑別が必要な進行性核上性麻痺では、中脳被蓋の萎縮が特徴的です。MRI矢状断で中脳被蓋の前後径を計測し、9mm以下であれば有意な萎縮と判断されます。PSPの病理学的変化は、中脳被蓋を含むLuys体(視床下核)系、上丘を含む中脳被蓋などに広範に及びます。aichi.med+2
パーキンソン病の画像診断に関する詳細な解説では、MRIで黒質の病理学的変化を検出できる可能性が示されており、今後これらの変化が病初期でも見られるのか、病型で違いがあるかなどのさらなる検証が期待されています。jstage.jst
中脳水道は第三脳室と第四脳室を連絡する細い管状構造で、髄液循環において重要な役割を果たします。この部位の閉塞は水頭症の主要な原因の一つであり、MRIによる評価が不可欠です。spinabifida-research+2
髄液の流れと脳室系の解剖。
髄液は側脳室の脈絡叢で主に産生され、モンロー孔を通って第三脳室に入り、中脳水道を経て第四脳室に到達します。その後、ルシュカ孔やマジャンディー孔を経てくも膜下腔に流出し、最終的には上矢状静脈洞で吸収されます。neurosurgery.med.keio+2
中脳水道閉塞による水頭症。
中脳水道は脳室系の中でも特に狭い部分であり、腫瘍や炎症などで閉塞しやすい特徴があります。中脳水道閉塞が生じると、第三脳室より上流の側脳室と第三脳室が拡大する閉塞性水頭症を呈します。MRI画像では、側脳室体部がプーッと膨らみ、内部に大量の髄液が貯留している所見が確認できます。med.kindai+3
Time-SLIP法による髄液動態の可視化。
特殊なMRI撮像法であるTime-SLIP(Time-Spatial Labeling Inversion Pulse)法を用いることで、髄液の動態を擬似的に観察することが可能です。この方法では、中脳水道断面やモンロー孔断面を設定し、各脳室にマーキングパルスを印加してBBTI(Black Blood Time to Inversion)を変化させることで、髄液の流れをシネ表示で確認できます。niigata-kouseiren
撮像断面の選択。
中脳水道の評価では、第三脳室と第四脳室間の中脳水道が最も描出される断面を選択することが重要です。矢状断のFASE 3D画像から中脳水道が最もよく描出されている断面を特定し、心電同期を用いて髄液動態を観察します。niigata-kouseiren
臨床応用。
中脳水道閉塞による水頭症は、内視鏡的第三脳室底開窓術(ETV)の最も良い適応とされています。術前のMRI評価により、中脳水道の閉塞部位と程度を正確に把握することで、適切な治療方針の決定が可能となります。spinabifida-research+1
Time-SLIP法を用いた髄液動態撮影の詳細プロトコルには、撮影断面の決定法やマーキングパルスの最適化について詳しく記載されており、臨床現場での実践的な参考資料となります。niigata-kouseiren
人工知能技術の発展により、脳MRI画像の自動解析や病変検出の精度が向上しつつあります。今後は標準化されたプロトコルと先進的な解析手法を組み合わせることで、中脳を含む脳幹領域の診断精度がさらに向上することが期待されます。amed+1