骨粗しょう症とは原因と症状診断

骨粗しょう症は骨密度が低下し骨折リスクが高まる疾患です。閉経後の女性に多く、加齢や生活習慣が関わります。原因、診断、治療、予防法を医療従事者向けに詳しく解説します。どのような予防策が効果的でしょうか?

骨粗しょう症とは原因と症状診断

骨粗しょう症の概要
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骨密度の低下

骨の量が減少し質が悪化することで骨強度が低下し、骨折リスクが著しく高まる全身性の骨疾患です

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閉経後女性に多発

閉経によるエストロゲンの急激な減少により骨吸収が亢進し、特に50歳前後から骨密度が急速に低下します

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無症状から骨折へ

初期には自覚症状がないため早期発見が困難ですが、進行すると脊椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折などの重篤な骨折を引き起こします

骨粗しょう症の原発性と続発性の分類

 

 

骨粗しょう症は原因により「原発性骨粗しょう症」と「続発性骨粗しょう症」の2つに大別されます。原発性骨粗しょう症は骨粗しょう症全体の約90%を占め、遺伝的素因に加齢や閉経、生活習慣などの複合的要因によって発症します。特に閉経後の女性では、エストロゲンの分泌低下により破骨細胞による骨吸収が亢進し、骨芽細胞による骨形成が追いつかなくなるため、骨密度が急激に低下します。tyojyu+4
一方、続発性骨粗しょう症は特定の疾患や薬剤が原因となって発症するもので、全体の約10%を占めます。原因疾患としては、内分泌性疾患(甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、性腺機能低下症)、栄養性疾患(胃切除後、吸収不良症候群)、薬剤性(ステロイド剤、性ホルモン低下療法治療薬)、不動性(臥床安静、廃用症候群)などが挙げられます。続発性骨粗しょう症の診断では、原因疾患の特定と治療が骨粗しょう症治療と並行して重要となります。medicalnote+2
原発性骨粗しょう症は中高年以降に多くみられるのに対し、続発性骨粗しょう症は原因疾患や薬剤によっては若年者にも発症する可能性があります。医療従事者としては、骨密度低下を認めた際に続発性の原因を除外するための詳細な問診と検査が必須となります。ubie+2

骨粗しょう症の主要なリスク因子

骨粗しょう症のリスク因子は多岐にわたり、修正不可能な因子と修正可能な因子に分類されます。修正不可能な因子としては、加齢、性別(女性)、人種、遺伝的素因、閉経による女性ホルモン欠乏などがあります。女性ホルモンのエストロゲンは骨からカルシウムが引き出されるのを防ぐ重要な役割を担っており、40代以降の閉経が近づくにつれてエストロゲンの分泌が低下すると、骨からカルシウムがどんどん引き出され骨がもろくなります。j-endo+2
修正可能なリスク因子には、生活習慣に関連するものが多く含まれます。カルシウムやビタミンD、タンパク質の摂取不足、過度なダイエット、喫煙習慣、過度のアルコール摂取、運動不足、日光照射不足などが該当します。特にタンパク質の摂取量が少ないと骨密度の低下を助長するため、バランスの良い食事が基本となります。takada-spine-clinic+3
また、生活習慣病関連の疾患も骨粗しょう症の原因となります。糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、動脈硬化の進行などは骨密度低下のリスク因子です。関節リウマチ、自己免疫疾患、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、副甲状腺機能亢進症なども骨粗しょう症発症に関与します。興味深いことに、ヘリコバクター・ピロリ陽性も骨粗しょう症のリスク因子として報告されており(OR 3.00)、低BMI、高齢、骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)高値とともに日本における重要なリスク因子とされています。pmc.ncbi.nlm.nih+1

骨密度検査とDXA法による診断

骨粗しょう症の診断において骨密度測定は中心的役割を果たし、複数の測定方法が臨床で使用されています。最も信頼性が高い標準的方法がDXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)で、2種類の異なるエネルギーのX線を骨に照射し、骨を通過できないX線の量から骨密度を測定します。DXA法は腰椎や大腿骨頸部といった骨折リスクの高い部位を測定でき、日本骨粗鬆症学会のガイドラインでも「骨粗鬆症診断にはDXAを用いて、腰椎と大腿骨近位部の両者を測定することが望ましい」と記載されています。soujinkai+2
DXA法の主な利点として、高精度で信頼性が高く測定誤差や再現性が優れていること、胸部レントゲンよりも少ない被ばく量で測定できること、腰椎・大腿骨頸部・橈骨遠位部・全身骨など多岐にわたる部位の測定が可能なこと、測定時間が短く患者負担が少ないことが挙げられます。撮影台に横になっていただくだけで数分程度で測定が完了し、特に痛みはありません。matsudo-iida+2
その他の測定方法として、MD法(X線撮影画像の濃淡や皮質骨の幅から骨密度を評価)、QUS法(超音波を用いた方法で人間ドックや検診のスクリーニングに使用)、QCT法(CTスキャンを用いた方法だが放射線被ばく量が多く費用も高い)などがあります。ただし、現在の骨粗鬆症治療薬は主に海綿骨の骨密度上昇が期待されているため、皮質骨が多くを占める中手骨を評価するMD法では治療効果の変化を認めることは困難です。医療従事者としては、確定診断にはDXA法を選択し、経時的な変化や治療効果の評価にも活用することが推奨されます。soujinkai+1

骨代謝マーカーと血液検査の意義

骨粗しょう症の診断と治療効果判定において、骨代謝マーカーの測定が近年重要性を増しています。骨代謝マーカーとは、骨の新陳代謝に関わる物質で、血液検査や尿検査により骨形成や骨吸収の活性度を評価できる指標です。代表的な骨形成マーカーには、オステオカルシン(OC)、骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)、I型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)があり、骨吸収マーカーには、ピリジノリン(PYD)、デオキシピリジノリン(DPD)、I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ-5b(TRACP-5b)などがあります。kameda+1​youtube​
骨代謝マーカーを測定する主な目的は、骨密度の低下を予測すること、骨折の発症リスクを予測すること、治療効果を調べること、そして患者の治療継続に繋げることです。特に治療開始後の早期評価に有用で、骨密度測定では変化が確認できるまでに1~2年を要するのに対し、骨代謝マーカーは数ヶ月で治療効果を評価できます。これにより患者のモチベーション維持と治療継続率の向上が期待できます。clinic.adachikeiyu+1
血液検査ではビタミンDや副甲状腺ホルモン、カルシウムの血中濃度も測定され、骨粗しょう症との関連が評価されます。また、血液検査は続発性骨粗しょう症の原因となる疾患の除外にも重要です。転移性骨腫瘍、骨の疾患、骨・カルシウム代謝異常が明らかでないか確認し、糖尿病、慢性腎不全、肺気腫、関節リウマチなども骨粗しょう症のリスク因子として評価します。ただし、骨代謝マーカーの測定結果を適切に判断するためには専門的な知識や経験が必要であるため、医師の指導のもとで行うことが望ましいとされています。youtube​ike-seikei+2

骨粗しょう症の薬物療法の選択肢

骨粗しょう症の治療は薬物療法が中心となり、骨吸収を抑制する薬剤と骨形成を促進する薬剤の2つに大別されます。骨吸収抑制薬の代表がビスフォスフォネート製剤で、過剰な骨吸収を抑え骨密度を増やす骨粗鬆症治療の中心的な薬です。ビスフォスフォネート製剤には毎日服用するものから月1回内服するもの、さらに注射するタイプ(年1回、月1回、週1回)まで様々な投与形態があり、患者のライフスタイルに合わせた選択が可能です。pmc.ncbi.nlm.nih+2
デノスマブは骨吸収に関わるタンパク質(RANKL)に作用して骨吸収を抑える抗体製剤で、6ヶ月に1回の皮下注射で投与されます。デノスマブはビスフォスフォネート製剤よりもさらに強力な効果が期待できる注射製剤ですが、1回あたり8,000円程度(保険適用3割負担の場合)と高価です。興味深いことに、透析患者を対象とした最新の研究では、デノスマブはビスホスホネートと比較して骨折リスクを45%低減させる一方で、心血管イベントのリスクを36%増加させる可能性が報告されており、患者背景に応じた慎重な薬剤選択が求められます。kyoto-u+3
その他の骨吸収抑制薬として、SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)は骨に対して女性ホルモンと似た作用を持ち、女性ホルモン製剤は閉経期の更年期症状を軽くしながら骨粗しょう症を治療します。カルシトニン製剤は骨吸収を抑えるほか強い鎮痛作用も認められています。骨形成促進薬としては、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)などがあり、骨の形成を促進することで骨密度の回復が期待できます。補助的にカルシウム製剤を処方することもあります。takada-spine-clinic+2
医療従事者として注意すべき点は、ビスフォスフォネート製剤およびデノスマブは薬物関連顎骨壊死(MRONJ)のリスクとなる骨吸収抑制薬であり、特に長期間の使用や高用量の使用により顎骨の血流が減少し骨壊死が発生するリスクが増加することです。治療は1~2年ほどかけて効果が現れるため、患者に根気強く治療を継続してもらうことが重要です。jda+2

予防のための食事と運動習慣

骨粗しょう症の予防には生活習慣の改善が極めて重要であり、特に食事療法と運動療法が2本柱となります。食事では、健康で丈夫な骨をつくるために必要な栄養素を意識して1日3食バランスよく摂取することが基本です。最も重要な栄養素はカルシウムで、骨の主成分であるカルシウムの摂取量は男女共にどの年代も不足しており、骨粗鬆症予防には1日700mgのカルシウム摂取が推奨されています。乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)、大豆製品(木綿豆腐、納豆)、小魚、緑黄色野菜(小松菜、水菜)などを積極的に取り入れることが効果的です。kennet.mhlw+2
ビタミンDはカルシウムの吸収を高め、骨への沈着を助けたり丈夫にする役割を果たしますが、男女ともにどの年代でも不足しています。魚類(イワシ、サンマ、サケ、シラス)やきのこ類(しいたけ、きくらげ)で補うとともに、日光浴によって体内で合成されるため適度な日照も重要です。ビタミンKはカルシウムを沈着させる作用をもち、納豆や緑黄色野菜(小松菜、キャベツ、ブロッコリー、ほうれん草)などに豊富に含まれます。さらに、タンパク質の摂取も丈夫な骨を作るために不可欠で、鶏肉や魚を中心に高タンパクな食事を心がけることで骨密度を維持できます。takemoto-seikei+2
運動に関しては、いくつになっても骨は運動によって強くすることができ、ポイントは骨に刺激を与えるような運動です。ウォーキング、ジョギング、階段の昇降などの荷重運動が推奨され、かかと落としやジャンプといった運動も有効です。軽い筋力トレーニングでは太もも・背中・腕などの大きな筋肉を意識し、ストレッチやヨガで柔軟性を維持することも重要です。1日30分程度の適度な運動を取り入れることで骨密度の低下を予防できます。tyojyu+3
避けるべき習慣としては、塩分の摂りすぎは尿へのカルシウム排泄を促進するため控えるべきです。喫煙や過度の飲酒も骨粗しょう症のリスク因子であり、生活習慣の見直しが必要です。骨密度は40歳以降少しずつ低下していくため、若いうちから食事や運動で「骨の貯金」をおこない、骨密度の低下を予防することが長期的な健康維持に繋がります。kohka-hp+3
骨粗鬆症検診の受診率と要介護率の関係について詳しく知りたい方はこちら(日本骨粗鬆症財団)
原発性骨粗鬆症の診断基準の詳細について(日本骨代謝学会ガイドライン)
骨粗しょう症予防のための具体的な食事と運動の指導内容(厚生労働省 骨活のすすめ)

 

 




NHKきょうの健康 関節・骨を守る295のQ&A事典 腰痛、ひざ痛、五十肩・腱板断裂、股関節痛、関節リウマチ、骨粗しょう症・圧迫骨折を予防・改善! [ 「きょうの健康」番組制作班 ]